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41.トレニア国王位継承者

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ライン曰く、その後見人とやらは、カイン様を後で傀儡の王にでもするつもりだったらしく、彼らにとって都合のよい教育しか施していなかったようだ。


(いや、これ、どないすんねん)


だから再教育、という形でラインが預かる(ちなみにその時点で、レキシコン王の地位がゆるがないよう、いろいろやってきたらしい)ことになったのだそう。


(マジですか)

ラインって人が良いなあ、と思っていると、


「何を考えてるのか、大体想像つくけどそんなんじゃないからね」

「はいはい。分かってます」

「はい、は一回」


するとあたし達の様子を見ていたらしいカイン様が、


「本当に夫婦じゃないのか?」



「「違うっ!!」」



(何で被るんやねん)




その後、渋るカサンドラ嬢も帰らせて、セクトルさんはカサンドラの『せめて貴方くらいは賢者様のお役に立つのですよ』という命令で残ることになったのだけど。


『いいんですか?』


こっそりセクトルさんに聞くと、

『私の雇い主はフローズン公爵様ですが、お嬢様の言は自分の言と思え、と言われております』


落ち着いた様子で話すセクトルさんは何かを達観しているようにも見えた。


(凄いなあ)


その時のあたしは単純に感心していたのだけど。




ダンジョンは街の大きな収入源。


入場料はもちろん、魔物の部位や魔石、まれに採れる鉱石等、金目のものは幾らでもある。



『これは正式な依頼だ。今回、四十層にいるはずのゴルゴンが二十三層にいたことといい、近道ショートカットの扉が壊されていたことといい、裏で何者かが手を引いてるに違いねぇ。すまねえが引き受けちゃくれねえか?』


オリジンさんにそう言われてあたし達は現在、二十三層を探索中だった。


パーティメンバーは、ライン、カイン様、セクトルさんにあたしの四人。


当初ラインはカイン様とあたしを同行させるつもりはなかったらしい。


けれど、


『あたし、魔法だって使えるし、足手まといになるつもりはないから』


加えてカイン様も、


『俺も行くぞ。大体、どうしたいのかは自分で判断しろ、って言ったのはラインじゃないか』


ラインが珍しく言葉に詰まった様子を見せた。

するとそれを見たオリジンさんが、


『はははっ、あのラインが子供に言い負かされるとはなあ』


こいつも丸くなったもんだ。


と何やら意味深な顔をされたけど、何でこっち見るのかな?





――ピシ、ピシ、ミシ。


歩く度にラインが凍らせたハチュウ類の死骸が非常にいい音を立てるんですが。


(前回よりはずっとマシだけど、ううっ、うっかり踏んだときの感触がぁっ!!)


声が出そうになるのを必死に堪えていると、前を歩いていたカイン様が振り返った。


「怖いのか? これが」


「違いますっ!!」


焦るあたしに、ふーんと返したカイン様がしゃがみ込もうとした時、ラインの厳しい声が飛んだ。


「触らないで下さい。死骸とはいえ魔物ですから」


「分かった」


(助かったーっ!!)


非常に残念そうなその口調から、『アレ』の死骸であたしをからかうつもりだったのには間違いない。



(これだから子供は……)




「この辺かな?」


先頭を行くラインの合図で止まり、手に持った明かりを強める。


ダンジョンへ潜る際、ラインに言われたことを思い返す。


『いいかい? ダンジョンの魔物はそう簡単に自分達のテリトリーを離れないんだ。もし、例の階層でまたゴルゴンが湧いたら、最下層で異常が起きていることになるね』


待つことしばらくして。


「来ましたね」


通路の先を見据えていたセクトルさんが小声で告げた。


ラインがあたしの方を振り返る。


「さて、それじゃあ、リベンジといこうか、愛弟子さん?」


あたしは魔導具マジック・バッグを漁りながら、



(だから、その笑みは反則だってばっ!!)

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