嘘やん……

神崎 ルナ

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「……、ん、」


微睡まどろみながら軽く姿勢を変えようとしたあたしの体が引き戻された。


「どこ、行くんですか」


当人も寝ぼけているらしく、たどたどしい発音だというのにあたしを捕らえた腕にはしっかりと力が込められていた。


「どこって、そろそろ食事作らないと」

ベットサイドのチェストに置かれた電波時計の時刻はもうすぐ午前が終わることを示している。


「もう少し……」


「だめだってば。もうすぐお昼じゃない」


休日の朝は大体こんな感じだ。


どこの新婚さんだ、と突っ込まれそうだが、本当にそうなってしまった。



あの後、押し負けて試験期間を置いたものの、ほとんど間を置かず入籍となってしまった。


なぜなら、


「あ、」


反射的に下腹部に手を当てると、


「どうした!!」


物凄い勢いで迫ってきたので、両手で押し留めた。


「大丈夫。ちょっとぴく、ときただけだから」


「そうか」


大きく息をつく旦那様に呆れた視線を送ってしまう。


そうなんですよ、居るんです……赤ちゃん。


分かったときにはこっちが呆然事実だったのに、日を追うごとに過保護になるの、いい加減止めてほしいんですが。




(あ、いいこと思い付いた)


ちょっとした悪戯を思い付いて再び下腹部に手を当てる。


とたんに心配そうな顔になる旦那様に、


「この子がお腹空いた、って」


わざと茶目っ気たっぷりに言ってやると、


「それは大変だ」


(乗ってくれるのはいいけど、その楽し気な顔は何……、ってぎゃあっ!!)


あたしを横抱きにして歩き出す旦那様に、


「待っ、」


「待たない。俺達の子供が腹を空かせているんだろう?」


(そこでウィンクは反則ですっ!!)


脳内で核弾頭クラスの爆発が起こっているあたしに更に、


「食事の前にシャワーかな」


実はあの時シャワーを浴びている隙に逃げられた、というのは旦那様の中ではかなりトラウマになっていたようで、お風呂は必ず一緒に入りたがるのだ。


「え、ちょっ」


「大丈夫。すぐに済ませるから」


(その笑顔、絶対怪しいっ!!)


だけどあたしがその顔に弱いと知っているのだろう。


(くっ、この知能犯め)



咎めないあたしも大分毒されてきたと思う。



「どうした?」


「何でもない」






本当に嘘みたいな話。




(だけど……嫌じゃない)



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