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「我のものに手を出そうとしたのはお前か」
気が付いたときには体へ掛かっていた重みがなくなっていた。
「……やはり生きていましたか。しぶといですね」
何故かかなり離れたところから退魔師の声が聞こえた。
(何が……)
衝撃音がしたのは覚えている。
だが状況を把握する間もなく俺は抱き上げられた。
「やっと言ったな」
ご機嫌な我が主の顔が迫ってきて、俺は仰け反りかけたが出来なかった。
「不満か?」
明らかに不興を買ってしまったようだが、今の体の状態にこれはよくない。
「降ろし……」
「よくここが分かったものだな」
「退魔師を甘くみないでほしいですね。伝手はあるんですよ。あんたこそ、よくあの毒から生き延びたものですね」
ほっとしたとたん、再び体がおかしくなってきた俺としては降ろしてほしかったのだが、何やら始まってしまった。
(え、毒って)
「あの程度是非もない、と言えればいいのだがな。復活するのに手間が掛かったぞ」
「よかった。じゃないとミレイ達の犠牲が無駄になる」
(え?)
その瞬間退魔師が何か仕掛けようとしたらしい。
だがそれが何なのか俺は見ることができなかった。
「捕まっていろ」
そう告げると我が主が一気に跳躍したのだ。
「卑怯なっ!!」
「決闘と称して毒を用いる輩に言われたくはないなっ!!」
木々の梢を蹴りながらそう返し、俺を抱いたまま跳躍を繰り返す我が主はやはり人ではない。
だけど。
「どこか痛むか」
追手を巻いての休息中、心配そうに聞かれ俺は首を振った。
(俺は貴方を……)
「待っ……」
どうやら我が主はあちこちに隠れ家を用意しているらしい。
そのうちの一つに落ち着いたところで俺は寝室へ運ばれ、そのまま……。
(それはヤバいっ!!)
今俺の体は『飢え』でとんでもないことになっていた。
(とにかく止めて貰わないと)
我が主の顔を見た俺は動きを止めた。
(え……)
そこにあるのは激しい渇望。
「なん、」
「ようやく封印が解けたか」
(どういうことだ!?)
「お前は幼少のころから心の奥の感情が分かるのだったな」
俺の体を宥めるように抱きながら、
「だがそれでは人の世では生きていけぬ。故に我の名を鍵に封じておいたのだが」
まさかここまで待たされるとは思わなかったぞ。
(それってもしかして記憶が)
「いつから」
我が主はどこか楽し気に、
「始めは分からなかったな。何せあの復活は不完全だったしな。だがそれでも自分の手掛けた封印位は見分けがつくぞ」
なかなか我が名を呼ばぬのには参ったがな。
肌蹴られた上着の間から手が入り、次々と熱を広げていく。
「待っ、……ダメ、」
それだけで息が上がるが何とか言葉を捻りだすと不服げな青い瞳があった。
「なぜだ?」
俺は腰を浮かせて寝台の奥へ体を運ぼうとしながら、
「無理で」
言い掛けたところで捕まってしまった。
「何が無理なんだ?」
その間にも体を探る手は止むことなく、俺はあっという間に達してしまった。
(嫌だ……)
何とか息を整えようとしていると、
「これで何が無理なのだ」
不思議そうに言われ、既に露にされていた脚の付け根の方へ手が伸びる。
一度達してしまったため、余計力が入らない。
「あ……」
身体が反応し、声が漏れる。
(こんな、みっともないとこ)
見られたくないのに、と敷布を掴んでいるとその拳を解かれ、上から指の間に一本ずつ指を嵌められた。
「嫌がっているようには見えないが」
耳元で言われ、それだけでまた達してしまいそうになる。
「だめ……今みっとも、な……」
見ないで、と囁くように続けた時だ。
「何を言うかと思えば」
呆れたような言葉と共に一気に貫かれ、俺はそれだけで達してしまった。
(嘘……)
信じられない、というように青い瞳が見開かれる。
(嫌われた)
「や、だ」
伝い落ちる涙をそのままにしていると、
「痛かったか?」
「違っ、嫌われたくなくてっ」
「……どういう意味だ?」
「だっ、こんなっ、俺の体おかしっ」
いつもはここまでにはならない。
「……見ないで」
気が付いたときには体へ掛かっていた重みがなくなっていた。
「……やはり生きていましたか。しぶといですね」
何故かかなり離れたところから退魔師の声が聞こえた。
(何が……)
衝撃音がしたのは覚えている。
だが状況を把握する間もなく俺は抱き上げられた。
「やっと言ったな」
ご機嫌な我が主の顔が迫ってきて、俺は仰け反りかけたが出来なかった。
「不満か?」
明らかに不興を買ってしまったようだが、今の体の状態にこれはよくない。
「降ろし……」
「よくここが分かったものだな」
「退魔師を甘くみないでほしいですね。伝手はあるんですよ。あんたこそ、よくあの毒から生き延びたものですね」
ほっとしたとたん、再び体がおかしくなってきた俺としては降ろしてほしかったのだが、何やら始まってしまった。
(え、毒って)
「あの程度是非もない、と言えればいいのだがな。復活するのに手間が掛かったぞ」
「よかった。じゃないとミレイ達の犠牲が無駄になる」
(え?)
その瞬間退魔師が何か仕掛けようとしたらしい。
だがそれが何なのか俺は見ることができなかった。
「捕まっていろ」
そう告げると我が主が一気に跳躍したのだ。
「卑怯なっ!!」
「決闘と称して毒を用いる輩に言われたくはないなっ!!」
木々の梢を蹴りながらそう返し、俺を抱いたまま跳躍を繰り返す我が主はやはり人ではない。
だけど。
「どこか痛むか」
追手を巻いての休息中、心配そうに聞かれ俺は首を振った。
(俺は貴方を……)
「待っ……」
どうやら我が主はあちこちに隠れ家を用意しているらしい。
そのうちの一つに落ち着いたところで俺は寝室へ運ばれ、そのまま……。
(それはヤバいっ!!)
今俺の体は『飢え』でとんでもないことになっていた。
(とにかく止めて貰わないと)
我が主の顔を見た俺は動きを止めた。
(え……)
そこにあるのは激しい渇望。
「なん、」
「ようやく封印が解けたか」
(どういうことだ!?)
「お前は幼少のころから心の奥の感情が分かるのだったな」
俺の体を宥めるように抱きながら、
「だがそれでは人の世では生きていけぬ。故に我の名を鍵に封じておいたのだが」
まさかここまで待たされるとは思わなかったぞ。
(それってもしかして記憶が)
「いつから」
我が主はどこか楽し気に、
「始めは分からなかったな。何せあの復活は不完全だったしな。だがそれでも自分の手掛けた封印位は見分けがつくぞ」
なかなか我が名を呼ばぬのには参ったがな。
肌蹴られた上着の間から手が入り、次々と熱を広げていく。
「待っ、……ダメ、」
それだけで息が上がるが何とか言葉を捻りだすと不服げな青い瞳があった。
「なぜだ?」
俺は腰を浮かせて寝台の奥へ体を運ぼうとしながら、
「無理で」
言い掛けたところで捕まってしまった。
「何が無理なんだ?」
その間にも体を探る手は止むことなく、俺はあっという間に達してしまった。
(嫌だ……)
何とか息を整えようとしていると、
「これで何が無理なのだ」
不思議そうに言われ、既に露にされていた脚の付け根の方へ手が伸びる。
一度達してしまったため、余計力が入らない。
「あ……」
身体が反応し、声が漏れる。
(こんな、みっともないとこ)
見られたくないのに、と敷布を掴んでいるとその拳を解かれ、上から指の間に一本ずつ指を嵌められた。
「嫌がっているようには見えないが」
耳元で言われ、それだけでまた達してしまいそうになる。
「だめ……今みっとも、な……」
見ないで、と囁くように続けた時だ。
「何を言うかと思えば」
呆れたような言葉と共に一気に貫かれ、俺はそれだけで達してしまった。
(嘘……)
信じられない、というように青い瞳が見開かれる。
(嫌われた)
「や、だ」
伝い落ちる涙をそのままにしていると、
「痛かったか?」
「違っ、嫌われたくなくてっ」
「……どういう意味だ?」
「だっ、こんなっ、俺の体おかしっ」
いつもはここまでにはならない。
「……見ないで」
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