111 / 260
国境
しおりを挟む
竜の世界の領土は、“赤地の布に金竜の国章”がついた旗が取り囲んでいる。
黒い森の中をぐるーっと地平線の彼方まで、同じ旗が囲っている。森の中からは敵意にも似た気配がする。きっと竜たちが俺のことを待ち構えているのだろう。
その雰囲気は、“俺の心のロウソク”に緊張感の火をつけた。
「ここから、い」
俺が言い切る前に、
「ここから一歩踏み入れたら竜の世界の領土だ! みんな! 気を引き締めていこう!」
と、アル。
「そうだな。りゅ、」
俺が言い切る前に、
「竜は凶暴な種族らしいわ! 決して油断しないようにしましょう!」
と、アリシア。
「わかった。りゅうお、」
俺が言い切る前に、
「竜王との交渉は、ケンに任せて下がっていていいわ! ウレンたちは安全なところでのんびりお茶でもすすっていてくれ!」、「それがいいわ! 私の可愛い娘ウレンケル・ブラック!」
と、指人形をぴょこぴょこさせながらウレン。ってか、なんでこいつら俺に喋らせてくれないんだ? ウレンに至っては、完全に俺の台詞奪っているよね。
「じゃ! ケン! 竜の世界に一番最初に入って、罠がないか確かめてちょうだい!」
と、アリシア。
俺は、『なんで俺?』と思いつつ、竜の世界の国境に立った。
俺は竜の世界をもう一度両目で見た。一見すると、ただの黒い森にしか見えない。
ざわめく木の葉の群れの塊。巨大な黒影が眼前に広がっている。
空に突き刺さる巨木は、幹がかさぶたのように剥がれかかっている。きっと、樹齢一千年の木だ(多分)。
この先に竜たちが待っている。もしかしたら木陰から竜はこちらを伺っていて、領土に踏み入れた途端に襲いかかってくるかもしれない。鋭い鉤爪と、剣のような牙で、引き裂こうとしてくるかもしれない。
一握りの不安が、肋骨の間からこぼれた。黒いガスのようになった不安感は、骨の間から滲み出てくる。
俺は、その霧を頭から振り払った。
俺は目をつぶり大きく深呼吸をした。新鮮な森の空気が肺を洗った。肺胞全てに行き渡る酸素は、みずみずしくて清々しい。まるで、酸素が肺を通して俺に語りかけているみたいだ。
俺は、二酸化炭素を一気に口腔から吐き出した。空気がせせらぎのように流れ出る。
森に溶ける俺の吐息は、すぐに熱を奪われて消えていった。俺の口から出た気体が森の一部になったと考えると感慨深くもある。
黒い森の中をぐるーっと地平線の彼方まで、同じ旗が囲っている。森の中からは敵意にも似た気配がする。きっと竜たちが俺のことを待ち構えているのだろう。
その雰囲気は、“俺の心のロウソク”に緊張感の火をつけた。
「ここから、い」
俺が言い切る前に、
「ここから一歩踏み入れたら竜の世界の領土だ! みんな! 気を引き締めていこう!」
と、アル。
「そうだな。りゅ、」
俺が言い切る前に、
「竜は凶暴な種族らしいわ! 決して油断しないようにしましょう!」
と、アリシア。
「わかった。りゅうお、」
俺が言い切る前に、
「竜王との交渉は、ケンに任せて下がっていていいわ! ウレンたちは安全なところでのんびりお茶でもすすっていてくれ!」、「それがいいわ! 私の可愛い娘ウレンケル・ブラック!」
と、指人形をぴょこぴょこさせながらウレン。ってか、なんでこいつら俺に喋らせてくれないんだ? ウレンに至っては、完全に俺の台詞奪っているよね。
「じゃ! ケン! 竜の世界に一番最初に入って、罠がないか確かめてちょうだい!」
と、アリシア。
俺は、『なんで俺?』と思いつつ、竜の世界の国境に立った。
俺は竜の世界をもう一度両目で見た。一見すると、ただの黒い森にしか見えない。
ざわめく木の葉の群れの塊。巨大な黒影が眼前に広がっている。
空に突き刺さる巨木は、幹がかさぶたのように剥がれかかっている。きっと、樹齢一千年の木だ(多分)。
この先に竜たちが待っている。もしかしたら木陰から竜はこちらを伺っていて、領土に踏み入れた途端に襲いかかってくるかもしれない。鋭い鉤爪と、剣のような牙で、引き裂こうとしてくるかもしれない。
一握りの不安が、肋骨の間からこぼれた。黒いガスのようになった不安感は、骨の間から滲み出てくる。
俺は、その霧を頭から振り払った。
俺は目をつぶり大きく深呼吸をした。新鮮な森の空気が肺を洗った。肺胞全てに行き渡る酸素は、みずみずしくて清々しい。まるで、酸素が肺を通して俺に語りかけているみたいだ。
俺は、二酸化炭素を一気に口腔から吐き出した。空気がせせらぎのように流れ出る。
森に溶ける俺の吐息は、すぐに熱を奪われて消えていった。俺の口から出た気体が森の一部になったと考えると感慨深くもある。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【R18】異世界転生したら投獄されたけど美少女を絶頂テイムしてハーレム作って無双!最強勇者に!国に戻れとかもう遅いこのまま俺は魔王になる!
金国佐門
ファンタジー
憧れのマドンナを守るために車にひかれて死んだ主人公天原翔は異世界召喚に巻き添こまれて転生した。
神っぽいサムシングはお詫びとして好きなスキルをくれると言う。
未使用のまま終わってしまった愚息で無双できるよう不死身でエロスな能力を得た翔だが。
「なんと破廉恥な!」
鑑定の結果、クソの役にも立たない上に女性に害が出かねないと王の命令により幽閉されてしまった。
だが幽閉先に何も知らずに男勝りのお転婆ボクっ娘女騎士がやってきて……。
魅力Sランク性的魅了Sクラス性技Sクラスによる攻めで哀れ連続アクメに堕ちる女騎士。
性行為時スキル奪取の能力で騎士のスキルを手に入れた翔は壁を破壊して空へと去っていくのだった。
そして様々な美少女を喰らい(性的な意味で)勇者となった翔の元に王から「戻ってきて力を貸してくれと」懇願の手紙が。
今更言われてももう遅い。知らんがな!
このままもらった領土広げてって――。
「俺、魔王になりまーす」
喰えば喰うほどに強くなる!(性的な意味で) 強くなりたくば喰らえッッ!! *:性的な意味で。
美少女達を連続絶頂テイムしてレベルアップ!
どんどん強くなっていく主人公! 無双! 最強!
どんどん増えていく美少女ヒロインたち。 エロス! アダルト!
R18なシーンあり!
男のロマンと売れ筋爆盛りでお贈りするノンストレスご都合主義ライトファンタジー英雄譚!
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる