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諦めるな!

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「ルーレットストップ」
俺はボソリと呟いた。俺の運命は、俺が決める。

「もう何をやっても無駄じゃ! 諦めろっ!」
俺は希望ではちきれそうになった瞳でまっすぐおじさんを捉える。俺の瞳に、恐怖も苦痛も痛みも何もない。あるのはただただ光る勇気の塊。

『ピロリロリロリロ』
諦めない勇気だけが、希望を孕んで光よりも激しく光る。

『リロリロ、リロリロ』
俺は、アルトリウスのことを思い出した。金なんかよりももっとずっと大切な俺の友達。お前のためならこの命も平気で投げ出せるような気までしてくる。そんな彼女が俺のことを庇ってくれた。俺がここで逃げたら、彼女は確実に殺されてしまう。

『リロ、リロ、リロ、リ、ロ』
俺はアリシアのことを思い出した。ずっと一緒にいてくれた俺の友達。助け助けられ、ここまでやってきた。俺たちの絆は永遠だ。そんな彼女も俺のことを庇ってくれた。地べたで血を垂れ流しながら弱い俺が勝つのことを本気で信じている。

「俺は、絶対に諦めない」

『ピロリロリロリロピピピピピ! ピーン! 攻撃力大』

出目は攻撃力大だった。これが最初で最後のチャンス。ここで俺が勝たないと、百パーセント負ける。もう次のチャンスなどない。失敗は許されない。

鼓動が高ぶる。呼吸が荒ぶる。皮膚が沸騰する。神経がちぎれる。心が鳴いている。だけど、剣を持つ右手だけは不思議と落ち着いていた。

俺はおじさんに向かって走り出した。右足と左足を交互に前に進める。もう怖くない。

「何っ? 攻撃力大を引き当てるじゃと! だが、それならワシは防御力大でガードする。ルーレットストップじゃ!」

俺は石畳を蹴って進む。足からは感覚が消えていた。冷たい感覚だけが太ももを這いずっている。どうやって足を動かしているのか自分でもわからない。だけど、前に進んでいける。

おじさんの出目は、当然防御力大だった。

「次の攻撃を防いで、ワシの勝ちじゃ! あの世で『運が悪かった』と後悔しろっ!」

先ほど、俺の攻撃力大とおじさんの防御力大がぶつかり合った時、俺の攻撃ではおじさんにダメージを与えることができなかった。
つまり、次の攻撃では俺はおじさんになんらダメージを与えることができないということになる。


「いい加減に諦めるのじゃっ!」

そして俺は、下からカチ上げるように攻撃した。地面すれすれを泳ぐようにして、走り、大きく振りかぶった攻撃は掬い上げるようにしておじさんを襲う。
ガキーン! 金属がぶつかり合う快音が響く。
「こんな攻撃なんのダメージもないわい」
当然ニコニコおじさんはそれを防ぎ、上空へ弾かれた。おじさんに一切のダメージはない。
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