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40.ダンジョン(リベンジ)
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数日後――。
「うわあああっ!! ウィンドカッ――むぐっ」
現在、再びのダンジョンです。
ハチュウ類さんの大群に思わず風魔法をぶつけようとしたあたしを制したのは、言わずとしれたラインで。
「こんな狭いところではやらないでね」
とあたしの口を手で塞いだまま、呪文を放つ。
「アイス・アロー」
とたんに小さな氷の矢が無数に放たれ、瞬く間にハチュウ類さんの大群が物言わぬ躯と成り果てた。
「あれは温度変化に弱いだろう。学校で習わなかったのかい?」
冷気が漂う中、諭すように言われ、
「……忘れました」
(そう言われればそんな気もするけど、反射的に怖気がしてそこまで出てこない、って!!)
何かそう言うとカマトトぶってるとか言われそうだから、言わないけど。
(**歳にもなって、とか思われそうだし。あ、そこまでは教えてなかったっけ)
そんなことを考えていると、
「やっぱり女の子だなあ。リリーは」
少し低い位置からからかうような声がした。
そこにいたのは、
「カイン様。からかうのは止めて下さい」
流れるような銀髪と、紅茶色の瞳をした十歳前後と思われる少年だった。
話は少し遡る。
あれから、レキシコン王は冷ややかなラインに連れられて、王宮まで強制送還させられ(オリジンさんは迎えに来たジェシカさんとギルドへ戻りました)、その翌日、戻って来たと思ったら少年を連れていたのだ。
「お帰りなさい。ライン。その子は」
「ただいま。その、」
「まさか、……隠し子?」
「違うっ!! って分かってて人をからかうのはよしなさい」
「すみませんでした。師匠」
全くもう、と深いため息をついたラインの説明によると、この子は新しいトレニア国王候補らしい。
「はあっ!?」
そんな筋書きはなかったはず。
(どういうことっ!?)
先のハルト王の遺児だというカイン様は、例の水晶へ触れ、見事にその身分を証明したのだという。
「取り敢えず怪しげな後見人はいろいろと吐かせた後、近衛隊長のラディンに引き渡してきたら、大丈夫だと思うよ」
やりすぎていないといいけどね。
(ひええっ!!)
そう言えばいたっけ。レキシコン王がち勢。
とガクブルしていると、
「お前がラインハルトの妻か。よろしく頼む」
ぞんざいな口調で言われ、思わず、
「「違うっ!!」」
(あ、声被った)
「何だ。違うのか、よし伽を許そう」
「――は?」
思わず低い声が出たあたしの傍らからラインが腕を伸ばし、ぱちん、とその銀の頭を叩いた。
「いてっ!!」
「これは教育のしがいがありそうですね」
(ライン、目が笑ってないんですけど)
「うわあああっ!! ウィンドカッ――むぐっ」
現在、再びのダンジョンです。
ハチュウ類さんの大群に思わず風魔法をぶつけようとしたあたしを制したのは、言わずとしれたラインで。
「こんな狭いところではやらないでね」
とあたしの口を手で塞いだまま、呪文を放つ。
「アイス・アロー」
とたんに小さな氷の矢が無数に放たれ、瞬く間にハチュウ類さんの大群が物言わぬ躯と成り果てた。
「あれは温度変化に弱いだろう。学校で習わなかったのかい?」
冷気が漂う中、諭すように言われ、
「……忘れました」
(そう言われればそんな気もするけど、反射的に怖気がしてそこまで出てこない、って!!)
何かそう言うとカマトトぶってるとか言われそうだから、言わないけど。
(**歳にもなって、とか思われそうだし。あ、そこまでは教えてなかったっけ)
そんなことを考えていると、
「やっぱり女の子だなあ。リリーは」
少し低い位置からからかうような声がした。
そこにいたのは、
「カイン様。からかうのは止めて下さい」
流れるような銀髪と、紅茶色の瞳をした十歳前後と思われる少年だった。
話は少し遡る。
あれから、レキシコン王は冷ややかなラインに連れられて、王宮まで強制送還させられ(オリジンさんは迎えに来たジェシカさんとギルドへ戻りました)、その翌日、戻って来たと思ったら少年を連れていたのだ。
「お帰りなさい。ライン。その子は」
「ただいま。その、」
「まさか、……隠し子?」
「違うっ!! って分かってて人をからかうのはよしなさい」
「すみませんでした。師匠」
全くもう、と深いため息をついたラインの説明によると、この子は新しいトレニア国王候補らしい。
「はあっ!?」
そんな筋書きはなかったはず。
(どういうことっ!?)
先のハルト王の遺児だというカイン様は、例の水晶へ触れ、見事にその身分を証明したのだという。
「取り敢えず怪しげな後見人はいろいろと吐かせた後、近衛隊長のラディンに引き渡してきたら、大丈夫だと思うよ」
やりすぎていないといいけどね。
(ひええっ!!)
そう言えばいたっけ。レキシコン王がち勢。
とガクブルしていると、
「お前がラインハルトの妻か。よろしく頼む」
ぞんざいな口調で言われ、思わず、
「「違うっ!!」」
(あ、声被った)
「何だ。違うのか、よし伽を許そう」
「――は?」
思わず低い声が出たあたしの傍らからラインが腕を伸ばし、ぱちん、とその銀の頭を叩いた。
「いてっ!!」
「これは教育のしがいがありそうですね」
(ライン、目が笑ってないんですけど)
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