終末学園の生存者

おゆP

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第二章

第24話 幕引き(1)『絵』

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1.
「どうしたのぉ?」
「お客さんが来たみたいだから出迎えてくるわ」
「私はそのまま招き入れても構わないよ?」

 緩慢な声で聞いたのは三つ編みを床に投げ出し、カーキ色のコートに麦わら帽子を被った女性、春日殺希。
 その隣に立つのは、黒と赤を基調にした異彩の和風ドレスを赤い帯で締めた長い黒髪の少女、宇宮湊。
 その二人の前では巨大モニターが似たような光景を流し続けていた。
 少年が同じ顔の少女を無慈悲に斬り殺す、奇妙で異常な光景。
 居間で再放送のドラマでも眺めるように、敷かれた御座に寝転んだままの殺希。
 腕を組んで険しい顔でモニターを睨む湊。
 同じものを見ながら二人は対照的だった。
 その最中、話題に上がる不測の来訪者。警報器関連の作動はなく、明らかな異常事態にもかかわらず、二人に慌てる様子は欠片もない。
 それどころか、来訪者を受け入れ、あまつさえ、娯楽の一環にしてやろうと言う余裕さえあった。

「彼女に今の彼を見せるのは、刺激が強すぎるわ」
「ほうほう、優しさだねぇ。それで本音は?」
「ただの意地悪かしらね?」


 地下十五階に到達した源ホタルは、電子ロックのついた巨大な鉄扉の前で足を止め、思わず息を飲む。
 かつてこの中で受けた訓練の情景が嫌でも蘇り、解錠を躊躇させたのだ。正直な気持ちを吐露すると、この扉を開けたくはなかった。
 しかし、完全防音であるため中で何が行われているのかは、開いて確認しなければならない。
 ホタルは覚悟を決めると、電子ロックを地上入り口と同じ要領で容易く解錠して扉をこじ開け、足を踏み入れる。地上とは解錠方法は異なる上、比べられないほど厳重なセキュリティが施されているのだが、ホタルの力を前にはやはり無力だった。
 扉の奥には最低限の光源しかなく、薄暗い。
 コンクリートに囲まれた無機質な通用口は、首長竜の食道のように奥へと伸びていていた。
 無音で長いだけの通用口は、ホタルの記憶に根付いた忌まわしいあの場所へと繋がっている。
 覚悟を決め、駆け出そうと足に力を込めた。

「ここに何の用かしら?」



 しかし、暗がりからの涼やかな声に、ホタルの足が縫い付けられたように止まる。
 目を凝らしても相手の姿は輪郭でしか確認できない。
 けれどホタルが発する紫電の明かりで暗闇の中に声の主、宇宮湊が浮かび上がる。初めて出会った時の純白の制服とは真逆の黒い和装で、不幸を告げる死神のように立ち塞がった。

「何故、お前がここに……」
「あなたへの優しさって言えば納得して帰ってくれるかしら?」
「冗談を言うな。そんな嘘で私を騙せると思うな!」
「火に油ってことは分かっていたつもりだけれど、そんなに目くじらを立てなくてもいいじゃない?」

 この場所を教えたのが流耶で、阻むのが湊。
 名の違うだけの同一人物の行動としては些か不可解だ。
 そもそも、この場に縁もゆかりもない宇宮湊が現われることを、どうすれば想像できたのか。
 気丈に振る舞いながらも、動揺は隠しきれない。

「これに関しては草川流耶の日頃の行いのせいね。緊急時ほど信頼関係って大事よね?」
「邪魔をするなら切り捨てていくぞ!」

 湊の挑発的な表情に先日の流耶の言葉を思い出し、抜剣を踏み止まり、口先だけで応戦した。

「構わないわ。でも、切れるならの話だけれど」
「な、に?」
「ほら? どうしたの?」
「望みとあらば見せてやろう!」

 湊の挑発に乗って『雷王』を構えたホタルだったが、内心困惑していた。
 効き目のない武器を脅しに使っている情けない自覚はある。
 それでも、切れなかったことは一度もないのだ。
 と、ホタルは違和感を覚える。

(何故、右目を閉じている?)

 答えの見つからない刹那の疑問。
 けれど攻撃は敢行された。結果的に人の形をしたものに『雷王』を向けた事実は覆らないが、癇癪の行動ではなかった。
 幾度となく、数多の流耶を分断した必殺の一撃。全て直撃させつつ、全てが空振りと言って遜色ないホタルの流耶、改め湊への攻撃。
 しかし、完全に直撃する軌道で振り下ろされた『雷王』は湊をすり抜けた。

「今の攻撃を――避けた、のか?」

 目にも止まらぬ速さで振り抜かれた剣先は、虚空に光の軌跡を残すのみ。
 すり抜けたのは見間違いで、湊は『雷王』が直撃する寸前で姿勢を変えてすれすれで躱したのだ。
 無駄のない完璧な見切りに既視感を覚えながら、恐る恐る顔を上げて湊の右目に答えを見た。

「その右目は……」
「素敵でしょ?」

 湊は薄笑みを浮かべながら、その右目を誇示する。

「でも、あなたと遊ぶのは少し骨だわ。先へ行きたいならどうぞ?」
「どういうつもりだ?」
「私の負けでいいということよ。ふふっ、余り使わないから少し見誤ったみたいね」

 湊は少し焦げたドレスの裾をはたきながら、道を明け渡した。
 堂々と負けを認める湊の態度に呆気にとられる余り、ホタルは失念しかかっていた。
 ここに来た理由と目的を。
 腑に落ちない点はいくつもあったが、透哉の捜索が先決だった。

「さっき私があなたへの優しさって言った意味が分かると思うわ。この扉を越えると『プール』と呼ばれている演習場があるわ」
「知っている」
「そうだったわね」
「……中に御波がいるのか?」
「自分の目で確かめてみることね」

 湊は言い残すと薄紫の波紋を残し、消えた。
 ホタルは迷わず駆け出し扉に手をかけ、開いた隙間からホタルは――襲われた。
 そして、視覚ではなく、嗅覚が中の状況を正しく『目撃』した。
 それは寝かせていた記憶を呼び覚ます臭い。急激に蘇った記憶に頭を殴られたような鈍痛が襲い、続けて立ちくらみがする。
 頭を押え、扉の間に体をねじ込み、ホタルの五感が一瞬だけ感覚を失い、悟った。
 もう、何もかもが手遅れだと。
 ふらつきながら数歩。
 絶望と共に更に数歩。
 綿の上でも歩いているみたいにふわふわとした曖昧な足取りで進み、ホタルは立ち尽くした。
 ホタルの目の前に広がるのは、地下の巨大空間。
 地上と見まがうほどに整備された訓練場は地獄だった。
 抱えたトマトを無茶苦茶に投げ散らかしたみたいに、人の形をした残骸が至る所に散乱して、夥しい量の血潮の絨毯を作っている。
 誰の目にも分かる大量惨殺の現場。
 一つ異常を上げるとすれば、いずれも同じ顔をした人物である点。
 無差別な猟奇的殺人だけでは置き換えられない、より深い闇を露呈していた。
 そして、実験場に散乱した亡骸には見覚えがあった。

(これは――っ)

 ホタルは込み上げた悪寒から言葉が出てこなかった。予想以上に表面化していた十二学区の闇に戦慄した。
 こんな裏世界と呼べる場所で扱う代物を、ここの管理者は堂々と白昼で放し飼いにしている。
 それは死体を操って演劇を行うような大胆さ。
 けれど、今は死体となった少女の事情に頓着している場合ではない。
 ホタルは粘つく液体を踏みしめながら、訓練場の深部に踏み込む。

(どこだ、どこにいるんだ、御波っ!)

 悲痛な叫びを身のうちに閉じ込めたまま、ホタルは駆け出した。
 すでに湊に発見されていることもあって潜む意味はないし、ここに透哉がいると告げられている。
 かつて自分も利用していたこともあって、施設内で迷うことはなかった。最も広い通路を走りながら、通りに面する度に左右を確認しながら通過する。
 大小様々な建築物、障害物に人影はいくつも見受けられたが、いずれも事切れた少女の亡骸で、探している透哉の姿はない。

(違う、いない! どこだ、どこにいるんだ!)

 異常なほど静まりかえる施設内にホタルの焦燥の足音だけが響く。
 ホタルはひた走りながらも各所の確認は怠らない。
 建物の影、通路の死角をくまなく探したが見つけられない。
 早急に見つけるには声を大にすればいい。
 しかし、同時にホタルは恐れていた。
 この訓練場の中で御波透哉の声を耳にすることを。
 呼びかけにどんな声で返事をするのかを聞くことが。
 湊に『いる』と明言されながらも、ホタルは透哉の不在を願っていた。
 透哉を探して、助けるためにここまで来たのにいて欲しくなかった。周囲を毒々しく彩る惨状を、全く知らない他人の仕業にしたかった。
 施設内を縦に横断する通路を抜け、反対側の壁に到達する直前。
 結局は自分の早とちりで、勘違いで、杞憂で、焦燥が生み出した幻だったと、切望した。
 なのに――
 御波透哉がいた。
 御波透哉が立っていた。
 御波透哉だけが屍の園の真ん中に立っていた。
 透明な刀を握り、真っ赤に広がった狂った花の真ん中に立っていた。
 目の前の光景が十年前の光景に差し替えられた気がした。
 呆然とするホタルの耳に、ガコンと機械音が入る。
 聞き覚えのある音に、反射的に音源に向かって駆け出す。
 壁に面したゲートから丸腰の一人の少女が現われる。

(まだ続けるつもりなのか!? でも、あれは――!)

 悲痛な嘆きは即座に驚愕に変わる。
 見覚えのある少女の顔と、装備と言える装備を何も施されていない姿に言葉を失う。
 ここはあくまで、武装した部隊との戦闘を目的とした訓練場だ。
 以前とは明らかに違う実施内容だけでも退っ引きならないというのに、次の光景にホタルの喉の奥が干上がった。
 透哉が機械的と言っていい反応で少女の方を向き、手にした刀に力を込めたからだ。敵意なき透明な殺意が、少女を標的とした捉えた。
 干戈かんかを交えたホタルには分かる。あの刀の強さと、恐ろしさが。
 決断は一瞬。
 ホタルは透哉と少女の間に割って入った。少女を守るためではなく、透哉にこれ以上殺させないために。
 しかし、『雷王』は一合も持たず、あっけなく破壊され、明滅する破片となってこぼれ落ち、消滅する。その間際、薄暗い訓練場の中を残光が照らす。
 ホタルは一瞬透哉の顔を見た。
 不思議と恐怖は覚えなかった。
 ただ、胸中に締め上げるような痛みを覚えた。

「止めろ、御波っ!!」
「………」
「み、なみ?」

 ホタルは叫んだ直後とは思えないほど、憔悴した小さい声で零した。
 透哉は茫洋とした表情をしていて、眼前のホタルに全く意識が向いていない。

「――私のようになってはダメだ!」

 ホタルは再び『雷王』を出すことはなく丸腰のまま透哉の手を取り、説得を試みる。

「人を切ることに慣れすぎるな! これは、悪魔の訓練なんだっ!」

 ホタルの説得の甲斐なく、透哉の焦点は庇ったアカリに合っていた。
 透哉は振り払うと言うより、すり抜けるようにホタルの手から逃れると、消失するほどの速さでホタルの横を抜け、アカリに殺到した。
 体内に暴風を受けた、そんな錯覚に陥る。透哉が隣を通過しただけなのに、ホタルはそのとき走馬灯を見た。
 向けられてもいない強烈な殺気に、死を想起させられた。

「透哉、やめ――てっ」

 背後から聞こえた声にホタルは我に返り、耳を疑った。
 アカリは訓練用の部隊とは異なり、完全に相手を、透哉を知覚していた。
 過去に自分が訓練として相対していた物とは根本が異なる。
 慌てて振り返り、見てしまった。
 アカリは戦う意思など微塵も見せず、両手を胸の前で抱き、目を固く閉じたのだ。
 逃げ惑い命乞いするわけではなく、全て受け入れて透哉の良心に懇願したのだ。
 しかし、その願いは透哉に届かなかった。
 悲鳴はなかった。
 生まれたのは複数の水音と崩れた肉が床を叩く音。
 そして、訪れる静寂。
 だだっ広い地下の訓練場に、大きな穴でも開いたように音が消えた。
 その矢先、ホタルの肩がガタガタと震え、歯がカチカチとおもちゃみたいな音を鳴らす。
 この惨状を生み出した直後の透哉が、どんな顔をして自分のそばに立っているのか、想像出来なかったからだ。

「……源? なんでこんなところにいるんだ?」

 対して驚いた様子のない透哉にホタルは「違う、何を、言っているのだ?」と、頭を振って訴える。
 学園の廊下でたまたま出くわしたみたいに、周囲の惨状とはかけ離れた反応を見せたからだ。
 その普通が、狂った普通さが、透明な普通さが、ホタルの心を蝕み、不安と恐怖をかき立てる。
 自分の周りに横たわった亡骸に一切の感情が向いていない。
 背徳感も罪悪感も、欠如していた。
 まるで作業中に訪れた友人を出迎えるように。
 人間を捨てた、倫理観を無くした者にしか出来ない対応。
 知人を斬り殺しながら、恐怖を覚えず、狂気に震えず、平静を保ち続けている。

「止められなかった……」

 ホタルは小声で言うとその場に膝を突いた。

「私は、お前にもう誰も殺して欲しくなかったのだぁあああああああ!」

 ボロボロと大粒の涙を流し、絶叫した。
 力が抜け、その場に崩れ落ち、座り込んだまま慟哭した。



「違うこれは――」

 ホタルの号泣に透哉は意識を正しく取り戻した。
 クローンだと、言いかけて透哉は躊躇した。
 どのみち処分されるから、仕方がなく殺したと、事務的な説明を躊躇した。アカリたちを手にかける決断に至った経緯などホタルは知らない。ホタルにとってたった今見た事実が全てなのだ。
 それが結末だけを切り取った断片的な事実だとしても。
 間違いなくホタルが欲しがっている言葉ではない。
 確かに今日透哉が壊し尽くした『アカリ』は研究所で作られた存在だ。
 醜い保守的な言い訳や弁明はきっと意味がない。
 下手な慰めでホタルの涙を拭うことはかえって傷つけてしまう。
 かける言葉を見つけられず、立ち尽くす透哉。
 そんな折、『ビー』っとブザーが場内に轟く。
 透哉は突然の警戒音に首を傾げる。

「おい、これは何の音だ? なぁ、聞こえてねぇのか?」

 連絡を取ろうと『白檻』に話しかけたが、湊からも殺希からも返事はない。
 逡巡する透哉とは反対に、ホタルが強い反応を示した。
 大音量の警戒音を耳にするや否や、ホタルがヒッと息を詰まらせ泣き止んだ。
 赤く腫らした目のホタルが、涙の跡の残る頬を拭い立ち上がる。
 ボロボロに泣き崩れていたホタルの正気を、瞬時に取り戻すほどこの音には強い緊急性が含まれていることは明白だった。

「――逃げるぞっ!」
「逃げる? ちょっ!」

 言い訳や謝罪の言葉を探していた透哉に、ホタルは強い口調で言って手を伸ばした。
 透哉の狼狽など気にも留めず、ホタルは強引に手を取って、走り出した。
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