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12.お空、きれい。

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「お空、きれい」


ども、追放されたヒロインです。


あれから男爵家はおとり潰しは逃れたものの、国境付近の僻地へ領地替えとなり、あたしとの養子縁組は解消された。



主だった貴族達が改めて召集され、他にも処罰された人がいたけれど、あたしみたいに国外追放となった人はいない。



「こんなの、理不尽ですわっ!!」


カタリナ嬢があちこちへ陳情してくれたようだけれど、裁定は覆らず。


(まあここまでになってしまった心当たりはあると言えばあるんだけどね)


ほら、カタリナ嬢に苛められたって件。


あれって、きちんと調べればあたしの自作自演だ、っていうのはすぐに分かっちゃうことなんだし。


多分、王様達はその辺りのことを鑑みて、こうしたんだと思う。


今になって事態に気付いたあたしがいかにも改心したように振る舞ってる、って。


(ちゃうねん。ほんとに反省してるんや)

叫ぼうにも目の前に広がるのは街道と葉を落とした木々が広がる森だけで。



(どうしてもう少し早く記憶、戻らなかったかなあ)



ため息をぐっと堪え、頭の中に地図を思い浮かべる。





    (西)         (東)



   フリント王国      サウス帝国




         魔の森



        トレニア国




         (南)




(この街道を東へ行けばサウス帝国に着けるけど)


正直、気は進まない。


脳裏にリンツ皇子のどや顔(でもイケメン)が浮かんだ。


(うーん、何かリンツ皇子って腹黒のイメージがあるんだよね)


何でだろ。


まあ王宮内の魑魅魍魎ちみもうりょうを相手にしてるんじゃ仕方ないか。


(権力って一度使うと忘れられないみたいだし)


イタリアのボルジア家だっけ。


一度嫁がせても、都合が悪くなるとこれは『白い結婚』だから、と無理くり別れさせて、次の政略結婚、ってどんだけっ!?



(女は道具じゃないっ!?)


ってこんなことしてる場合じゃなかった。

サウス帝国(東にあるのにサウスとはこれいかに)を外すと――。


(……トレニア国?)


ちなみに北は急峻な峰が連なる山脈が広がっていて、あたしでは無理。



(ってことは――)



視線を向けた先には鬱蒼とした森が広がっていた。




ぱっと見には普通の森に見えるんだけど、ここ出るんだよね。



(魔物が出る、ってファンタジーの常道だよね)


そう言えばあたしって魔法使えたんだよね。


何か記憶が戻ってからの展開が展開だったから、すっかり忘れていたけど。


(ステータスってのもあったんだっけ。……試してみますか)


「ステータスオープン」


すると目の前に文字が連なった板が現れた。



(うわぁ。ほんとに出ちゃったよ)


少し引きながら覗き込むとそこには――。






リリアンヌ・(仮)マルティン男爵令嬢


種族  人間 


レベル 15


体力  48/55


魔力  37/40


水魔法  レベル7


風魔法  レベル6



神の贈物ギフト  【魅了】





「はあっ!?」


思わずヘンな声出た。


(何これっ!? 魅了、って!? まさかこれまでのって――)


脳裏にひたすら話を聞いてくれなかったアルフォート殿下達の顔が浮かぶ。


(もしかして王様サイドは知ってたのかな)


それにしても――。


「……神よ」


誰もない街道にあたしの慎ましやか(?)な声が広がった。




「やり直しを要求するーっ!!」



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