転生令嬢はやんちゃする

ナギ

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第一章

ふたたび王都へ

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 月日は流れ。といってもほんのちょっとだけど。
 私とテオは王都の学校に通うために領地を離れることになる。
 領地は私の好きな場所だ。育った場所だ。
 学校でしばらく過ごすけど、最終的にここに帰ってくるんだろうなぁと思ってる。
 長期休みも帰りたい! でも帰れないような気がちょっとする!
 そんなわけでがたごとと。馬車に……揺られておりまして……つらい。
「おしりいたい」
「レティ……女の子がおしりいたいとかするっと口にするのはどうかと思う……」
「えー! だってテオだけだし」
「……レティは僕にちょっとくだけすぎだと思う。一応、僕も男だから」
「えー……」
 テオに今更恥らったってどうにもならないじゃない!
「だってテオといると楽だし自然でいられるし。二人だけだから隠し事も何もしなくていいじゃない?」
「それは信頼してくれてるんだと思うけど」
「信頼とはちょっと違うわよ」
 じゃあ何、とテオは問う。
 改めて言うのはめちゃくちゃ恥ずかしいのだけど。
 たまには、そう。
 たまには、言ってみてもいいかもしれないと私は思う。
「信頼もしてるけどそれよりも、テオは私の……家族だから」
「家族……」
「そう。家族。大好きなひとりよ!」
「そっか、僕もレティのことが大好きだよ」
「ありがと!」
 テオに大好きって言われて、私は嬉しい。思わずにこにこ、今までより笑みも深くなる。
 そんな私にゆるやかに、テオは笑いかけてくれる。
「ふふ、なんか、こそばゆいわ。これからもよろしくね、テオ」
「何、突然。改まって」
「なんとなくかしら。だって、学校に通うとか、私絶対、何かするし……」
「ああ、うん……そうだね。もうすでに問題は色々と山積みかな」
 えー! と私が声をあげるとテオは大丈夫と言う。
「僕がいるから大丈夫だよ。何かまずいことになれば止めるし、色々と助けるから」
 それはとても心強い。
 テオがいるから、私は自由に好き勝手できる。という所もある。
 迷惑かけてごめんなさいって思うけど、テオはそれを許してくれる私の味方だ。
 私だけの、味方。
 あら、なんだかこの言い方すごくない? 私だけの、とか。
 誰にも渡したくないみたいじゃない。
 わあああああ!!! こんなの絶対人前でいっちゃだめなやつ!!
 気を付けないと……学校、という場所でテオは私のだから! とかいっちゃったらまずそう。
 いやどう考えてもまずい。
「気を付けるわ」
「? 何が?」
「……人前で、テオ大好きとか私のテオだからとか言わないように、気を付けるわ」
「…………別に、言ってもいいですよ」
「いいの!?」
「実際そうだかし。学校内では僕は、レティの従者だからね。だから大好きはともかく私の、は言ってもらった方がいい」
 そうしたほうが、僕がレティにとって必要というのがわかるだろうしとテオは言う。
 多少のやっかみを受けることはもう覚悟してるし、そういうのは何ともないんだけどねとテオは言う。
「それはテオの地位確立に必要なのね?」
「そうだね。うん、多分ジゼルさんとベルにもお願いすることになるかな」
 ジゼルちゃんとベルにも。というのは、説明会の後にお茶した時にちょっと言ってた。
 身分かぁ……私は仲良くなればそれでいいじゃない、って思うけどそうもいかないのが貴族の世界。
 ほとんどの人は、場所を弁えればという感じだから心配ないとは思うけど、中にはそういうのをプライベートにまで持ち込んでうるさい人もいるとか。
 学校は、私たちはまだそういう場所にでてないからいいと思うんだけどな。
 あ、でも親しき仲にも礼儀あり。守らなきゃいけないことがあるのはわかる。
「わかった。私もテオがいじめられるのは嫌だもの」
「いじめられ……なんだかレティに心配されるのがすごく、不思議な……」
「えー!」
「あとその、えー! っていうのももうちょっと減らそう」
「うー」
「それも」
「だってすぐに口からぽろっと出ちゃうから」
「うん……わかるけど。もうちょっと、頑張って抑えようか」
 はい、と私は返事をする。
 確かに、ちょっと思ったことをそのままするっと言い過ぎだとは自分でも思うわ。
 何にせよ、王都が近づいてくる。
 生活環境が変わって、新しい事が始まるのはちょっとどきどきします!
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