短編詰め合わせ

ナギ

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あの子がかわいくて仕方ない

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超絶問題ありのどえす王子がにこにことお馬鹿な悪役ぶってる令嬢ちゃんを見守りつつ操りつつ良いようにしつつ愛でている感じの。
相思相愛。



 最近、気になるあの子に冷たくしている。
 そうすると不安そうで、傍に呼んだ令嬢を睨んだりかわいい嫌がらせをしているらしい。
 なんて、俺の思った通りな行動。かわいい。
 俺が構うときゃあきゃあ騒いでやめてとか言うくせに、俺がいないところでは俺の事を独占したいのを丸出しなのだとか。
 ああ、かわいい。
 俺が彼女に冷たくしているのは、政情的なところもあるのだが。それももうすぐ片が付く。
 無事に片付いて、王位が確定すれば彼女を傍らに置いて、愛でて、いじめて、泣かせて、愛でて。
「楽しみだなぁ」
「……気持ち悪い笑顔やめてもらえます?」
「気持ち悪い? どこが!」
 俺のこの恐ろしく調った顔の笑顔が気持ち悪いなんて、まずありえない。
 俺の補佐をしているとある公爵家の嫡男、我が親友殿ははぁとため息をついた。
 どうせ考えているのは彼女をどうこうしようということだろうと。
「彼女もこんな変態に目をつけられてかわいそうに……」
「えー? 彼女も俺のことを好きなんだから、相思相愛で問題ない」
「いやいや……彼女は君の外面しか知らないから……」
 君が彼女を好きなのは知ってるけどね、でもねと親友殿は言う。
「彼女との婚約を破棄して、それから他の男をあてがって、寝とったりとかいう計画は本当に、やめておきなよ?」
「ダメかな」
「ダメに決まってるだろ……寝とってどうする。愛妾にするの?」
「いや、妻に」
「正妃を迎えないといけないだろう。そんな、一度無しにした相手を」
 何言ってるのかな。
 婚約破棄なんてするわけないだろう。
 それはあくまで、彼女にだけ突きつける嘘なのだ。他の男も俺の下僕をあてるから手は出させない。
 幸せと絶望に叩き落として世界に俺だけ、みたいなのを作ってあげたいだけで。
 知らしめてあげたいだけで。
「……そんなのする必要ないと、思うけど……それはお前の性癖だからな……」
「はは、性癖とは。うん、でもまぁ、確かにそうかもしれないけど」
 俺は普通に、愛を囁くだけでは終われない。
 彼女の全部を暴いて、俺の前にさらして。屈服させて、彼女に俺だけだと思わせたい。
 俺だけの彼女であってほしい。彼女にとって俺だけであってほしい。
 はてさて、どうしてこんな歪んだ感情を持つようになってしまったのか。
 それは自覚しているのだが。
 しかし、修正はもうできるほど幼くはない。これが俺だと俺自身が一番、よくわかっている。
 幸せな未来が描けるといいねとおざなりの言葉を吐く親友殿の溜息に、俺は任せろと笑う。





この後展開。

婚約破棄されてショックで家出しちゃった令嬢ちゃんを探して見つけて。
それから本性ばれてドン引きされるけどにがすわけがない。
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