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第二章
接触
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つまりあれは前振りだったわけ。自分で振ってしまったわけです。
中庭を横断ーとてくてく歩いていた時に。
「初めまして、あなたがレティーツィア……レティだよね?」
呼び捨て、愛称のコンボときた。どこから愛称は仕入れてきた!!
えええ、まじでー!!
もうこの時点ではいこれヨアンな! と思った。年上で呼び捨て駄目? 知りません。
お兄様のと同じくらいの年齢。物腰は柔らかそう。でも向けられる視線は値踏みかな。
気持ち悪い、と思う。
丁度、だ。テオは教師に呼ばれたとかで。ジゼルちゃんとベルも呼ばれて離れている。
今日はジュリアさんもお休みらしく、いやっほう! 私自由!
と思って。
よしカフェテラスでパフェ食べよう。いつも太るとかなんだとかで食べさせてもらえない、あの三人前のやつを。鬼の居ぬ間になんとやらー! と意気込んでいい気分だったのに。
これだ。
私、今目の前にサンドバッグあったら力の限り殴ってると思う。
「そうですが……あなたは?」
ヨアンだと思うけど一応確認。一応。
予想通り、ヨアンと名乗って来ました。
「僕は貴女の兄上の従者です」
従者してないじゃん。
「トリスタンから伝言を預かってまして」
従者じゃないの知ってるから。私、だまされないから!
でも、ヨアン首切ったー! をお兄様からもし聞いてなくても、私は多分、なにこいつと思っただろう。
なんとなく、そう思う。
だってお兄様を呼び捨てしてて……テオはこういう時にレティお嬢様から、とかレティーツィア様から、とか。
親しい間柄のジゼルちゃん、ベルにはレティから、とか言うけど。初対面の人にはちゃんと、する。
ちゃんと従者、という態度をとる。しかしこやつ、とってない。
私はできるだけおちついて、平静に。つんとして。
「どんな伝言でしょうか」
「これから茶会をするので来てほしい、と」
「そうですか」
まぁ、うん。嘘だよね。
騙されるわけがない。
そもそもだ。お兄様がお茶会とか言うなら、直々にやってきて。
私にどんな都合があろうとも引っ張っていくと思う。やだーって言っても良いから来いって言うだろうし。
「申し訳ありませんが予定がありますので。失礼します」
嘘は言ってない。パフェる用事がある。
ぺこっと頭下げて私は通り過ぎようとした。
けれど。
「痛っ……」
「いいから、来てください」
腕掴まれた! しかも痛い!!
ぎりぎりと音しそうなほどに掴まれてる。
「……あなた、お兄様の従者じゃないでしょう……」
「な、知って!? くそっ」
「っ、放してくださいっ」
「いいから、来い!」
「……放せ、って……言ってるで、しょぉい!!」
手を引っ張っても放さない。それなら、逆!!
私は一歩踏み込んであいてる手をぐーにしてこう。こうボディに。
思い切りぐわっと。
「ごふっ!」
力の限り叩き込んだら、掴まれてた手も自由になる。勝利!!
ふははは!! 領地にいた時に自己防衛できるレベルになってるんだから!
テオにはいつも負けっぱなしだけど!!
自己防衛自己防衛!! 問題ない!! 目の前でうずくまってるけど!! 大丈夫やりすぎてない!!
「…………レティ、そのポーズはちょっと……」
「えっ? ぎゃあ! テオ!!」
あいあむあうぃなー! という気持ちがぐわーっときて。
私は相手を仕留めた右手をぐーで上に、左手は腰にあてて勝利のポーズを決めていたわけで。
声かけられて振り向けばテオが呆れた顔をしている。
ええ、見慣れた呆れた顔を!! でもこれ特大の呆れ!!
「……なんとなく状況はわかりますが、やっぱりそのポーズはちょっと……」
「あ、ちょ、ちょっと気が高ぶっただけよ! やめるから!」
そうしてくださいと言われて手をしゅっと落ろす。
私はポーズなんてとってなかったわ気のせいよの、必殺おすまし。
「だけどレティ、残念ながら」
トリスタン様には見られてましたよ、とテオは言う。
えっ、えっ? お兄様このあたりにいないじゃない!? ときょろきょろする。
テオにどこ!? と聞くとその手が上を示す。
頭の上でした。
建物の三階。中庭を囲む建物の三階。
よぉ、と手を挙げてくる。その表情はばっちりみたぞと優越感たっぷりで。
あー!!! 見られたー!!!!!
ぐーぱんちごふっ! まではよかった。でもそのあとの勝利のポーズはやっぱりまずかった!!
中庭を横断ーとてくてく歩いていた時に。
「初めまして、あなたがレティーツィア……レティだよね?」
呼び捨て、愛称のコンボときた。どこから愛称は仕入れてきた!!
えええ、まじでー!!
もうこの時点ではいこれヨアンな! と思った。年上で呼び捨て駄目? 知りません。
お兄様のと同じくらいの年齢。物腰は柔らかそう。でも向けられる視線は値踏みかな。
気持ち悪い、と思う。
丁度、だ。テオは教師に呼ばれたとかで。ジゼルちゃんとベルも呼ばれて離れている。
今日はジュリアさんもお休みらしく、いやっほう! 私自由!
と思って。
よしカフェテラスでパフェ食べよう。いつも太るとかなんだとかで食べさせてもらえない、あの三人前のやつを。鬼の居ぬ間になんとやらー! と意気込んでいい気分だったのに。
これだ。
私、今目の前にサンドバッグあったら力の限り殴ってると思う。
「そうですが……あなたは?」
ヨアンだと思うけど一応確認。一応。
予想通り、ヨアンと名乗って来ました。
「僕は貴女の兄上の従者です」
従者してないじゃん。
「トリスタンから伝言を預かってまして」
従者じゃないの知ってるから。私、だまされないから!
でも、ヨアン首切ったー! をお兄様からもし聞いてなくても、私は多分、なにこいつと思っただろう。
なんとなく、そう思う。
だってお兄様を呼び捨てしてて……テオはこういう時にレティお嬢様から、とかレティーツィア様から、とか。
親しい間柄のジゼルちゃん、ベルにはレティから、とか言うけど。初対面の人にはちゃんと、する。
ちゃんと従者、という態度をとる。しかしこやつ、とってない。
私はできるだけおちついて、平静に。つんとして。
「どんな伝言でしょうか」
「これから茶会をするので来てほしい、と」
「そうですか」
まぁ、うん。嘘だよね。
騙されるわけがない。
そもそもだ。お兄様がお茶会とか言うなら、直々にやってきて。
私にどんな都合があろうとも引っ張っていくと思う。やだーって言っても良いから来いって言うだろうし。
「申し訳ありませんが予定がありますので。失礼します」
嘘は言ってない。パフェる用事がある。
ぺこっと頭下げて私は通り過ぎようとした。
けれど。
「痛っ……」
「いいから、来てください」
腕掴まれた! しかも痛い!!
ぎりぎりと音しそうなほどに掴まれてる。
「……あなた、お兄様の従者じゃないでしょう……」
「な、知って!? くそっ」
「っ、放してくださいっ」
「いいから、来い!」
「……放せ、って……言ってるで、しょぉい!!」
手を引っ張っても放さない。それなら、逆!!
私は一歩踏み込んであいてる手をぐーにしてこう。こうボディに。
思い切りぐわっと。
「ごふっ!」
力の限り叩き込んだら、掴まれてた手も自由になる。勝利!!
ふははは!! 領地にいた時に自己防衛できるレベルになってるんだから!
テオにはいつも負けっぱなしだけど!!
自己防衛自己防衛!! 問題ない!! 目の前でうずくまってるけど!! 大丈夫やりすぎてない!!
「…………レティ、そのポーズはちょっと……」
「えっ? ぎゃあ! テオ!!」
あいあむあうぃなー! という気持ちがぐわーっときて。
私は相手を仕留めた右手をぐーで上に、左手は腰にあてて勝利のポーズを決めていたわけで。
声かけられて振り向けばテオが呆れた顔をしている。
ええ、見慣れた呆れた顔を!! でもこれ特大の呆れ!!
「……なんとなく状況はわかりますが、やっぱりそのポーズはちょっと……」
「あ、ちょ、ちょっと気が高ぶっただけよ! やめるから!」
そうしてくださいと言われて手をしゅっと落ろす。
私はポーズなんてとってなかったわ気のせいよの、必殺おすまし。
「だけどレティ、残念ながら」
トリスタン様には見られてましたよ、とテオは言う。
えっ、えっ? お兄様このあたりにいないじゃない!? ときょろきょろする。
テオにどこ!? と聞くとその手が上を示す。
頭の上でした。
建物の三階。中庭を囲む建物の三階。
よぉ、と手を挙げてくる。その表情はばっちりみたぞと優越感たっぷりで。
あー!!! 見られたー!!!!!
ぐーぱんちごふっ! まではよかった。でもそのあとの勝利のポーズはやっぱりまずかった!!
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