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6.お見合い

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「レディーマチルダ。何をされているのですか?」
「雨季に備えて堤防の強化をした方がいいか、予算はどれぐらい振り当てたらいいか考えています」

 困惑した様子の婚約者候補の声に、手元の資料から視線を外すことなく答える。

 なるべく早く工事を完了した方が、領民も安心するだろうから早く決めた方が良さそうね。

 出来れば領地の視察もしたいのだけれど、時間はあるかしら?まだ学生だから自由に使える時間が少ないのよね。

「そう……ですか。できれば俺に集中してくれると嬉しいのですが」
「あなたに?どうして?」
「あなたと俺達の今後について、詳しく話したい」

 婚約者候補の言葉にはじめて視線を上げると、彼はそんな私を満足気な笑顔で見ている。
 
 私は顎に手を添えて、彼の言葉に考えるような仕草をした。

 私達の今後について、か……。
 
 ここは我がロヴネル家の庭園にある東屋だ。

 私は連日、婚約者候補達とのお見合いに駆り出されている。本当はお見合いなんてしたくないのだけれど、お父様が屋敷にいる間は、お父様の視線があるから仕方なく大人しくお見合いをしてはいるけれど……。

 本当は、お見合いも婚約もしたくない。
 そんな私ができることは、お見合いをして相手に諦めてもらうだけ。
 
「では、あなたはどう思いますか?」
「俺はあなたの家業について口出しするつもりはありません。その代わり、我が家門に少しの融資をしてくだされば――」

 あぁ、この人もロヴネル家のお金が目的なのね。
 私は言葉は違えど、同じ内容を話す婚約者候補達にうんざりしていた。

 みんな口を開けば、お金のことばかり。ロヴネル家のことを金のなる木だと勘違いしているらしい。

 お父様は家柄と身分には申し分ない婚約者候補達だと行っていたけれど……。

 私が冷たい目で見ているとも知らず、彼は長々と融資計画について話している。

「融資の金額は――」
「話は分かりました」
「分かってくれましたか!では……!」
「あなたに聞きたいことがあります」

 私の言葉に前のめりに話す彼の言葉を遮る。
 
「何なりとお聞きください」

 自信に溢れた態度で胸を張って言う彼に、私はある質問をした。

「お嬢様。これで何人目ですか?」
「さぁ?何人目かしら?」

 庭園から出ていく婚約者候補の項垂れた背中を見て言うと、執事は呆れた様子で言った。
 
「五人目です。真面目にしてくださらないと旦那様が怒られますよ」
「大丈夫よ。現に、お父様は何も言ってこないでしょう?」

 むしろ、ずっと笑顔を絶やさないでいた私を褒めて欲しいくらいだわ。

 それに、ロヴネル家の婿養子になるんだから、領地の質問に答えれないなんて問題だわ。
 
「そうですが……。あの方が最後の婚約者候補だったのですよ?五人の中で良い方はいらっしゃいましたか?」
「誰もダメね。みんなロヴネル家のお金にしか興味がないんだもの。誰も私には興味がないのよ」
「マチルダお嬢様……」

 綺麗に手入れされた庭園の花を見て言う私の言葉に、執事は心配そうな顔をしている。

 そんな執事に私は明るい声で言った。

「どこかに私のすることに口出しをしない、優しくて、長男じゃない、浮気をしない方はいないかしら?」

 ふざけたように言う私の言葉に、執事は呆れたように溜め息を吐いた。
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