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第二章
秘密の打ち明け
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お兄様と話をして数日後、私は殿下に呼び出しをいただいた。
指定をいただいた場所は、王城。
ちょっと待って、なんでどうしてと思うのだが王家の紋章の入ったものを投げてよこされてはという。
テオも見送りだけで中には一緒にいけないと徹底ぶり。
なんだろう嫌な予感がする。なんかまたうわあああああってなる話が待ってる気しかしない。
そして、通された部屋は豪奢なところで、そこで殿下が待っていた。
しかし、そこにいたのは殿下だけではなくて、にこにこと笑顔の麗しき女性がいらっしゃった。
「お待たせしました」
「ああ、呼びつけて悪い。母上、こちらはヴィヴィエ家のレティーツィア嬢」
ははうえ。
ははうえ!? つまり王妃様じゃないですか。
えっ、なに、どういう、えっ。
「初めまして、ご紹介いただきましたレティーツィアと申します」
と、すぐさま淑女の礼をとれた私。えっ、まって。意味わかんないんだけど、えっ?
「かしこまらなくていいのよ、お嬢さん。今日は公式のものではないから」
ゆるやかにやわらかに笑まれる。殿下の母上、つまり王妃様はとても優しげな方だった。
どうぞ座って、と着席を促され私はそれに従った。
しばらくするとお茶が用意され、そしてやっと本題。
「レティをここに呼んだのは……そう、トリスタンから、話を聞いて」
「お兄様から……何の話を」
「それは、金髪とスカイブルーの瞳の女性を探している、と」
歯切れが悪い。
殿下の歯切れが悪い。それに加えて王妃様がいらっしゃる、というのが何かあると思える。
というか、何かないといないよね。
「それって本当に、本気だと思うか?」
「会いたいと思っているのは本当だと思いますが、恋情かどうかまでは私には」
「だそうですよ、母上」
「あらあらまぁまぁ、私は素敵なラブロマンスを期待していたのだけれど!」
「ははうえ」
「ほほ、ごめんなさいね」
そう、と王妃様はにこにこと笑顔だ。
「ねぇ、レティーツィアさん。秘め事に対して口は堅いかしら?」
「……これは知られてはまずい、と思っていることは口にしません。が、その前に」
その前に、私が最近読んだお話のことを聞いてくださいますか、と私は先手を打った。
そう、秘密を聞くなんてなんかやばそう。
なので、私は自分からもしかしてこういうこと、と察しているのだということを伝えようと思った。
違っていたならば、きっと笑って流されるだけだろうし。
秘密を聞いたわけじゃないのよ! 察しただけなのよ! 私の妄想よ!
「私が最近読んだお話は、王女が王子として育った話です。それで、暇を持て余した王女は街に変装して繰り出し、ちょっと怪盗ごっこしてみたり、時々女の恰好をして夜会にでたり。そこで、おに……とある伯爵家の人と出会って、その人に探されているという話です」
「…………ああ、本当にそんな話があったらまずいと俺は思うよ」
「ほほほ。そうね、面白くはあるけれど、人々に知れたら大問題ね」
「そうですよね」
にこにこと王妃様は微笑む。殿下は深いため息をついている。
どうやら、この妄想、想像は事実のようだ。
「それで、そのお話の続きは?」
「え?」
「続きがないなら、あなたのこうなればいいな、でもいいのよ」
私は瞬く。
こうなればいいな、は考えたこともなかった。
というよりそれは、お兄様がどうしたいかだと思っていたから。
でも、そうこうなればいいなという形がないわけではない。
「やっぱり、王子は王女に戻るのが良いと思います。伯爵家の人とは、まぁ本人同士の問題ですけど幸せになって欲しいとは、思います」
「そうよね……」
「まぁ、そうだけど……そう簡単にどうこうできる話でもない」
王妃様は何の問題ない、というような様子。
でもなんだって、王子として公表されたのか。それは私も気になるけど、聞いてよいのかどうか。
そう思っていると、王妃様が独り言よと零す。
「わたくしが一人目を身ごもった時、貴族界隈の情勢がよくなくて、継承権でごたごたしていたの。ここで王女であれば問題が起きる。申し訳ないけれどもと男の子として育てたの。本人も、それが気風にあっていて……」
王女としてより、王子としてあるほうがしっくりくる。
それでも、体の成長は簡単にどちらなのかを現してしまう。
残酷ねと王妃様はどこか諦めたように微笑まれた。
「正直に皆に伝えるにも切欠がないのよね……」
「トリスタンが切欠になってくれるなら、とは思うんだが。トリスタンだしな」
あー、はい。
どう転がるか読めませんからね!!
お兄様の気持ちは!!
「このままではいけないと、その……王女も思ってはいるんだけどあの人も頑固者だからなかなか」
「そうね、なかなか」
「大変そうですね……」
何にせよ、このお二人は切欠がほしいのだろう。
正しくあるべき姿に戻るための、切欠。
でもそんなもの、この世界魔法でどーんとかあるんだから、なんかもう王女になる呪いを受けてしまったとかでごまかせないものなのかな!
と、私は思うのだけど。
どうなのかな。でもこれを今ここで言ってそれにしようとか言われても責任持てないから黙っておく。
まずはジゼルちゃんに相談。あ、これジゼルちゃんにも言った方がいいのかな。
殿下と王妃様に、実はこのお話はジゼルちゃんと話していたのですよと言う。
すると、二人は顔を見合わせて、それでは今度、ジゼルちゃんもここに呼びましょうと言うことになった。
ジゼルちゃんが一緒だと、とても心強いと思います。
指定をいただいた場所は、王城。
ちょっと待って、なんでどうしてと思うのだが王家の紋章の入ったものを投げてよこされてはという。
テオも見送りだけで中には一緒にいけないと徹底ぶり。
なんだろう嫌な予感がする。なんかまたうわあああああってなる話が待ってる気しかしない。
そして、通された部屋は豪奢なところで、そこで殿下が待っていた。
しかし、そこにいたのは殿下だけではなくて、にこにこと笑顔の麗しき女性がいらっしゃった。
「お待たせしました」
「ああ、呼びつけて悪い。母上、こちらはヴィヴィエ家のレティーツィア嬢」
ははうえ。
ははうえ!? つまり王妃様じゃないですか。
えっ、なに、どういう、えっ。
「初めまして、ご紹介いただきましたレティーツィアと申します」
と、すぐさま淑女の礼をとれた私。えっ、まって。意味わかんないんだけど、えっ?
「かしこまらなくていいのよ、お嬢さん。今日は公式のものではないから」
ゆるやかにやわらかに笑まれる。殿下の母上、つまり王妃様はとても優しげな方だった。
どうぞ座って、と着席を促され私はそれに従った。
しばらくするとお茶が用意され、そしてやっと本題。
「レティをここに呼んだのは……そう、トリスタンから、話を聞いて」
「お兄様から……何の話を」
「それは、金髪とスカイブルーの瞳の女性を探している、と」
歯切れが悪い。
殿下の歯切れが悪い。それに加えて王妃様がいらっしゃる、というのが何かあると思える。
というか、何かないといないよね。
「それって本当に、本気だと思うか?」
「会いたいと思っているのは本当だと思いますが、恋情かどうかまでは私には」
「だそうですよ、母上」
「あらあらまぁまぁ、私は素敵なラブロマンスを期待していたのだけれど!」
「ははうえ」
「ほほ、ごめんなさいね」
そう、と王妃様はにこにこと笑顔だ。
「ねぇ、レティーツィアさん。秘め事に対して口は堅いかしら?」
「……これは知られてはまずい、と思っていることは口にしません。が、その前に」
その前に、私が最近読んだお話のことを聞いてくださいますか、と私は先手を打った。
そう、秘密を聞くなんてなんかやばそう。
なので、私は自分からもしかしてこういうこと、と察しているのだということを伝えようと思った。
違っていたならば、きっと笑って流されるだけだろうし。
秘密を聞いたわけじゃないのよ! 察しただけなのよ! 私の妄想よ!
「私が最近読んだお話は、王女が王子として育った話です。それで、暇を持て余した王女は街に変装して繰り出し、ちょっと怪盗ごっこしてみたり、時々女の恰好をして夜会にでたり。そこで、おに……とある伯爵家の人と出会って、その人に探されているという話です」
「…………ああ、本当にそんな話があったらまずいと俺は思うよ」
「ほほほ。そうね、面白くはあるけれど、人々に知れたら大問題ね」
「そうですよね」
にこにこと王妃様は微笑む。殿下は深いため息をついている。
どうやら、この妄想、想像は事実のようだ。
「それで、そのお話の続きは?」
「え?」
「続きがないなら、あなたのこうなればいいな、でもいいのよ」
私は瞬く。
こうなればいいな、は考えたこともなかった。
というよりそれは、お兄様がどうしたいかだと思っていたから。
でも、そうこうなればいいなという形がないわけではない。
「やっぱり、王子は王女に戻るのが良いと思います。伯爵家の人とは、まぁ本人同士の問題ですけど幸せになって欲しいとは、思います」
「そうよね……」
「まぁ、そうだけど……そう簡単にどうこうできる話でもない」
王妃様は何の問題ない、というような様子。
でもなんだって、王子として公表されたのか。それは私も気になるけど、聞いてよいのかどうか。
そう思っていると、王妃様が独り言よと零す。
「わたくしが一人目を身ごもった時、貴族界隈の情勢がよくなくて、継承権でごたごたしていたの。ここで王女であれば問題が起きる。申し訳ないけれどもと男の子として育てたの。本人も、それが気風にあっていて……」
王女としてより、王子としてあるほうがしっくりくる。
それでも、体の成長は簡単にどちらなのかを現してしまう。
残酷ねと王妃様はどこか諦めたように微笑まれた。
「正直に皆に伝えるにも切欠がないのよね……」
「トリスタンが切欠になってくれるなら、とは思うんだが。トリスタンだしな」
あー、はい。
どう転がるか読めませんからね!!
お兄様の気持ちは!!
「このままではいけないと、その……王女も思ってはいるんだけどあの人も頑固者だからなかなか」
「そうね、なかなか」
「大変そうですね……」
何にせよ、このお二人は切欠がほしいのだろう。
正しくあるべき姿に戻るための、切欠。
でもそんなもの、この世界魔法でどーんとかあるんだから、なんかもう王女になる呪いを受けてしまったとかでごまかせないものなのかな!
と、私は思うのだけど。
どうなのかな。でもこれを今ここで言ってそれにしようとか言われても責任持てないから黙っておく。
まずはジゼルちゃんに相談。あ、これジゼルちゃんにも言った方がいいのかな。
殿下と王妃様に、実はこのお話はジゼルちゃんと話していたのですよと言う。
すると、二人は顔を見合わせて、それでは今度、ジゼルちゃんもここに呼びましょうと言うことになった。
ジゼルちゃんが一緒だと、とても心強いと思います。
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