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快進撃
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俺は心の声を読んだことはスルーして、朝食を食べた。周囲の人(なぜか女性だけ)からの羨望の眼差しを全身に浴びながら。視線は痛いほど突き刺さる。めちゃくちゃ食いにくい。
俺が誰かの食べかけのパンを食べると、その度に、口をつけた女性が顔を赤らめる。
っていうかそんなに間接キスが恥ずかしいなら、普通にパンをくれれば良かったのに。
その時だった――
「ん? あれ?」
俺はあることに気づいた。この国に入ってから薄々思っていたけど、たった今確信に変わった。
「アリシア。お前なんか昨日より胸がデカくなってないか?」
なろうの国に入る前までは、もっとすっきりしていた。なのに、この国に入った瞬間に少し胸の膨らみが大きくなっていた。最初は気のせいだと思っていたけど、たった今確信した。
この国では、日を追うごとに、回を追うごとに胸がデカくなるのだ(女性限定)。
「当然でしょ! ここはなろうの国よ。っていうかそんなにじろじろ見られると恥ずかしいんだけど」
と言いつつ、全然胸を隠さないアリシア。見ろってか? 見ろってことか?
「ん? アルも、ウレンも、みんな胸がデカくなっている! どうなってんだ、この国? なんで胸がデカくなるんだよ?」
「それはなろうの国では、巨乳の女性しか存在できないからなんだからねっ!」
「どういうこと? なろう系小説の中だと巨乳しか許されないってこと?」
「そうなんだからねっ!」
マジかっ! そんな世界があったなんて知らなかった。俺の心は熱くたぎった。
俺は食いかけパンを食い終わると、
「パンだけじゃ足りないな……」
ご飯と卵をもらってきた。そして、卵を割って卵かけご飯にした。
「お兄ちゃん。それなんていう料理?」
と、興味津々のもえ。
「ん? ああこれ。これは卵かけご飯って言ってね、卵をかけたご飯なんだ」
俺は説明してあげた。
「すっごおおおおおおい! お兄ちゃんは天才なんだからねっ!」
「そ、そうか。そんなに褒められると悪い気はしないな」
「一口もらってもいい?」
「ああ」
もえは俺の箸を使って、一口食べた(もちろん間接キス)。
「おいっしいいいいいい! お兄ちゃんすごおおい!」
「そ、そうか?」
と言いつつ、ヨイショされてちょっと嬉しい。
「私にも何か教えて!」
目を輝かせてアリシア。
「なら、アリシアにはこれだ」
俺はアリシアにご飯をよそってあげた。
「これなんていうの?」
「これはねふりかけご飯っていうんだよ。ご飯の上にふりかけをかけるんだ!」
俺はバカっぽい説明をした。でも、しょうがないよな。こういうしかない。
「すっごおおおおい! それにおいしいいい!」
なんか俺のこと小馬鹿にしてないか? と、思いつつも、
「うんうん。たくさん食べてね」
「私にも! 私にも何かくれ!」
と、アル。
「はい! どうぞ!」
「これはなんていうんだ?」
「それはコーラっていう飲み物なんだ。どこでも売っているおいしい飲み物だよ」
「うまい! うまいぞ! これ!」
そりゃそうだろ。っていうかこいつらコーラもふりかけご飯も知っているだろ。
周りサゲ主人公アゲってやつか?
「「「ケンってすごく博識なのね! すっごいわ!」」」
でも女の子に寄ってたかってもみくちゃに褒めちぎられるのは、悪くない気分だ。
「ケン! あなた天才よ! 天才で秀才よ! いや、あなたは賢者よ! いやむしろ、あなたはアークウィザードよ! いやむしろむしろ、あなたはアカシックレコーダーよ!」
なげーよ。っていうかそれなら最初からアカシックレコーダーって言ってよ。
っていうかアカシックレコーダーって何? お前の方が頭いいんじゃね?
俺は皆の衆に向かって、
「苦しゅうない。苦しゅうないぞ! だけど、俺の快進撃ももうそろそろ終わりだ。もう全部褒めてもらった。もう充分だ」
その時だった――
「ちょーっと待ったー!」
ホテルレストランの店主っぽい人(当然美女)が出てきた。
「私こんなおいしい料理を食べたのは初めてです!」
美人コックは卵かけご飯を食べながら、両目に涙を浮かべている。
(なんでこの人、勤務中に俺の作ったご飯食ってんだよ……)
次々と頬を切る涙は、テーブルの上に小さな湖を生み出した。卵かけご飯を食いながら、こんなに号泣している人を見たのは初めてだ。なんかシュールだ。
「卵かけご飯がですか? そんなんで喜んでくれて嬉しいです」
「この料理をぜひこの国の伝統料理にさせてください!」
「え? いや、いいけど、ただ卵をご飯にかけただけですよ?」
「この国にはこんなおいしい食べ物などありませんでした」
(大丈夫か? この国)
「ぜひこの卵かけご飯のアイデア料を支払わせてください!」
「え? お金くれるの? いくら?」
「999999999999999999999(99垓)マニーでいかがでしょうか?」
「何そのぶっとんだ金額? それだと大陸中の国が買えちゃいますよ……どうせ冗談でしょ?」
美人コックは真顔になった。
「いやだって、言っちゃ悪いけどこの店に、そんな大金あるように見えないんですけど……」
美人コックは真顔のまま、瞬きもせずに俺の顔を見る。
「いやいやいや、ここがなろうの世界だからって流石にそれはないでしょう……(笑) 俺の快進撃もこの辺でおしまいですよ?」
美人コックは真顔のまま、かじりつくように俺の目を見る。つーかなんでなんも言わないんだ?
「え……? マジでくれんの?」
そして、そこから俺の快進撃は続いた。
俺が誰かの食べかけのパンを食べると、その度に、口をつけた女性が顔を赤らめる。
っていうかそんなに間接キスが恥ずかしいなら、普通にパンをくれれば良かったのに。
その時だった――
「ん? あれ?」
俺はあることに気づいた。この国に入ってから薄々思っていたけど、たった今確信に変わった。
「アリシア。お前なんか昨日より胸がデカくなってないか?」
なろうの国に入る前までは、もっとすっきりしていた。なのに、この国に入った瞬間に少し胸の膨らみが大きくなっていた。最初は気のせいだと思っていたけど、たった今確信した。
この国では、日を追うごとに、回を追うごとに胸がデカくなるのだ(女性限定)。
「当然でしょ! ここはなろうの国よ。っていうかそんなにじろじろ見られると恥ずかしいんだけど」
と言いつつ、全然胸を隠さないアリシア。見ろってか? 見ろってことか?
「ん? アルも、ウレンも、みんな胸がデカくなっている! どうなってんだ、この国? なんで胸がデカくなるんだよ?」
「それはなろうの国では、巨乳の女性しか存在できないからなんだからねっ!」
「どういうこと? なろう系小説の中だと巨乳しか許されないってこと?」
「そうなんだからねっ!」
マジかっ! そんな世界があったなんて知らなかった。俺の心は熱くたぎった。
俺は食いかけパンを食い終わると、
「パンだけじゃ足りないな……」
ご飯と卵をもらってきた。そして、卵を割って卵かけご飯にした。
「お兄ちゃん。それなんていう料理?」
と、興味津々のもえ。
「ん? ああこれ。これは卵かけご飯って言ってね、卵をかけたご飯なんだ」
俺は説明してあげた。
「すっごおおおおおおい! お兄ちゃんは天才なんだからねっ!」
「そ、そうか。そんなに褒められると悪い気はしないな」
「一口もらってもいい?」
「ああ」
もえは俺の箸を使って、一口食べた(もちろん間接キス)。
「おいっしいいいいいい! お兄ちゃんすごおおい!」
「そ、そうか?」
と言いつつ、ヨイショされてちょっと嬉しい。
「私にも何か教えて!」
目を輝かせてアリシア。
「なら、アリシアにはこれだ」
俺はアリシアにご飯をよそってあげた。
「これなんていうの?」
「これはねふりかけご飯っていうんだよ。ご飯の上にふりかけをかけるんだ!」
俺はバカっぽい説明をした。でも、しょうがないよな。こういうしかない。
「すっごおおおおい! それにおいしいいい!」
なんか俺のこと小馬鹿にしてないか? と、思いつつも、
「うんうん。たくさん食べてね」
「私にも! 私にも何かくれ!」
と、アル。
「はい! どうぞ!」
「これはなんていうんだ?」
「それはコーラっていう飲み物なんだ。どこでも売っているおいしい飲み物だよ」
「うまい! うまいぞ! これ!」
そりゃそうだろ。っていうかこいつらコーラもふりかけご飯も知っているだろ。
周りサゲ主人公アゲってやつか?
「「「ケンってすごく博識なのね! すっごいわ!」」」
でも女の子に寄ってたかってもみくちゃに褒めちぎられるのは、悪くない気分だ。
「ケン! あなた天才よ! 天才で秀才よ! いや、あなたは賢者よ! いやむしろ、あなたはアークウィザードよ! いやむしろむしろ、あなたはアカシックレコーダーよ!」
なげーよ。っていうかそれなら最初からアカシックレコーダーって言ってよ。
っていうかアカシックレコーダーって何? お前の方が頭いいんじゃね?
俺は皆の衆に向かって、
「苦しゅうない。苦しゅうないぞ! だけど、俺の快進撃ももうそろそろ終わりだ。もう全部褒めてもらった。もう充分だ」
その時だった――
「ちょーっと待ったー!」
ホテルレストランの店主っぽい人(当然美女)が出てきた。
「私こんなおいしい料理を食べたのは初めてです!」
美人コックは卵かけご飯を食べながら、両目に涙を浮かべている。
(なんでこの人、勤務中に俺の作ったご飯食ってんだよ……)
次々と頬を切る涙は、テーブルの上に小さな湖を生み出した。卵かけご飯を食いながら、こんなに号泣している人を見たのは初めてだ。なんかシュールだ。
「卵かけご飯がですか? そんなんで喜んでくれて嬉しいです」
「この料理をぜひこの国の伝統料理にさせてください!」
「え? いや、いいけど、ただ卵をご飯にかけただけですよ?」
「この国にはこんなおいしい食べ物などありませんでした」
(大丈夫か? この国)
「ぜひこの卵かけご飯のアイデア料を支払わせてください!」
「え? お金くれるの? いくら?」
「999999999999999999999(99垓)マニーでいかがでしょうか?」
「何そのぶっとんだ金額? それだと大陸中の国が買えちゃいますよ……どうせ冗談でしょ?」
美人コックは真顔になった。
「いやだって、言っちゃ悪いけどこの店に、そんな大金あるように見えないんですけど……」
美人コックは真顔のまま、瞬きもせずに俺の顔を見る。
「いやいやいや、ここがなろうの世界だからって流石にそれはないでしょう……(笑) 俺の快進撃もこの辺でおしまいですよ?」
美人コックは真顔のまま、かじりつくように俺の目を見る。つーかなんでなんも言わないんだ?
「え……? マジでくれんの?」
そして、そこから俺の快進撃は続いた。
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