この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜

帰り道の夕焼け

［ハイデルキアへの帰り道にて］

夕暮れが世界を優しく彩る。遠くではカラスが鳴いている。絵に描いたような平凡な日常だ。その中を三人分の影がゆらゆらと揺れている。

「初めての外国、楽しかったわね」
ゴリラの貝柱をかじりながら、アリシアが言った。

「そうかー？  俺、殺されかけたんだけど！」

「そんなこと言わないの！　この空気読め男！　またみんなで遊びに行くんでしょ！」
「次もダイヤモンドリキッドをケンに使わせて、私たちは安全圏からおこぼれに預かろう」
「おい！　はっきり言いやがったな！　あのインチキ商品はもう二度と飲まねー！　なんでゴリラの対価が腎臓とか肝臓なんだよ。割りに合わねーよ」

俺は赤ちゃんが真犯人だと言うことは黙っておいた。言っても無駄だし、別に構わないだろう。

夕暮れの海の中で俺はもう一度だけ誓った。
「絶対に俺が助けてやる」
あの不幸な赤ん坊を助けられるのは俺だけだ。もう二度とあの子を辛い目に遭わせるもんか。

「ん？　何か言ったか？」
「いや、なんでもない！　隙あり！」
俺はアルがかじっていたゴリラをひったくって口の中に放り込んだ。喉をゴリラの破片が勢いよく落ちていった。うん！　美味い！
「あ！　この！　返せ！」

そして、俺たちはハイデルキアに戻った。