転生令嬢はやんちゃする

ナギ

文字の大きさ
上 下
37 / 243
第二章

教えて、ジゼル先生

しおりを挟む
 それからガブさんたちと一緒に色々話をして。
 私とジゼルちゃんはお兄様に寮に送ってもらった。
「……レティ」
「何?」
「お勉強しましょう」
 えー! なんで突然ー! と思ったのだけど。
 ファンテールと聞いてなにそれーみたいな感じだったので気になったのだと。
 はい、まったくもってどういう事かわかりません。
「我が国のことからまずおさらいしましょうか」
「ジゼルちゃん、いくら私でも自国のことくらいは」
「では麦の、昨年のできを」
「あ、そういうのはわかりません……」
「これは少しハードルをあげました」
 少しじゃないよね? という言葉は飲み込んで、まず我が国。
 ルガンティア王国は恵まれている。
 肥沃な大地で作物も色々。織物が発展しているところもあれば鉱山のあるところでが金銀ざっくざくだとか。
 それぞれ貴族が領地をもって治めているけど、大まかなラインはあれど細かい法はそれぞれで自由。
 あまりにもひどいところがあれば王家から指導。ちなみに監査をする方々が人知れず巡っているとか。
 で、逆に輸入に頼っているものは塩だ。海がないから。けど、国が高くても塩を買って、市中で問題なく買えるよう適正価格にして卸している。これは他の物で実入りがちゃんとあるから、できる事なんだと思う。
 宝飾品とか布は質の良さが他国受けが良いらしい。
 宗教は自由。色々な宗教があるけど大体皆、一番大きな豊穣の女神を祀るところ信じている。我が家もこれ。
 王家がこの宗教だから周りもそうなるよね。
 そんでもって貴族の話。
 四大公爵家ー。ジゼルちゃんとベルのおうちもこのひとつになる。そして我が家と、あともうひとつ。
 超絶仲良し! ってことも無いけどお互い足は引っ張らない。表向きは、という感じかな。
 貴族も派閥があるので面倒なのです……ジゼルちゃんも面倒って思ってる。
 で、この四大公爵家のひとつ。
 私達の家じゃないところが、外交を行っている家で。
 そこでファンテールの話につながります。
「外交を行っているのはジャジャル家ですが、あのジュリアさんの家はこのジャジャルの派閥になるんですよね」
 ジャジャル家は良い話をあまり聞かない。悪い話の方が多いとジゼルちゃんは言う。
 王都にいたジゼルちゃんはこういう事にも詳しい。
「暗躍とか?」
「ええ。というか、おそらく……この前一つ、家が取り潰しになったのですけど、ジャジャルの派閥なのよ」
「取り潰し? なんで?」
「危ない薬を広めようとしていた、ということで。その家の親類の家のものにそれを試させていたとか。その方たちはそれが抜けなくて、王家の保護のもとで静養しているそうです」
 それはまともな思考を奪ってしまうような、危ないものだったのだとジゼルちゃんは言う。
「…………ジゼルちゃん。その、被害にあってたお家ってどのあたりにあるかわかる?」
「ええ、王都の……」
 詳しく場所を聞いて。それがいつのことなのかも教えてもらった。
 それは私とテオがくるっと見て回ったあの、家じゃない。
 危ない薬、と聞いて思い浮かべるのは麻薬だ。それがどんなものかは、私にはわからないけどよくないものであることは、わかる。
 そして、私の中でいろんなことが予想だけど、つながっていく。
 これ、お兄様知ってて、私たちに見に行かせたわよね?
 なんという……そしてそれを聞いて、お兄様は何かピンときてお父様にそれを言ったか。
 自分でどうにかしたかはわからないけど!
 多分この件に関わっているんだと、思う。
 お兄様何してるんですか。いえ、悪いことではないけど。
 でも、これ危険じゃないの、って私は思う。
「んあ!?」
「!? な、何、レティ突然変な声だして」
「え、いや、うん。いや、ちょっとうん。あっ、あっ、何かつながっちゃいけないものがつながっていく」
 突然よみがえる、お兄様と殿下の構想。
 なんか協力しろーとか言っててテオも巻き込んだアレだ。
 悪人退治的な、アレ。
 この前手伝ったのは、すでにこの走りだったんじゃないの!?
 わぁ! わぁ!! これまた、似たようなこと絶対あるわ!!
「レティ?」
「……ジゼルちゃんは巻き込まないようにするから!!」
 お兄様の手から、守って見せるー!!
 と、ふんすと意気込む私。
 ジゼルちゃんは落ち着いたなら話の続きをするわ、と華麗にスルーだ。
 やだこのスルーっぷりちょっと癖になりそう。
「ファンテールは隣国。地図の上では、一つ国を挟んであります」
「あ、おとなりのおとなりね」
「そうです。そこは海に面した国ですので、そこから塩を貰っているわけです」
「うんうん」
 海に面した国。
 塩を作り、そして各国へ向けて出す。それが主な産業。
 けれどそれが、強い。塩は無くてはならないものだから。
 ほかにも海産物とかもあるけど、それが一番。
「ファンテールは皇国ですから、皇王、皇子、皇女ですね」
 今は、ガブさんのお兄さんが第一皇位継承権を持っていて、ガブさんは第二皇位継承権を持っている。
 しかし、この皇位継承権云々が問題で命を狙われているのだとか。
「今は皇王が生きてらっしゃいますから良いのですが、亡くなった時にお兄様が皇王になられる」
「うん。で、第一位にガブさんがなるのよね?」
「はい。そして代替わりして五年の間に、皇王に子がいなければ第一位が固定されてしまうのです」
 固定、とはと聞くと。
 現時点で第一位の皇子に子がいるなら、皇王になった時にその子が自動的に第一になり、第二位だったガブさんは継承権を失う。
 けれど、いない場合だ。
 いない場合、五年の間は第一のガブさんは仮になるらしい。けど、五年過ぎて子が生まれなければ、第一はガブさんに固定。
 五年の間に子が生まれれば、その子に第一位。ガブさんはそれからはずれる、ということらしい。
 ジゼルちゃん、そんな他国の継承権のことよく知ってるね……すごい。
「ファンテールの継承はちょっと特殊だと思うけど……あの方がこちらに隠れているということは、継承権がらみでしょうね」
 けど、まだ皇王は生きている。今のうちに亡き者に! とかそういう話なのかな。
 詳しくはもちろんわからないけど、会いに行くなら注意が必要ということだ。
「なんか、ガブさんが微妙な立ち位置っぽいことはわかったわ」
「詳しく聞く必要はないと思いますけど、最低限これくらいは、ということで」
「うん、ジゼルちゃん、ありがと!」
 本当に頼りになる私の一番の、友達です。
しおりを挟む
感想 97

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

放蕩公爵と、いたいけ令嬢

たつみ
恋愛
公爵令嬢のシェルニティは、両親からも夫からも、ほとんど「いない者」扱い。 彼女は、右頬に大きな痣があり、外見重視の貴族には受け入れてもらえずにいた。 夫が側室を迎えた日、自分が「不要な存在」だと気づき、彼女は滝に身を投げる。 が、気づけば、見知らぬ男性に抱きかかえられ、死にきれないまま彼の家に。 その後、屋敷に戻るも、彼と会う日が続く中、突然、夫に婚姻解消を申し立てられる。 審議の場で「不義」の汚名を着せられかけた時、現れたのは、彼だった! 「いけないねえ。当事者を、1人、忘れて審議を開いてしまうなんて」 ◇◇◇◇◇ 設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 それを踏まえて、お読み頂ければと思います、なにとぞ。 R-Kingdom_8 他サイトでも掲載しています。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑 side story

岡暁舟
恋愛
本編に登場する主人公マリアの婚約相手、王子スミスの物語。スミス視点で生い立ちから描いていきます。

当て馬失恋した私ですが気がついたら護衛騎士に溺愛されてました。

ぷり
恋愛
 ミルティア=アシュリードは、伯爵家の末娘で14歳の少女。幼い頃、彼女は王都の祭りで迷子になった時、貧民街の少年ジョエルに助けられる。その後、彼は彼女の護衛となり、ミルティアのそばで仕えるようになる。ただし、このジョエルはとても口が悪く、ナマイキな護衛になっていった。 一方、ミルティアはずっと、幼馴染のレイブン=ファルストン、18歳の辺境伯令息に恋をしていた。そして、15歳の誕生日が近づく頃、伯爵である父に願い、婚約をかなえてもらう。 デビュタントの日、レイブンにエスコートしてもらい、ミルティアは人生最高の社交界デビューを迎えるはずだったが、姉とレイブンの関係に気づいてしまう……。 ※残酷な描写ありは保険です。 ※完結済作品の投稿です。

【完結】貧乏令嬢は自分の力でのし上がる!後悔?先に立たずと申しましてよ。

やまぐちこはる
恋愛
領地が災害に見舞われたことで貧乏どん底の伯爵令嬢サラは子爵令息の婚約者がいたが、裕福な子爵令嬢に乗り換えられてしまう。婚約解消の慰謝料として受け取った金で、それまで我慢していたスイーツを食べに行ったところ運命の出会いを果たし、店主に断られながらも通い詰めてなんとかスイーツショップの店員になった。 貴族の令嬢には無理と店主に厳しくあしらわれながらも、めげずに下積みの修業を経てパティシエールになるサラ。 そしてサラを見守り続ける青年貴族との恋が始まる。 全44話、7/24より毎日8時に更新します。 よろしくお願いいたします。

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

処理中です...