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第二章
教えて、ジゼル先生
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それからガブさんたちと一緒に色々話をして。
私とジゼルちゃんはお兄様に寮に送ってもらった。
「……レティ」
「何?」
「お勉強しましょう」
えー! なんで突然ー! と思ったのだけど。
ファンテールと聞いてなにそれーみたいな感じだったので気になったのだと。
はい、まったくもってどういう事かわかりません。
「我が国のことからまずおさらいしましょうか」
「ジゼルちゃん、いくら私でも自国のことくらいは」
「では麦の、昨年のできを」
「あ、そういうのはわかりません……」
「これは少しハードルをあげました」
少しじゃないよね? という言葉は飲み込んで、まず我が国。
ルガンティア王国は恵まれている。
肥沃な大地で作物も色々。織物が発展しているところもあれば鉱山のあるところでが金銀ざっくざくだとか。
それぞれ貴族が領地をもって治めているけど、大まかなラインはあれど細かい法はそれぞれで自由。
あまりにもひどいところがあれば王家から指導。ちなみに監査をする方々が人知れず巡っているとか。
で、逆に輸入に頼っているものは塩だ。海がないから。けど、国が高くても塩を買って、市中で問題なく買えるよう適正価格にして卸している。これは他の物で実入りがちゃんとあるから、できる事なんだと思う。
宝飾品とか布は質の良さが他国受けが良いらしい。
宗教は自由。色々な宗教があるけど大体皆、一番大きな豊穣の女神を祀るところ信じている。我が家もこれ。
王家がこの宗教だから周りもそうなるよね。
そんでもって貴族の話。
四大公爵家ー。ジゼルちゃんとベルのおうちもこのひとつになる。そして我が家と、あともうひとつ。
超絶仲良し! ってことも無いけどお互い足は引っ張らない。表向きは、という感じかな。
貴族も派閥があるので面倒なのです……ジゼルちゃんも面倒って思ってる。
で、この四大公爵家のひとつ。
私達の家じゃないところが、外交を行っている家で。
そこでファンテールの話につながります。
「外交を行っているのはジャジャル家ですが、あのジュリアさんの家はこのジャジャルの派閥になるんですよね」
ジャジャル家は良い話をあまり聞かない。悪い話の方が多いとジゼルちゃんは言う。
王都にいたジゼルちゃんはこういう事にも詳しい。
「暗躍とか?」
「ええ。というか、おそらく……この前一つ、家が取り潰しになったのですけど、ジャジャルの派閥なのよ」
「取り潰し? なんで?」
「危ない薬を広めようとしていた、ということで。その家の親類の家のものにそれを試させていたとか。その方たちはそれが抜けなくて、王家の保護のもとで静養しているそうです」
それはまともな思考を奪ってしまうような、危ないものだったのだとジゼルちゃんは言う。
「…………ジゼルちゃん。その、被害にあってたお家ってどのあたりにあるかわかる?」
「ええ、王都の……」
詳しく場所を聞いて。それがいつのことなのかも教えてもらった。
それは私とテオがくるっと見て回ったあの、家じゃない。
危ない薬、と聞いて思い浮かべるのは麻薬だ。それがどんなものかは、私にはわからないけどよくないものであることは、わかる。
そして、私の中でいろんなことが予想だけど、つながっていく。
これ、お兄様知ってて、私たちに見に行かせたわよね?
なんという……そしてそれを聞いて、お兄様は何かピンときてお父様にそれを言ったか。
自分でどうにかしたかはわからないけど!
多分この件に関わっているんだと、思う。
お兄様何してるんですか。いえ、悪いことではないけど。
でも、これ危険じゃないの、って私は思う。
「んあ!?」
「!? な、何、レティ突然変な声だして」
「え、いや、うん。いや、ちょっとうん。あっ、あっ、何かつながっちゃいけないものがつながっていく」
突然よみがえる、お兄様と殿下の構想。
なんか協力しろーとか言っててテオも巻き込んだアレだ。
悪人退治的な、アレ。
この前手伝ったのは、すでにこの走りだったんじゃないの!?
わぁ! わぁ!! これまた、似たようなこと絶対あるわ!!
「レティ?」
「……ジゼルちゃんは巻き込まないようにするから!!」
お兄様の手から、守って見せるー!!
と、ふんすと意気込む私。
ジゼルちゃんは落ち着いたなら話の続きをするわ、と華麗にスルーだ。
やだこのスルーっぷりちょっと癖になりそう。
「ファンテールは隣国。地図の上では、一つ国を挟んであります」
「あ、おとなりのおとなりね」
「そうです。そこは海に面した国ですので、そこから塩を貰っているわけです」
「うんうん」
海に面した国。
塩を作り、そして各国へ向けて出す。それが主な産業。
けれどそれが、強い。塩は無くてはならないものだから。
ほかにも海産物とかもあるけど、それが一番。
「ファンテールは皇国ですから、皇王、皇子、皇女ですね」
今は、ガブさんのお兄さんが第一皇位継承権を持っていて、ガブさんは第二皇位継承権を持っている。
しかし、この皇位継承権云々が問題で命を狙われているのだとか。
「今は皇王が生きてらっしゃいますから良いのですが、亡くなった時にお兄様が皇王になられる」
「うん。で、第一位にガブさんがなるのよね?」
「はい。そして代替わりして五年の間に、皇王に子がいなければ第一位が固定されてしまうのです」
固定、とはと聞くと。
現時点で第一位の皇子に子がいるなら、皇王になった時にその子が自動的に第一になり、第二位だったガブさんは継承権を失う。
けれど、いない場合だ。
いない場合、五年の間は第一のガブさんは仮になるらしい。けど、五年過ぎて子が生まれなければ、第一はガブさんに固定。
五年の間に子が生まれれば、その子に第一位。ガブさんはそれからはずれる、ということらしい。
ジゼルちゃん、そんな他国の継承権のことよく知ってるね……すごい。
「ファンテールの継承はちょっと特殊だと思うけど……あの方がこちらに隠れているということは、継承権がらみでしょうね」
けど、まだ皇王は生きている。今のうちに亡き者に! とかそういう話なのかな。
詳しくはもちろんわからないけど、会いに行くなら注意が必要ということだ。
「なんか、ガブさんが微妙な立ち位置っぽいことはわかったわ」
「詳しく聞く必要はないと思いますけど、最低限これくらいは、ということで」
「うん、ジゼルちゃん、ありがと!」
本当に頼りになる私の一番の、友達です。
私とジゼルちゃんはお兄様に寮に送ってもらった。
「……レティ」
「何?」
「お勉強しましょう」
えー! なんで突然ー! と思ったのだけど。
ファンテールと聞いてなにそれーみたいな感じだったので気になったのだと。
はい、まったくもってどういう事かわかりません。
「我が国のことからまずおさらいしましょうか」
「ジゼルちゃん、いくら私でも自国のことくらいは」
「では麦の、昨年のできを」
「あ、そういうのはわかりません……」
「これは少しハードルをあげました」
少しじゃないよね? という言葉は飲み込んで、まず我が国。
ルガンティア王国は恵まれている。
肥沃な大地で作物も色々。織物が発展しているところもあれば鉱山のあるところでが金銀ざっくざくだとか。
それぞれ貴族が領地をもって治めているけど、大まかなラインはあれど細かい法はそれぞれで自由。
あまりにもひどいところがあれば王家から指導。ちなみに監査をする方々が人知れず巡っているとか。
で、逆に輸入に頼っているものは塩だ。海がないから。けど、国が高くても塩を買って、市中で問題なく買えるよう適正価格にして卸している。これは他の物で実入りがちゃんとあるから、できる事なんだと思う。
宝飾品とか布は質の良さが他国受けが良いらしい。
宗教は自由。色々な宗教があるけど大体皆、一番大きな豊穣の女神を祀るところ信じている。我が家もこれ。
王家がこの宗教だから周りもそうなるよね。
そんでもって貴族の話。
四大公爵家ー。ジゼルちゃんとベルのおうちもこのひとつになる。そして我が家と、あともうひとつ。
超絶仲良し! ってことも無いけどお互い足は引っ張らない。表向きは、という感じかな。
貴族も派閥があるので面倒なのです……ジゼルちゃんも面倒って思ってる。
で、この四大公爵家のひとつ。
私達の家じゃないところが、外交を行っている家で。
そこでファンテールの話につながります。
「外交を行っているのはジャジャル家ですが、あのジュリアさんの家はこのジャジャルの派閥になるんですよね」
ジャジャル家は良い話をあまり聞かない。悪い話の方が多いとジゼルちゃんは言う。
王都にいたジゼルちゃんはこういう事にも詳しい。
「暗躍とか?」
「ええ。というか、おそらく……この前一つ、家が取り潰しになったのですけど、ジャジャルの派閥なのよ」
「取り潰し? なんで?」
「危ない薬を広めようとしていた、ということで。その家の親類の家のものにそれを試させていたとか。その方たちはそれが抜けなくて、王家の保護のもとで静養しているそうです」
それはまともな思考を奪ってしまうような、危ないものだったのだとジゼルちゃんは言う。
「…………ジゼルちゃん。その、被害にあってたお家ってどのあたりにあるかわかる?」
「ええ、王都の……」
詳しく場所を聞いて。それがいつのことなのかも教えてもらった。
それは私とテオがくるっと見て回ったあの、家じゃない。
危ない薬、と聞いて思い浮かべるのは麻薬だ。それがどんなものかは、私にはわからないけどよくないものであることは、わかる。
そして、私の中でいろんなことが予想だけど、つながっていく。
これ、お兄様知ってて、私たちに見に行かせたわよね?
なんという……そしてそれを聞いて、お兄様は何かピンときてお父様にそれを言ったか。
自分でどうにかしたかはわからないけど!
多分この件に関わっているんだと、思う。
お兄様何してるんですか。いえ、悪いことではないけど。
でも、これ危険じゃないの、って私は思う。
「んあ!?」
「!? な、何、レティ突然変な声だして」
「え、いや、うん。いや、ちょっとうん。あっ、あっ、何かつながっちゃいけないものがつながっていく」
突然よみがえる、お兄様と殿下の構想。
なんか協力しろーとか言っててテオも巻き込んだアレだ。
悪人退治的な、アレ。
この前手伝ったのは、すでにこの走りだったんじゃないの!?
わぁ! わぁ!! これまた、似たようなこと絶対あるわ!!
「レティ?」
「……ジゼルちゃんは巻き込まないようにするから!!」
お兄様の手から、守って見せるー!!
と、ふんすと意気込む私。
ジゼルちゃんは落ち着いたなら話の続きをするわ、と華麗にスルーだ。
やだこのスルーっぷりちょっと癖になりそう。
「ファンテールは隣国。地図の上では、一つ国を挟んであります」
「あ、おとなりのおとなりね」
「そうです。そこは海に面した国ですので、そこから塩を貰っているわけです」
「うんうん」
海に面した国。
塩を作り、そして各国へ向けて出す。それが主な産業。
けれどそれが、強い。塩は無くてはならないものだから。
ほかにも海産物とかもあるけど、それが一番。
「ファンテールは皇国ですから、皇王、皇子、皇女ですね」
今は、ガブさんのお兄さんが第一皇位継承権を持っていて、ガブさんは第二皇位継承権を持っている。
しかし、この皇位継承権云々が問題で命を狙われているのだとか。
「今は皇王が生きてらっしゃいますから良いのですが、亡くなった時にお兄様が皇王になられる」
「うん。で、第一位にガブさんがなるのよね?」
「はい。そして代替わりして五年の間に、皇王に子がいなければ第一位が固定されてしまうのです」
固定、とはと聞くと。
現時点で第一位の皇子に子がいるなら、皇王になった時にその子が自動的に第一になり、第二位だったガブさんは継承権を失う。
けれど、いない場合だ。
いない場合、五年の間は第一のガブさんは仮になるらしい。けど、五年過ぎて子が生まれなければ、第一はガブさんに固定。
五年の間に子が生まれれば、その子に第一位。ガブさんはそれからはずれる、ということらしい。
ジゼルちゃん、そんな他国の継承権のことよく知ってるね……すごい。
「ファンテールの継承はちょっと特殊だと思うけど……あの方がこちらに隠れているということは、継承権がらみでしょうね」
けど、まだ皇王は生きている。今のうちに亡き者に! とかそういう話なのかな。
詳しくはもちろんわからないけど、会いに行くなら注意が必要ということだ。
「なんか、ガブさんが微妙な立ち位置っぽいことはわかったわ」
「詳しく聞く必要はないと思いますけど、最低限これくらいは、ということで」
「うん、ジゼルちゃん、ありがと!」
本当に頼りになる私の一番の、友達です。
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