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7.sideアレックス①

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 屋敷の中が慌ただしく騒がしい。

 クソっ!どうしたらいいんだ!!
 父上も母上も小言を言うばかりで、どうしたらいいかなんて言わずに俺を責めるだけだ。 
 
 マチルダの父上であるロヴネル侯爵から、父上宛てに婚約破棄の手紙が届くと俺は両親に呼び出され、ことの経緯を聞かれた。

「ロヴネル家と縁談を結べれば多額の支援を期待できたのに。婚約者の義妹に手を出して慰謝料を請求されていないのが不思議なほどだ。今後、慰謝料を請求されたらどうするつもりだ」
「どうしてなの?何も言わずに好きなことをさせてきたのに、こんなことをするなんて……」

 俺を怒りと諦めが混じった表情で見る父上。
 泣き崩れる母上。


 俺を捨てるなんて許さない。

「マチルダ様はどうしてアレックス様と婚約されているのかしら?」
「ジョルジュ家は今はあれですけれど、名家なのには変わりないもの。家格的には釣り合いは取れているわ。問題なのは……アレックス様個人ね」

 俺とマチルダの婚約を不思議があり、馬鹿にしたように笑う者達。

 完璧なマチルダと名ばかりの家柄の俺。

 マチルダが俺を選んでくれたという喜びが、劣等感に変わったのはいつだっただろうか?

「アレックス様は素敵ですわ」
「そうか?」
「はい。だから、私を選んでくださいな」

 婚約者がいるにも関わらず言い寄ってくる女。
 マチルダがいるのに他の女で遊ぶのに最初は抵抗があった。

 だけど、一度経験してしまえばそれ以降は何も感じない。繰り返すのは簡単だった。

 愛を囁き合って温もりを交換する。

 隠れるように秘密の遊戯を楽しんでいたある日。

 マチルダ――。

 目が合ったのに逸らされた視線。
 自分の婚約者の浮気を見たにも関わらず、怒りや悲しみさえ感じない冷たい視線。

 後日届いたのは、何の感情もこもってない事務的な婚約者として行為を嗜める手紙だけ。

 ハッ

 乾いた笑いが漏れ、手紙を机に投げ捨てる。

 最初はマチルダに隠そうとしていた行為も、一度見つかってしまえばもう隠す必要もない。

「アレックス様。お義姉様の婚約者だと分かっているのに、抱いてはいけない思いを他抱いてしまった私をお許しください」

 自分の義妹と婚約者が浮気をしていると知ったら、マチルダはどんな反応をするだろうか?

 いつものように見過ごす?それとも、自分を愛してくれと懇願してくるだろうか?

 それなのに……。
 マチルダからの手紙ではなく、ロヴネル侯爵から父上へと手紙が届いただけ。

 花束を渡して告白までしたのに、俺へのマチルダからの言葉は何もない。

 俺との関係を手紙一つで終わらしておいて、マチルダは新しい婚約者を探すためにお見合いまでしている。

 そんなことが許されていいのか?
 いいや!許されていいはずかない!!

 俺を捨てるなんて許さない。
 
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