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「ここがエラの部屋なの?」


 裁判所から寮に来た私は、部屋の中を見渡した。はじめて入るエラの部屋は、寮だと思えないぐらい豪華な部屋だった。

 入り口に続くドアだけじゃなくて、他に二つのドアがある。

 寮というより、まるでホテルみたいね。


「少し広すぎるわよね」

「少し……?」


 少しというよりかなり広いような……。

 広い部屋にベッドにソファ、机。必要最低限の高級品だと分かる調度品が置かれた部屋は、物が少なくて少し寂しく見える。
 
 驚く私にエラは申し訳なさそうに聞いてくる。


「ベッドは一台しかないけど……どうする?」

「えっ?」


 ベッドが一つ……。
 一人部屋の寮にベッドが一台。当たり前のことだ。問題はどう寝るか、ということーー。

 二人で寝ても十分に広いベッドを見て、ある提案をした。


ーーー


 エラと私は、二人で大きなベッドで横になって寝ている。

 部屋の灯りは消され、カーテンの隙間からわずかに漏れる月明かりが、部屋の中を照らしている。

 日中に起こった出来事のせいで、張り詰めていた精神が緊張感を持ったままで、眠れないでいた。


 エラはもう寝てしまったかしら?

 身体を動かして、エラが寝る方へと身体を向け、エラの名前を呼ぶ。


「エラ……」


 寝ているのを起こしてしまったら申し訳なくて、小さな声でエラを呼ぶ。

 すると、エラは起きていたのか、私の方に身体を向けた。


「どうしたの?」

「眠れなくて……」


 私がそう言うと、エラは恥ずかしそうに布団から顔を覗かせている。


 中々見ることのない、エラの恥ずかしがる姿を不思議に思っていると。


「実は私も……。友達とこんな風に……、同じベッドで寝るのははじめてで眠れなかったの……」


 そう言って布団に顔を隠すエラに、さっきまでの緊張感がどこかに消えた。

 何よそれ!反則だわ!!


 エラの可愛い姿に一人悶えていると、「マリベル……?」今度はエラが私を不思議そうに見ていた。


 エラの可愛い姿に悶えた後、エラと私はベッドに向かい合って寝転びながら、話しをしていた。


「マリベルはどうするつもりなの?」 

「どうするって?」

「今回の件が片付いた後のことよ」

「色々と疲れてしまったから、研究に集中しようと思う……」


 自分では操作出来ない男女関係のゴタゴタは、もう十分だというぐらい経験した。

 もう恋なんてしたくない……。私には恋愛なんて無理だ、と今回のことで思ってしまった。


「ジルベルト先輩はどうなのよ?」

「ジルベルト様は先輩であり、先生だもの。どうもないわ。……確かに一緒にいてドキドキはするけど、ジルベルト様の優しさに慣れないの……」

「優しさ、ねぇ……」


 私の言葉に、エラは納得いかなそうに見ている。

 その視線に耐えれなくて、エラに聞いたことのないことを聞く。


「エラの方こそ、クリス先輩はどうなのよ」


 エラと私は、今まで恋愛の話をしたことがない。婚約者との仲が良くない私に、気を遣って恋愛の話をしないと思っていたけど、今は自由の身だ。


 私が見るに、クリス先輩はエラのことを幼馴染以上に見てると思うのよね。


「クリスとはそんなんじゃないわ……。クリスは私の幼馴染で、家族みたいな存在で、私の犠牲者だから……」

「犠牲者……?」


 犠牲者ってどういう意味?

 エラは悲しそうに笑って言葉を続けた。


「私がクリスを道連れにしたようなものだから……。クリスは騎士家系出身なの」


 クリス先輩が騎士家系出身だなんて初耳だ。
 確かに、体格はいいけど、騎士家系の人が留学してまで、錬金術の研究をするなんて、聞いたことがなくて驚いてしまう。


「そうなの?そんな人がどうして留学までしに来たの?」

「どうしてかしら?私には分からないわ。本人に聞いたら『騎士より勇者になりたい』と言ってはいたけど」

「ゆうしゃ??」


 クリス先輩が勇者になりたいと言ってる姿が想像出来なくて、思わず声が裏返ってしまった。


 勇者ってどういうこと?錬金術師が勇者になる??


 理解出来なくて混乱していると、エラは話を終わらせた。


「もうこの話は終わりにしましょう。それより、二人はどこに消えたのかしらね……」

「分からないわ……。すぐに見つかってくれるといいんだけど」

「保安官達がすぐに見つけてくれるわ……」


 この言葉通り。エミリー様とステファンが姿を消した数日後。二人は一緒にいるところを発見された。

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