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本編
お小言とリクエスト
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「そりゃ、庭に突然あんなのが現れたら、私だってお小言を言わなければいけなくなるよ……」
「あははは……申し訳ないです、ごめんなさい、すみません」
ローたちと魔獣をどーんした翌日、俺は叔父上に呼び出された。
叔父上。つまり、国王だ。
まぁ、城に魔獣が突然現れたらそうなるだろう。
でも、それを言う相手はサージェであり、叔父上だとは思っていなかった。
ウベルディア叔父上は、まぁ倒した後だからいいけれどと笑う。
「解体はもう終わったんだよね?」
「ほぼ、かと。素材は冒険者ギルドが買い取りたいって言ってるのでそうなるかと。牙とか鱗とか、騎士団から要望が出てる分は抑えておきますけど」
「ああ、うん。じゃあ、肉は?」
「え?」
「肉は美味しく、いただくんだろう? ベーコン? それとも干し肉にしちゃうの?」
「……それは、叔父上。何か食べたいと?」
「うん」
うん、とぱぁっと笑顔浮かべてかわいらしく頷かれた。
ああ、叔父上も美味い物には目がなかったなぁと俺は思い出す。
マヨネーズの試食が誰よりも遅くて拗ねてしまって。毎回、試食が最後になるのはタイミングが悪いとしか言いようがないのだけれど。
「肉は厨房の方にも回しますけど……」
「うん、そうなるのはわかってる。でもたまにはカイの作ったものが食べたいなぁ、なんて」
「…………」
「そ、そんな顔しないでくれるかな? ……だって」
「だって?」
「ずるいじゃないか! サージェにはこの前ホットサンド? だっけ? そういうのと、アップルパイも振る舞ったんだろう! サージェも酷いんだよ? まったく分けてくれなかった。ほかにも色々サージェには差し入れしてるのに! 私には声をかけてくれない!」
「叔父上、国王だから予定一杯でしょう……」
「食事の時間くらい開けるよ!」
「……叔父上に出すと、全員になるでしょう……」
「うっ……」
じとっとした視線でそう言うと、叔父上は黙った。
そう、叔父上に出すと、だ。
叔父上に奥さん。それからその子も全員となる。ずるい! と言うからだ。
俺がサージェにちょこちょこ差し入れするのは仕事を俺の代わりに頑張っているから、という免罪符がある。
本当は養子であっても一番年上である俺がするべきことを、俺はしていない。
政治には関わらない。そうするべきだと思って、そう決めたことに後悔はないのだけれど、サージェには申し訳ないと思ってしまう。
それは皆わかっているのだ。
本当は俺が負うべきだったものをサージェが負っているからと。けれど幼い義弟や義妹たちはそれをまだわかってはいない。あの子らには大きくなって国政に携わるようになったらと話をしている。
騎士達は月一だ! と言われたこともあるが、それは俺が手伝ってもらっている報酬だと言っている。実際、何かあれば手伝ってもらってるし。遠地に行ったときに俺が頼んだ買い物をしてくれたり。
が、それでも納得できないので誕生日には俺が何か作ると約束しているのだ。
月一回、とか何かと理由をつけることを覚えてしまったら俺の料理ばっかり食べたくなる。それは、よろしくない。
城の料理を美味しくないと言い出したら困るからだ。まだ小さな子らは我慢を覚えていないのだから。
けれど、まぁ。
たまになら。たまになら、良いかなとも思う。
それに今回は肉がたくさんあるし、皆にもふるまうことになるだろう。そこで、お前達だけは我慢しなさいと言うのは逆にどうして、と言われそうだ。
何度も振る舞えば癖になってしまうから。俺の作る物は幼い弟妹にはご褒美だとか、特別なものでないといけないのだ。
「俺は作るだけで、一緒に食べませんよ。一緒に食べると、おねだりがひどくなる……料理長に渡して盛り付けからしてもらいます」
「ああ、うん。それでいいよ」
「俺も甘いから、顔を合わせるとホイホイつくるって言っちゃうし……それは良くないから」
「うん」
「そもそも、それを妹に知られると俺は……俺は」
こういう話はすぐに伝わる。
そして、ずるい。私にはしないのにと何も言わず怒るのが俺の妹だ。俺の、実の妹。
それが一番恐ろしい。
俺は妹に嫌われたくないのだ。よし、妹にも送ろう。
あ、でももう寄宿舎に帰ってるか。どうしよう。
いいや、ローがいるから、ローにお願いして連れて行ってもらおう。
「……じゃあ、作るけど皆には内緒で」
「内緒にしててもわかると思うよ?」
「え?」
「カイの作るものはわかるよ。だって家族だからね」
にこにこと微笑む叔父上。
俺はなんだか、居心地の悪さを感じてしまう。
叔父上は、俺を養子にして家族として迎えてくれている。
けれど俺はそれがまだ受け入れられないのだ。
自分からそう望んだくせに。
「……何か、食べたいものがあるんですよね」
「うん」
「それを俺は聞かずに作ります。何がいいのかなんて聞かなくてもわかりますから」
「カイ」
「……家族のことくらい、わかる」
それは、素直になれない俺の精一杯だ。
亡くなった父と、叔父上と。どちらも家族ではあるのだ。
でも叔父上を父と呼ぶのは、やっぱり難しいこと。
叔母上を母と呼ぶのも。そして幼い子たちを弟、妹と呼ぶのもむず痒い。
だって俺には母上と妹がいるのだから。
簡単に割り切れないまま、10年くらい過ぎてしまったなぁと、思っている。
けれど、嫌ってはいないということはわかるから黙っていてくれてるのだろう。
「楽しみにしているよ、カイ」
叔父上の言葉に笑って退室し、まず向かったのは厨房だ。
それは料理長に、今日の晩餐の内容を聞いて、肉料理は俺が作るけど盛り付けからをお願いするために。
声かければ、全部作っても良いんですよ、みたいな顔されたけど肉料理だけ。
今日は豚肉のリエット。スープは南瓜の冷製スープ。ハムのクネル。
旬の魚のパン粉焼き。ソースはバジル系のさらっとしたもの。それに貝の漁師風白ワイン蒸し。
もう一皿はエビのソテー。こっちは殻砕いてのソースか。定番だな。
それから肉料理が来て、デザートの前には口直しのレモンソルベ。それからフルーツサラダと。
「……昨日、肉料理は何を出した?」
「昨日は……骨付き肉と野菜。それから鶏肉の香草焼きですね」
「そっか。じゃあ煮込みにしよう。一皿でいいか?」
「良いと思いますが。どのようなものに?」
俺はハンバーグと答える。
料理長は本当にあれ? というような顔だ。
正直、その献立を聞くと。肉をローストしてちょっと変わったソースをつける方がきっとあう。
けれど、食べたいものはハンバーグなのだ。リクエストを受けたのだからそれを出すしかない。
ちょっと高級っぽい感じにすればメインもはれる。
「ん? しかし煮込みと……」
「ハンバーグ、煮込むんだよ」
ハンバーグ。それは叔父上も、幼い弟妹も好きな物だ。
しかしそれは焼いて出したことがあるだけ。煮込みは初めてだ。
ま、多めに作って渡せばいいか。
料理長にまたあとでと言って、俺は研究所に戻る。
そこで色々、書類をまとめていたリュスレインにただいまという。
「カイ様、沢山のお肉はどうするんですか?」
「んー、加工とか頑張る。それまでは保存。と、脂身の多いのと赤みの多いの、持ってきてくれるか?」
「はい」
その間に、俺は調理器具を出す。
久しぶりの出番。ミンサーだ。
これはあっちの世界で見て、何これ欲しいで作ってもらった。職人に説明を頑張ってして、作ってもらった!!
あっちで見たものをそのまま図に、正確に書き起すなんて技術はもちろんない。それでも何度も話して説明して、試行錯誤をしてこれはできあがった。
それ以降、ちょっとずつ普及してるらしい。というのも腸詰めを作る時なんかに、あらみじん切りなんかにするより手早くできるから、肉屋なんかでは重宝されてるとか。
それを準備したところへ、肉を抱えてリュスレインが返ってくる。そこにはローもいて手伝ってくれてるようだ。
「大将ー! なんか作るんだろ? 手伝うから食わせてー」
「いいけど。じゃあ、その持ってきた肉をそれで挽いて欲しい」
ローが食うとなると、これだけじゃ足りない。
肉、この倍持ってきてとリュスレインにお願いする。リュスレインはもう一度、ローを伴って保存庫へ。
割合は目分量。赤みがちょっと多いくらいで挽いてもらう事にした。
さて、その間に。
俺はがんばってオニオンのみじん切り。
これはどうあっても手作業だ。魔術使ってできるけど、面倒でも自分の手でしたい。
ボウルいっぱい、どっさりのみじん切り。これを半分火が通るまで炒めて、取り出して、冷ます。
「肉ひいたー」
「ありがと」
どっさりのひき肉。
まず、叔父上達の分をキープする。冷めたオニオンと生のまま。それから硬くなったパンを削ったのと卵とちょっと牛乳を用意する。あとは香辛料なんかも必要。
「ハンバーグですか?」
「そう。俺達の夕食もこれにしようか」
「はい!」
「ローは何個食べる?」
「えっ、何個でも……」
そう来たか。うーん、とりあえず作れるだけ作るか。
ローたちのは煮込むかどうかはまた別として。
必要な材料を混ぜていく。が、これが結構キツイ。
素手でやるけど、そのままだと脂が溶けていく。だから手には、魔術をかけていた。
手に一枚ヴェールを纏うような感覚だ。だから、手が冷えていく。
でもよく捏ねておいた方がなぁと俺は頑張った。大量のハンバーグのもとをこねこね。
その間に、リュスレインには付け合せの野菜の準備をお願いする。
マッシュポテトと。それからいろんな野菜を良い感じに切ってもらっていく。
芽キャベツとかころっと、良い感じなので下ゆでしてもらったり。
そういう指示をしながら捏ねて、成形して。
今、俺の目の前にはたくさんのハンバーグがあった。そのいくつかには、チーズも仕込んでいたりする。
で、先に煮込みのソースを俺は作ることに。
濃い味系のだよなー。よし、ドミグラスソースにしよう。かつて俺が頑張って作って、作り方を公開したやつ。この作り方は、公開にお金を取っている。
あれは根気よく作るのがめんど……時間がかかるものだから、それを作ってくれる店には感謝だ。
いや、本当に。手間のかかるものを基本的な味までつくって瓶詰で売っている。ありがたいと思う。
というわけで、ストックもあるから棚からそれを取り出す。
具材はトマトとキノコだろう。
肉厚のキノコを薄切りにする。他にも、形そのままと色んな種類のものを準備。オニオンも細く切って準備して。
最初にガーリックを油で炒めて、そこに投入。ささっと炒めてどばっとソースを入れていく。
それから、トマト煮になってるのも入れて塩コショウ。味を調えて、いい感じ。ちょっと赤ワインも入れたりしておく。
煮込みソースの方はこれでほぼ完成だろう。
「さて……焼くか」
夕食の時間にはまだ早い。けど、厨房も忙しい時に持っていくのもな。
ハンバーグに焼き色を付けて、少し水を入れて蓋をして蒸し焼き。
それからさっき作ったソースを入れて煮込む。
一つのフライパンに5個ってとこなので、もう一つ同じように作る。
10個あれば、足りるだろうか。盛り付けを見せる用と小さめのもいくつか入れておこう。
叔父上、叔母上。それから義弟と義妹。サージェは、多分夕食は別だ。
少し深い鍋を用意して、そこへハンバーグを入れる。そこに煮込みのソースを足す。
リュスレインに準備してもらった野菜とマッシュポテトを準備。あと予備として焼いてないハンバーグも皿へ。
煮込みソースも鍋に用意した。結構な大荷物だが準備はこれで良し。
「厨房に持っていくからローついてきてくれよ」
「なんで俺?」
「リュスレインにはその間に色々準備してもらうから」
ローはわかったと頷いてひょいひょいと準備したものを持つ。
俺はリュスレインに、ハンバーグを挟めるようなパンを準備しておいてくれとお願いした。
食パンじゃなくて、丸型のパンでと。それを半分に切って、できるなら切り口を焼いてくれーと。
それを任されたリュスレインは頷いて、あと野菜も用意しておきますねと言う。察しがよくて助かる。
それから厨房にできたものを運ぶ。
「料理長ー、こんな感じで、こうして」
そこで俺は盛り付けはこうとやってみせた。
ハンバーグを取出し、ソースを少しいれて温める。
その間にさらにはマッシュポテトを皿の中央よりすこし外してぽんと添える。
ハンバーグを中央に、そして煮込みソースを。それから付け合せの野菜を飾ってできあがり。
「わかりました。して、味見は……」
「それは」
「それは! 俺が食べる!」
うん、そうなると思った。
料理長は残念そうな顔をしたが、仕方ない。これはローにここまで運んでもらった代金みたいなものだ。
ローは厨房の端、小さなテーブルにそれを持っていく。
日々の恵みに感謝して、ローはハンバーグを口へ運んだ。
「どうだ?」
「…………うまい。大将はやっぱり、すげーな!」
ロー曰く。
じゅわっと肉汁が零れる。それは零れてしまうけどソースと絡むから問題ないとのこと。
肉の食感は口にするとほろりと解ける。赤身の味と脂の味。それに負けないソースの濃さ。
ソースといえば、それに絡んだキノコ類もまた良い。種類違いで食感も違う。味も違う。
そしてソースはマッシュポテトと絡むとすごく美味いのだとか。
野菜もほんのりバターの味がするとか、ソースとあうとか。それはリュスレインがしてくれたところだからな。
あとで伝えてやってと俺は言う。
最終的に、ローは厨房からパンももらってそれを全部、ぺろっと平らげた。
「はー……アレはもらえないんだよな?」
「ああ。研究所にソースはまだ残ってるし、作ってやるよ」
「わーい! 大将、俺頑張ってまた狩ってくる!」
何を、とは聞かない。どんな魔獣を狩るつもりだ、とも聞かない。
だって、何やるかわからないし。
それから、研究所に戻って。
リュスレインが野菜とパンを用意してくれてたのでハンバーグを焼いて、チーズをのせる。
チーズ乗せただけでローのテンションが上がったのは面白かった。
焼いたパンにバター塗って、ハンバーグを乗せ、野菜。ケチャップとマスタードを加えてパンを乗せる。
異界渡りでこういうの食べてるの見たんだよなー。
ひとまずってことでローにはひとつ。
俺とリュスレインで半分ずつ。
「うまーい!! さっきのよりこの方が俺は好き!」
「……美味いな」
「美味しいです。でも」
「そう、なんか……もさっとしてる、味が」
美味い。美味いんだ。
けど、なんだか味がぼやっとしているような。
うーん……な、なんだろう。
パンチが足りない?
食感か? マスタードもっといる? いやそれは、多分ダメだ。
俺の好み的には適量。じゃあケチャップか? 味が濃い? それもない。
「大将……もっと!」
「ん、ああ」
請われて俺はもう一度ハンバーグを焼く。けど、何が足りないのかなぁとずっと考えるばかりだ。
ローにどうすればいいか聞けば、今度は普通に食べるとのこと。
それならとマッシュポテトと野菜。そこに乗せてケチャップも渡す。するとこの後は煮込みが良いと言うから、ついでだとリュスレインにも食べるかと問う。
「食べます! でも小さいので」
「わかった」
「俺はみっつー」
「お前は、本当に良く食べるな……」
と、作っていると。
でかけていたローの仲間も戻ってきて。これは全員分だなぁと俺は作る数を増やす。
リュスレインも大急ぎでバゲットを切ってくれていた。
片手間にアヒージョを作り、煮込まずそのまま、焼いたハンバーグを作り。
そうすると勝手に、できた傍から好みで、それぞれ挟んで食べていた。
作ってるのと、食べてる姿を見てると腹がいっぱいになってくるな。
しばらく作りに作ってひと段落。
すると、きゅうと腹が鳴った。
作っている間は感じていなかった欲求の表れだ。
まだ皿の上に残っていたハンバーグをパンに挟み、これだけじゃなぁと野菜を挟みたい気分。
そう思っていると、斜め前で。
「……ベネット、何を挟んでるんだ?」
「え、ピクルスです! このお肉、こってりじゃないですかー」
黒魔術士のベネットは瓶からピクルスを取り出して挟んでいる。
小さなキュウリとか玉ねぎとか、無節操に。
「すごくはみ出てるんだけど……」
「はい! 切ればいいけど、面倒だったので」
「そう……」
俺はベネットを真似てみることにした。けど、そのままは挟まない。
キュウリとって少し厚みは残して切っていく。
そして食べると。
「あ、美味い。というより、これだ。ベネット、お前は天才だな……」
「ありがとうです!」
うん。パンにこうしてはさむなら、ピクルスは良いアクセント。味が締まった。
さきまでぼんやりしてたからな。
そしてこれを見ていたローも真似をし始める。リュスレインも。というか、皆だ。
あっ、俺が漬けてたピクルスが消えていく……また、漬けなければ。
**********
今日のメインは、特別だった。
家族の夕食は、私と妻、そして幼い双子で毎日とっている。時折、時間ができればサージェも一緒になのだが、あれには今、他国との折衝を任せているから忙しくてなかなかこれないのだ。
こじんまりとした部屋で家族と給仕のみ。距離が近いのは私がそうしたいからだ。
今日の食事も料理長が腕を振るってくれた。
前菜は豚肉のリエット。時間をかけて火を入れたものだ。それを薄く切り、かりっと焼いたバケットにつけて食べる。
うん、程よい塩気のもので美味しい。
続いて南瓜のスープ。良く冷えて舌触りは滑らかだ。スープは子供たちが好きだから一品、毎日入れてもらっている。
昨日は人参、一昨日はじゃがいも。そろそろトマト系のスープが恋しい。明日はそうして欲しいとリクエストしておこう。
次はクネルか。肉がたくさんあるからそれを使ったのかな? されこれは蒸したのか、ゆでたのか。蒸しているような気がする。
柔らかな感覚はスプーンを入れただけでわかる。けれど断面にハムも見える。それから野菜も入っているのかな?
食めばキノコだろう。ほんのりとそのような味がする。ソースはチーズがメインだろうか。まったりこってりとしていてよくあっている。
「今日も食事も美味しいね」
「ええ。さすが料理長……」
「おいしいです!」
「次も楽しみです」
妻も笑み零し、双子達も次は何かなと楽しげだ。
マナーを身に着けるべく、こうして一緒に食べている。まだ多少の粗相はあるが、それは幼いが故。
大きくなれば自然と気付く事だろう。それに、家族だけなのだからソースが跳ねようが、音を立てようが構わない。
自分でしまった、という顔をして先に謝るのだからわかっているのだ。
家族で今日あった事など、何気ない話をしていると次の日と皿。
旬の魚を焼いたものだが、上にはパン粉がかかっている。しかし、パン粉そのままではなく緑も混じっているので、香草焼きかな? ソースも緑。香りとしては、バジルだろうか。
先程のクネルがこってり目だったからさらっと食べれる魚も良い。そして皿の上、一緒に乗っているのは貝の白ワイン蒸しか。
「貝のワイン蒸しかしら。あなた、思い出しますわね」
「ああ、そうだね」
若い頃、二人で城を抜け出して。
城下町の酒場で食べた覚えがある。そう、あれは兄上からたまには市井に混ざってみるのも面白いとそそのかされたからだ。
あとで本当に行ったのかと笑われたのだけれども。
そんな思い出に笑みを零し合っていると、双子たちが何のお話と首を傾げる。
大きくなったら一緒に行きましょうねと妻が言うので、楽しみにしていると二人ははしゃぐのだ。
そして次に、エビ。私はエビが好物の一つでもある。小さなエビをカラッとあげて頭から食べるのも好きなのだが、こうして大きなエビを食べるのも好きだ。
ソースの色は殻と同じ色。うん、定番だね。定番だけど、とても好きだ。
双子達はエビの頭を切り離すのに少し苦労している。しかしそれもまた経験だ。
マナーは自分で、そうして手を動かし、学ばなければ身につかないのだから。
「お父様、にこにこしてどうされたのですか?」
「ん? にこにこしているかい?」
「はい!」
「それはね……ほら、大きな怪物が、お庭に現れただろう?」
「はい! おおきなの!」
「ゆうしゃがたおしたとききました!」
「そうだよ。勇者がね、そのお肉を分けてくれたんだ。あのお肉はとても美味しいお肉」
「おにく……」
「おにく……」
双子達は声をそろえ、ごくりと息を呑む。
わかる。わかるよ。美味しいお肉だと聞いたらごくりとなる。私もなったのだから。
そして、今日それを調理したのはカイだ。
我が子となりつつ、距離をとる。カイの気持ちも、わからないでもないのだ。
兄上が亡くなり、次の国王はと揉める日々。色々と嫌な思いもしたのだろう。
それを終わらせるために、私の息子となったカイ。サージェと同じように育てて、本当に、我が子のように接していたのだが、やはり彼はあの時すでに、子供であり大人だったのだ。
おそらく、カイの選択は間違っていない。しかし、少し寂しくもあるのだ。
養子だが甥っ子でもある。もう少し、甘えてくれてもと思うのだ。
が、複雑な気持ちもあるのだろうからそっとしている。不仲と言うわけではないのだから。
そう、カイとのことを思っていると皿が運ばれてきた。
「良い香りだ……」
「わぁ! ハンバーグ! ハンバーグかな?」
「ソースがいっぱいかかってる!」
そう、ハンバーグ。
私も、妻も。双子達も好きなハンバーグ。これはカイが初めて私たち皆に作ってくれた料理でもある。
それを妻は覚えているのだろう。私の方をちらりと見て、小さく笑みを零した。
双子達は嬉しいと言いあっていて、まだ気づいてはいない。
ハンバーグにナイフを入れる。ほろりと崩れるように切れた。しかし、その断面はいつもと違う。
このソースがしっかりと滲みこんでいるのだろう。
「ソースをかけただけではないのですね」
どうやったのか聞いている? と妻が侍従に声をかけるとはいと頷く。
そちらは煮込みハンバーグなのですと。
ほほう。ハンバーグを、煮込んだ。
煮込んだ!
ソースの感じからして、カイが作りだしたドミなんとかソースだろうか。シチューのようでもある。
双子達は一口食べて瞳を輝かせている。これは、相当美味しいらしい。
私も急いで口に運ぶ。
「! これは……」
ほろりと。
濃い味と肉の旨みが絡み合うような。美味しい。焼いたままでも美味しいのだろうが、煮込むとまた別の美味しさだ。
それにこのソースからは野菜の旨みも感じる。キノコだろうか、これにあう。あうとしか言えない。
次に、添えてある野菜にも手を伸ばす。これもソースに絡めるのが良いだろう。
人参は丁寧に熱を通してあるのだろう。口にすれば甘みが最初に広がった。それからマッシュポテト。
これはどう考えても、絡めねばなるまい。
ふんふんと頷きながら食べていると、妻がパンを手に取るのが見えた。
おお、なるほど。ソースに絡めると……私もやろう。すると双子達も真似を始めていた。
「なんだか……カイにーさまのご飯を食べてるようです!」
「うん! 僕もそう思う。カイにーさまとサージェにーさまとも一緒にご飯食べたかったね」
「うん……」
双子達は美味しいと言いながらもしょんぼりとしている。
これは、と私と妻は顔を見合わせた。
これはカイが作ったものだよと教えるかどうかは、私次第なのだろう。
しかしこのしょんぼりした姿を見たら、伝えざるをえない。内緒にしておくのはかわいそうでもある。
「二人とも、このハンバーグはね。お肉がいっぱいあるからと、カイが作ってくれたのだよ」
「カイにーさまが!」
「本当に!?」
「ああ」
それなら、お礼をしなければと双子たちは言い始める。
お礼にお手紙を書こう。それにお花を添えるのは私ねと。
その相談をほほえましくみつつ、私は途中でそれくらいにしなさいと止めた。
だって、まだハンバーグは残っている。冷めてしまうだろうと。
食事が終わってから相談しなさいと言うと、お母様も混ぜてねと妻が言う。
それなら私だって混ぜて欲しい。
ありがとうと感謝を伝えよう。その相談をしようと私達の今夜の予定は決まったのだ。
しかし私は、この後何故呼んでくれなかったのかと、サージェに怒られることになる。
呼べば時間を調整して来るのは、わかっていたんだよ?
けれどね。
分けてくれなかったサージェに少しくらい、いじわるしたくもなるじゃないか。
そう言うと、呆れた顔をされてしまったのだった。
【お小言とリクエスト】
・煮込みハンバーグ
・ハンバーガー
「あははは……申し訳ないです、ごめんなさい、すみません」
ローたちと魔獣をどーんした翌日、俺は叔父上に呼び出された。
叔父上。つまり、国王だ。
まぁ、城に魔獣が突然現れたらそうなるだろう。
でも、それを言う相手はサージェであり、叔父上だとは思っていなかった。
ウベルディア叔父上は、まぁ倒した後だからいいけれどと笑う。
「解体はもう終わったんだよね?」
「ほぼ、かと。素材は冒険者ギルドが買い取りたいって言ってるのでそうなるかと。牙とか鱗とか、騎士団から要望が出てる分は抑えておきますけど」
「ああ、うん。じゃあ、肉は?」
「え?」
「肉は美味しく、いただくんだろう? ベーコン? それとも干し肉にしちゃうの?」
「……それは、叔父上。何か食べたいと?」
「うん」
うん、とぱぁっと笑顔浮かべてかわいらしく頷かれた。
ああ、叔父上も美味い物には目がなかったなぁと俺は思い出す。
マヨネーズの試食が誰よりも遅くて拗ねてしまって。毎回、試食が最後になるのはタイミングが悪いとしか言いようがないのだけれど。
「肉は厨房の方にも回しますけど……」
「うん、そうなるのはわかってる。でもたまにはカイの作ったものが食べたいなぁ、なんて」
「…………」
「そ、そんな顔しないでくれるかな? ……だって」
「だって?」
「ずるいじゃないか! サージェにはこの前ホットサンド? だっけ? そういうのと、アップルパイも振る舞ったんだろう! サージェも酷いんだよ? まったく分けてくれなかった。ほかにも色々サージェには差し入れしてるのに! 私には声をかけてくれない!」
「叔父上、国王だから予定一杯でしょう……」
「食事の時間くらい開けるよ!」
「……叔父上に出すと、全員になるでしょう……」
「うっ……」
じとっとした視線でそう言うと、叔父上は黙った。
そう、叔父上に出すと、だ。
叔父上に奥さん。それからその子も全員となる。ずるい! と言うからだ。
俺がサージェにちょこちょこ差し入れするのは仕事を俺の代わりに頑張っているから、という免罪符がある。
本当は養子であっても一番年上である俺がするべきことを、俺はしていない。
政治には関わらない。そうするべきだと思って、そう決めたことに後悔はないのだけれど、サージェには申し訳ないと思ってしまう。
それは皆わかっているのだ。
本当は俺が負うべきだったものをサージェが負っているからと。けれど幼い義弟や義妹たちはそれをまだわかってはいない。あの子らには大きくなって国政に携わるようになったらと話をしている。
騎士達は月一だ! と言われたこともあるが、それは俺が手伝ってもらっている報酬だと言っている。実際、何かあれば手伝ってもらってるし。遠地に行ったときに俺が頼んだ買い物をしてくれたり。
が、それでも納得できないので誕生日には俺が何か作ると約束しているのだ。
月一回、とか何かと理由をつけることを覚えてしまったら俺の料理ばっかり食べたくなる。それは、よろしくない。
城の料理を美味しくないと言い出したら困るからだ。まだ小さな子らは我慢を覚えていないのだから。
けれど、まぁ。
たまになら。たまになら、良いかなとも思う。
それに今回は肉がたくさんあるし、皆にもふるまうことになるだろう。そこで、お前達だけは我慢しなさいと言うのは逆にどうして、と言われそうだ。
何度も振る舞えば癖になってしまうから。俺の作る物は幼い弟妹にはご褒美だとか、特別なものでないといけないのだ。
「俺は作るだけで、一緒に食べませんよ。一緒に食べると、おねだりがひどくなる……料理長に渡して盛り付けからしてもらいます」
「ああ、うん。それでいいよ」
「俺も甘いから、顔を合わせるとホイホイつくるって言っちゃうし……それは良くないから」
「うん」
「そもそも、それを妹に知られると俺は……俺は」
こういう話はすぐに伝わる。
そして、ずるい。私にはしないのにと何も言わず怒るのが俺の妹だ。俺の、実の妹。
それが一番恐ろしい。
俺は妹に嫌われたくないのだ。よし、妹にも送ろう。
あ、でももう寄宿舎に帰ってるか。どうしよう。
いいや、ローがいるから、ローにお願いして連れて行ってもらおう。
「……じゃあ、作るけど皆には内緒で」
「内緒にしててもわかると思うよ?」
「え?」
「カイの作るものはわかるよ。だって家族だからね」
にこにこと微笑む叔父上。
俺はなんだか、居心地の悪さを感じてしまう。
叔父上は、俺を養子にして家族として迎えてくれている。
けれど俺はそれがまだ受け入れられないのだ。
自分からそう望んだくせに。
「……何か、食べたいものがあるんですよね」
「うん」
「それを俺は聞かずに作ります。何がいいのかなんて聞かなくてもわかりますから」
「カイ」
「……家族のことくらい、わかる」
それは、素直になれない俺の精一杯だ。
亡くなった父と、叔父上と。どちらも家族ではあるのだ。
でも叔父上を父と呼ぶのは、やっぱり難しいこと。
叔母上を母と呼ぶのも。そして幼い子たちを弟、妹と呼ぶのもむず痒い。
だって俺には母上と妹がいるのだから。
簡単に割り切れないまま、10年くらい過ぎてしまったなぁと、思っている。
けれど、嫌ってはいないということはわかるから黙っていてくれてるのだろう。
「楽しみにしているよ、カイ」
叔父上の言葉に笑って退室し、まず向かったのは厨房だ。
それは料理長に、今日の晩餐の内容を聞いて、肉料理は俺が作るけど盛り付けからをお願いするために。
声かければ、全部作っても良いんですよ、みたいな顔されたけど肉料理だけ。
今日は豚肉のリエット。スープは南瓜の冷製スープ。ハムのクネル。
旬の魚のパン粉焼き。ソースはバジル系のさらっとしたもの。それに貝の漁師風白ワイン蒸し。
もう一皿はエビのソテー。こっちは殻砕いてのソースか。定番だな。
それから肉料理が来て、デザートの前には口直しのレモンソルベ。それからフルーツサラダと。
「……昨日、肉料理は何を出した?」
「昨日は……骨付き肉と野菜。それから鶏肉の香草焼きですね」
「そっか。じゃあ煮込みにしよう。一皿でいいか?」
「良いと思いますが。どのようなものに?」
俺はハンバーグと答える。
料理長は本当にあれ? というような顔だ。
正直、その献立を聞くと。肉をローストしてちょっと変わったソースをつける方がきっとあう。
けれど、食べたいものはハンバーグなのだ。リクエストを受けたのだからそれを出すしかない。
ちょっと高級っぽい感じにすればメインもはれる。
「ん? しかし煮込みと……」
「ハンバーグ、煮込むんだよ」
ハンバーグ。それは叔父上も、幼い弟妹も好きな物だ。
しかしそれは焼いて出したことがあるだけ。煮込みは初めてだ。
ま、多めに作って渡せばいいか。
料理長にまたあとでと言って、俺は研究所に戻る。
そこで色々、書類をまとめていたリュスレインにただいまという。
「カイ様、沢山のお肉はどうするんですか?」
「んー、加工とか頑張る。それまでは保存。と、脂身の多いのと赤みの多いの、持ってきてくれるか?」
「はい」
その間に、俺は調理器具を出す。
久しぶりの出番。ミンサーだ。
これはあっちの世界で見て、何これ欲しいで作ってもらった。職人に説明を頑張ってして、作ってもらった!!
あっちで見たものをそのまま図に、正確に書き起すなんて技術はもちろんない。それでも何度も話して説明して、試行錯誤をしてこれはできあがった。
それ以降、ちょっとずつ普及してるらしい。というのも腸詰めを作る時なんかに、あらみじん切りなんかにするより手早くできるから、肉屋なんかでは重宝されてるとか。
それを準備したところへ、肉を抱えてリュスレインが返ってくる。そこにはローもいて手伝ってくれてるようだ。
「大将ー! なんか作るんだろ? 手伝うから食わせてー」
「いいけど。じゃあ、その持ってきた肉をそれで挽いて欲しい」
ローが食うとなると、これだけじゃ足りない。
肉、この倍持ってきてとリュスレインにお願いする。リュスレインはもう一度、ローを伴って保存庫へ。
割合は目分量。赤みがちょっと多いくらいで挽いてもらう事にした。
さて、その間に。
俺はがんばってオニオンのみじん切り。
これはどうあっても手作業だ。魔術使ってできるけど、面倒でも自分の手でしたい。
ボウルいっぱい、どっさりのみじん切り。これを半分火が通るまで炒めて、取り出して、冷ます。
「肉ひいたー」
「ありがと」
どっさりのひき肉。
まず、叔父上達の分をキープする。冷めたオニオンと生のまま。それから硬くなったパンを削ったのと卵とちょっと牛乳を用意する。あとは香辛料なんかも必要。
「ハンバーグですか?」
「そう。俺達の夕食もこれにしようか」
「はい!」
「ローは何個食べる?」
「えっ、何個でも……」
そう来たか。うーん、とりあえず作れるだけ作るか。
ローたちのは煮込むかどうかはまた別として。
必要な材料を混ぜていく。が、これが結構キツイ。
素手でやるけど、そのままだと脂が溶けていく。だから手には、魔術をかけていた。
手に一枚ヴェールを纏うような感覚だ。だから、手が冷えていく。
でもよく捏ねておいた方がなぁと俺は頑張った。大量のハンバーグのもとをこねこね。
その間に、リュスレインには付け合せの野菜の準備をお願いする。
マッシュポテトと。それからいろんな野菜を良い感じに切ってもらっていく。
芽キャベツとかころっと、良い感じなので下ゆでしてもらったり。
そういう指示をしながら捏ねて、成形して。
今、俺の目の前にはたくさんのハンバーグがあった。そのいくつかには、チーズも仕込んでいたりする。
で、先に煮込みのソースを俺は作ることに。
濃い味系のだよなー。よし、ドミグラスソースにしよう。かつて俺が頑張って作って、作り方を公開したやつ。この作り方は、公開にお金を取っている。
あれは根気よく作るのがめんど……時間がかかるものだから、それを作ってくれる店には感謝だ。
いや、本当に。手間のかかるものを基本的な味までつくって瓶詰で売っている。ありがたいと思う。
というわけで、ストックもあるから棚からそれを取り出す。
具材はトマトとキノコだろう。
肉厚のキノコを薄切りにする。他にも、形そのままと色んな種類のものを準備。オニオンも細く切って準備して。
最初にガーリックを油で炒めて、そこに投入。ささっと炒めてどばっとソースを入れていく。
それから、トマト煮になってるのも入れて塩コショウ。味を調えて、いい感じ。ちょっと赤ワインも入れたりしておく。
煮込みソースの方はこれでほぼ完成だろう。
「さて……焼くか」
夕食の時間にはまだ早い。けど、厨房も忙しい時に持っていくのもな。
ハンバーグに焼き色を付けて、少し水を入れて蓋をして蒸し焼き。
それからさっき作ったソースを入れて煮込む。
一つのフライパンに5個ってとこなので、もう一つ同じように作る。
10個あれば、足りるだろうか。盛り付けを見せる用と小さめのもいくつか入れておこう。
叔父上、叔母上。それから義弟と義妹。サージェは、多分夕食は別だ。
少し深い鍋を用意して、そこへハンバーグを入れる。そこに煮込みのソースを足す。
リュスレインに準備してもらった野菜とマッシュポテトを準備。あと予備として焼いてないハンバーグも皿へ。
煮込みソースも鍋に用意した。結構な大荷物だが準備はこれで良し。
「厨房に持っていくからローついてきてくれよ」
「なんで俺?」
「リュスレインにはその間に色々準備してもらうから」
ローはわかったと頷いてひょいひょいと準備したものを持つ。
俺はリュスレインに、ハンバーグを挟めるようなパンを準備しておいてくれとお願いした。
食パンじゃなくて、丸型のパンでと。それを半分に切って、できるなら切り口を焼いてくれーと。
それを任されたリュスレインは頷いて、あと野菜も用意しておきますねと言う。察しがよくて助かる。
それから厨房にできたものを運ぶ。
「料理長ー、こんな感じで、こうして」
そこで俺は盛り付けはこうとやってみせた。
ハンバーグを取出し、ソースを少しいれて温める。
その間にさらにはマッシュポテトを皿の中央よりすこし外してぽんと添える。
ハンバーグを中央に、そして煮込みソースを。それから付け合せの野菜を飾ってできあがり。
「わかりました。して、味見は……」
「それは」
「それは! 俺が食べる!」
うん、そうなると思った。
料理長は残念そうな顔をしたが、仕方ない。これはローにここまで運んでもらった代金みたいなものだ。
ローは厨房の端、小さなテーブルにそれを持っていく。
日々の恵みに感謝して、ローはハンバーグを口へ運んだ。
「どうだ?」
「…………うまい。大将はやっぱり、すげーな!」
ロー曰く。
じゅわっと肉汁が零れる。それは零れてしまうけどソースと絡むから問題ないとのこと。
肉の食感は口にするとほろりと解ける。赤身の味と脂の味。それに負けないソースの濃さ。
ソースといえば、それに絡んだキノコ類もまた良い。種類違いで食感も違う。味も違う。
そしてソースはマッシュポテトと絡むとすごく美味いのだとか。
野菜もほんのりバターの味がするとか、ソースとあうとか。それはリュスレインがしてくれたところだからな。
あとで伝えてやってと俺は言う。
最終的に、ローは厨房からパンももらってそれを全部、ぺろっと平らげた。
「はー……アレはもらえないんだよな?」
「ああ。研究所にソースはまだ残ってるし、作ってやるよ」
「わーい! 大将、俺頑張ってまた狩ってくる!」
何を、とは聞かない。どんな魔獣を狩るつもりだ、とも聞かない。
だって、何やるかわからないし。
それから、研究所に戻って。
リュスレインが野菜とパンを用意してくれてたのでハンバーグを焼いて、チーズをのせる。
チーズ乗せただけでローのテンションが上がったのは面白かった。
焼いたパンにバター塗って、ハンバーグを乗せ、野菜。ケチャップとマスタードを加えてパンを乗せる。
異界渡りでこういうの食べてるの見たんだよなー。
ひとまずってことでローにはひとつ。
俺とリュスレインで半分ずつ。
「うまーい!! さっきのよりこの方が俺は好き!」
「……美味いな」
「美味しいです。でも」
「そう、なんか……もさっとしてる、味が」
美味い。美味いんだ。
けど、なんだか味がぼやっとしているような。
うーん……な、なんだろう。
パンチが足りない?
食感か? マスタードもっといる? いやそれは、多分ダメだ。
俺の好み的には適量。じゃあケチャップか? 味が濃い? それもない。
「大将……もっと!」
「ん、ああ」
請われて俺はもう一度ハンバーグを焼く。けど、何が足りないのかなぁとずっと考えるばかりだ。
ローにどうすればいいか聞けば、今度は普通に食べるとのこと。
それならとマッシュポテトと野菜。そこに乗せてケチャップも渡す。するとこの後は煮込みが良いと言うから、ついでだとリュスレインにも食べるかと問う。
「食べます! でも小さいので」
「わかった」
「俺はみっつー」
「お前は、本当に良く食べるな……」
と、作っていると。
でかけていたローの仲間も戻ってきて。これは全員分だなぁと俺は作る数を増やす。
リュスレインも大急ぎでバゲットを切ってくれていた。
片手間にアヒージョを作り、煮込まずそのまま、焼いたハンバーグを作り。
そうすると勝手に、できた傍から好みで、それぞれ挟んで食べていた。
作ってるのと、食べてる姿を見てると腹がいっぱいになってくるな。
しばらく作りに作ってひと段落。
すると、きゅうと腹が鳴った。
作っている間は感じていなかった欲求の表れだ。
まだ皿の上に残っていたハンバーグをパンに挟み、これだけじゃなぁと野菜を挟みたい気分。
そう思っていると、斜め前で。
「……ベネット、何を挟んでるんだ?」
「え、ピクルスです! このお肉、こってりじゃないですかー」
黒魔術士のベネットは瓶からピクルスを取り出して挟んでいる。
小さなキュウリとか玉ねぎとか、無節操に。
「すごくはみ出てるんだけど……」
「はい! 切ればいいけど、面倒だったので」
「そう……」
俺はベネットを真似てみることにした。けど、そのままは挟まない。
キュウリとって少し厚みは残して切っていく。
そして食べると。
「あ、美味い。というより、これだ。ベネット、お前は天才だな……」
「ありがとうです!」
うん。パンにこうしてはさむなら、ピクルスは良いアクセント。味が締まった。
さきまでぼんやりしてたからな。
そしてこれを見ていたローも真似をし始める。リュスレインも。というか、皆だ。
あっ、俺が漬けてたピクルスが消えていく……また、漬けなければ。
**********
今日のメインは、特別だった。
家族の夕食は、私と妻、そして幼い双子で毎日とっている。時折、時間ができればサージェも一緒になのだが、あれには今、他国との折衝を任せているから忙しくてなかなかこれないのだ。
こじんまりとした部屋で家族と給仕のみ。距離が近いのは私がそうしたいからだ。
今日の食事も料理長が腕を振るってくれた。
前菜は豚肉のリエット。時間をかけて火を入れたものだ。それを薄く切り、かりっと焼いたバケットにつけて食べる。
うん、程よい塩気のもので美味しい。
続いて南瓜のスープ。良く冷えて舌触りは滑らかだ。スープは子供たちが好きだから一品、毎日入れてもらっている。
昨日は人参、一昨日はじゃがいも。そろそろトマト系のスープが恋しい。明日はそうして欲しいとリクエストしておこう。
次はクネルか。肉がたくさんあるからそれを使ったのかな? されこれは蒸したのか、ゆでたのか。蒸しているような気がする。
柔らかな感覚はスプーンを入れただけでわかる。けれど断面にハムも見える。それから野菜も入っているのかな?
食めばキノコだろう。ほんのりとそのような味がする。ソースはチーズがメインだろうか。まったりこってりとしていてよくあっている。
「今日も食事も美味しいね」
「ええ。さすが料理長……」
「おいしいです!」
「次も楽しみです」
妻も笑み零し、双子達も次は何かなと楽しげだ。
マナーを身に着けるべく、こうして一緒に食べている。まだ多少の粗相はあるが、それは幼いが故。
大きくなれば自然と気付く事だろう。それに、家族だけなのだからソースが跳ねようが、音を立てようが構わない。
自分でしまった、という顔をして先に謝るのだからわかっているのだ。
家族で今日あった事など、何気ない話をしていると次の日と皿。
旬の魚を焼いたものだが、上にはパン粉がかかっている。しかし、パン粉そのままではなく緑も混じっているので、香草焼きかな? ソースも緑。香りとしては、バジルだろうか。
先程のクネルがこってり目だったからさらっと食べれる魚も良い。そして皿の上、一緒に乗っているのは貝の白ワイン蒸しか。
「貝のワイン蒸しかしら。あなた、思い出しますわね」
「ああ、そうだね」
若い頃、二人で城を抜け出して。
城下町の酒場で食べた覚えがある。そう、あれは兄上からたまには市井に混ざってみるのも面白いとそそのかされたからだ。
あとで本当に行ったのかと笑われたのだけれども。
そんな思い出に笑みを零し合っていると、双子たちが何のお話と首を傾げる。
大きくなったら一緒に行きましょうねと妻が言うので、楽しみにしていると二人ははしゃぐのだ。
そして次に、エビ。私はエビが好物の一つでもある。小さなエビをカラッとあげて頭から食べるのも好きなのだが、こうして大きなエビを食べるのも好きだ。
ソースの色は殻と同じ色。うん、定番だね。定番だけど、とても好きだ。
双子達はエビの頭を切り離すのに少し苦労している。しかしそれもまた経験だ。
マナーは自分で、そうして手を動かし、学ばなければ身につかないのだから。
「お父様、にこにこしてどうされたのですか?」
「ん? にこにこしているかい?」
「はい!」
「それはね……ほら、大きな怪物が、お庭に現れただろう?」
「はい! おおきなの!」
「ゆうしゃがたおしたとききました!」
「そうだよ。勇者がね、そのお肉を分けてくれたんだ。あのお肉はとても美味しいお肉」
「おにく……」
「おにく……」
双子達は声をそろえ、ごくりと息を呑む。
わかる。わかるよ。美味しいお肉だと聞いたらごくりとなる。私もなったのだから。
そして、今日それを調理したのはカイだ。
我が子となりつつ、距離をとる。カイの気持ちも、わからないでもないのだ。
兄上が亡くなり、次の国王はと揉める日々。色々と嫌な思いもしたのだろう。
それを終わらせるために、私の息子となったカイ。サージェと同じように育てて、本当に、我が子のように接していたのだが、やはり彼はあの時すでに、子供であり大人だったのだ。
おそらく、カイの選択は間違っていない。しかし、少し寂しくもあるのだ。
養子だが甥っ子でもある。もう少し、甘えてくれてもと思うのだ。
が、複雑な気持ちもあるのだろうからそっとしている。不仲と言うわけではないのだから。
そう、カイとのことを思っていると皿が運ばれてきた。
「良い香りだ……」
「わぁ! ハンバーグ! ハンバーグかな?」
「ソースがいっぱいかかってる!」
そう、ハンバーグ。
私も、妻も。双子達も好きなハンバーグ。これはカイが初めて私たち皆に作ってくれた料理でもある。
それを妻は覚えているのだろう。私の方をちらりと見て、小さく笑みを零した。
双子達は嬉しいと言いあっていて、まだ気づいてはいない。
ハンバーグにナイフを入れる。ほろりと崩れるように切れた。しかし、その断面はいつもと違う。
このソースがしっかりと滲みこんでいるのだろう。
「ソースをかけただけではないのですね」
どうやったのか聞いている? と妻が侍従に声をかけるとはいと頷く。
そちらは煮込みハンバーグなのですと。
ほほう。ハンバーグを、煮込んだ。
煮込んだ!
ソースの感じからして、カイが作りだしたドミなんとかソースだろうか。シチューのようでもある。
双子達は一口食べて瞳を輝かせている。これは、相当美味しいらしい。
私も急いで口に運ぶ。
「! これは……」
ほろりと。
濃い味と肉の旨みが絡み合うような。美味しい。焼いたままでも美味しいのだろうが、煮込むとまた別の美味しさだ。
それにこのソースからは野菜の旨みも感じる。キノコだろうか、これにあう。あうとしか言えない。
次に、添えてある野菜にも手を伸ばす。これもソースに絡めるのが良いだろう。
人参は丁寧に熱を通してあるのだろう。口にすれば甘みが最初に広がった。それからマッシュポテト。
これはどう考えても、絡めねばなるまい。
ふんふんと頷きながら食べていると、妻がパンを手に取るのが見えた。
おお、なるほど。ソースに絡めると……私もやろう。すると双子達も真似を始めていた。
「なんだか……カイにーさまのご飯を食べてるようです!」
「うん! 僕もそう思う。カイにーさまとサージェにーさまとも一緒にご飯食べたかったね」
「うん……」
双子達は美味しいと言いながらもしょんぼりとしている。
これは、と私と妻は顔を見合わせた。
これはカイが作ったものだよと教えるかどうかは、私次第なのだろう。
しかしこのしょんぼりした姿を見たら、伝えざるをえない。内緒にしておくのはかわいそうでもある。
「二人とも、このハンバーグはね。お肉がいっぱいあるからと、カイが作ってくれたのだよ」
「カイにーさまが!」
「本当に!?」
「ああ」
それなら、お礼をしなければと双子たちは言い始める。
お礼にお手紙を書こう。それにお花を添えるのは私ねと。
その相談をほほえましくみつつ、私は途中でそれくらいにしなさいと止めた。
だって、まだハンバーグは残っている。冷めてしまうだろうと。
食事が終わってから相談しなさいと言うと、お母様も混ぜてねと妻が言う。
それなら私だって混ぜて欲しい。
ありがとうと感謝を伝えよう。その相談をしようと私達の今夜の予定は決まったのだ。
しかし私は、この後何故呼んでくれなかったのかと、サージェに怒られることになる。
呼べば時間を調整して来るのは、わかっていたんだよ?
けれどね。
分けてくれなかったサージェに少しくらい、いじわるしたくもなるじゃないか。
そう言うと、呆れた顔をされてしまったのだった。
【お小言とリクエスト】
・煮込みハンバーグ
・ハンバーガー
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