上 下
573 / 832

49.初めてのお子様ランチ(8)

しおりを挟む
「ねぇお兄ちゃん」

「ん、何だい?」

「お兄ちゃんも子供の頃、お子様ランチを食べたことがあるの?」

「そうだなぁ。確かミオより小さかった時に、このお店や、繁華街の方にあるファミレスでも食べさせてもらった記憶はあるかな」

「ふーん。でも、ボクより小さい時って幼稚園とかでしょ。あんなにたくさんおかずが乗ってて、お腹いっぱいで食べ切れない時とかは無かったの?」

「どうだったかなぁ。当時の記憶がおぼろげだからハッキリ思い出せないけど、食べ残しはしなかったような気がするよ」

「そうなんだ。ボクとは正反対だねー」

 そう話す、少食でスレンダーなミオの体重は、およそ三十二キロ。これは、全国平均である四十キロを大きく下回るので、児童養護施設で行われた身体測定では、「ちょっと痩せすぎ」だと言われたんだそうな。

 でも、ショートパンツを愛用するミオの臀部や太ももは、そんなにほっそりとしているようには見えないんだよなぁ。施設にいた時の、遠足の山登りで鍛えられたからだろうか。

 俺としては、抱っこやおんぶをしやすいから今の方がいいんだけど、とにかく、自分でもお子様ランチを食べ尽くせるのか否かを気にしている、食の細いミオに安心感を与えてあげよう。

「ところが、だ。ここのお子様ランチは、小さな子供たちでも残さず食べてもらえるような、お店側の配慮で分量を調整してあるんだよ。だから、たぶんミオでも全部食べられるんじゃないかな」

「そう? メニューの写真を見たら、ご飯がいっぱい乗ってたけど、お兄ちゃんがそう言ってくれるなら安心だねー」

 ミオは浮気に関する話以外、基本的に俺が披露する経験談や雑学などには一切の疑惑を持たず、全面的に信頼してくれる。

 かように純真無垢じゅんしんむくなミオと話し合ったり、甘えられたりしていると、常々、警戒感を持たない子猫のようだと思う。

 四年前、児童養護施設で商談がまとまったことで、喜びに満ち溢れていた俺を見て興味を示し、トコトコ歩いてやってきたミオは、まさに子猫そのものだった。

 そんな子猫ちゃんとの、あの運命の出逢いが無かったら、俺は未だに、奥手で臆病な性格が災いして、ほろ苦い失恋を繰り返していた事だろう。

 十七歳もの年の差はあるけれど、俺がミオを愛する気持ちに偽りはない。この子が里子で、そして何より彼女でいてくれるからこそ、俺は何かが変われたような気がするんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
2021 宝島社 この文庫がすごい大賞 優秀作品🎊 24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

あなたたちのことなんて知らない

gacchi
恋愛
母親と旅をしていたニナは精霊の愛し子だということが知られ、精霊教会に捕まってしまった。母親を人質にされ、この国にとどまることを国王に強要される。仕方なく侯爵家の養女ニネットとなったが、精霊の愛し子だとは知らない義母と義妹、そして婚約者の第三王子カミーユには愛人の子だと思われて嫌われていた。だが、ニネットに虐げられたと嘘をついた義妹のおかげで婚約は解消される。それでも精霊の愛し子を利用したい国王はニネットに新しい婚約者候補を用意した。そこで出会ったのは、ニネットの本当の姿が見える公爵令息ルシアンだった。

レベルアップがない異世界で転生特典のレベルアップしたら魔王として追われケモ耳娘たちとひっそりスローライフ。けど国を興すか悩み中

まみ夜
ファンタジー
トラックから猫を助けて死んだ俺は、『白い部屋の管理者』に、「このままだと『命』が世界を蝕むので、異世界転生して『命』を消費してもらう」と転生させられた。 転生特典として、魔物を殺すと魔素を奪いレベルアップするチート能力をもらい、レベルアップのないリアル世界で無双する予定が、レベルアップで得た身体能力の異常さから、この世界にはいないはずの『魔王』と呼ばれて手配されてしまう。 レベルアップの副作用か誤動作か、二人のケモ耳娘を子育てしながら、住む場所を開拓しつつ、のんびりスローライフ満喫のはずが、『魔王』として、異世界は許してくれなかった。 【読んで騙されたにならないために】 ・転生した異世界は、魔物はいますが、レベルアップ、魔法、冒険者ギルドなどはなく、よくあるゲームっぽい世界観ではありません(それを転生特典のレベルアップとその副作用?で、どう切り開いていくか、という展開です) ・エルフや獣人族などは滅亡していて基本いるのは、「人」か「(野生動物もすべて)魔物」です(なのに、ケモ耳の娘たちができます) テーマ:「どんなことをしても、この異世界でできた家族たちと、ほのぼの生きてやる」 【連載中】は、短時間で読めるように短い文節ごとでの公開になります。 その後、誤字脱字修正や辻褄合わせが行われて、合成された1話分にタイトルをつけ再公開されます。 物語の細部は連載時と変わることが多いので、二度読むのが通です。 表紙イラストは、lllust ACより、さんかく。様の作品を使用させていただいております。 「中身は男子高校生が全寮制女子魔法学園初等部に入学した」エンディングD

旦那様、愛人を作ってもいいですか?

ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。 「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」 これ、旦那様から、初夜での言葉です。 んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと? ’18/10/21…おまけ小話追加

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ
ファンタジー
【異世界に召喚されましたが、間違いだったようです】 ノベルアッププラス小説大賞一次選考通過作品です ※自筆挿絵要注意⭐ 表紙はhake様に頂いたファンアートです (Twitter)https://mobile.twitter.com/hake_choco 異世界召喚などというファンタジーな経験しました。 でも、間違いだったようです。 それならさっさと帰してくれればいいのに、聖女じゃないから神殿に置いておけないって放り出されました。 誘拐同然に呼びつけておいてなんて言いぐさなの!? あまりのひどい仕打ち! 私はどうしたらいいの……!?

前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。

夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。 陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。 「お父様!助けてください! 私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません! お父様ッ!!!!!」 ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。 ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。 しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…? 娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)

天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん
BL
享年59歳、ハッピーエンドで人生の幕を閉じた大樹は、生前の善行から神様の幹部候補に選ばれたがそれを断りあの世に行く事を望んだ。 しかし自分の人生を変えてくれた「アルバード英雄記」がこれから起こる未来を綴った予言書であった事を知り、その本の主人公である呪われた英雄<レオンハルト>を助けたいと望むも、運命を変えることはできないときっぱり告げられてしまう。 しかしそれでも自分なりのハッピーエンドを目指すと誓い転生ーーーしかし平凡の代名詞である大樹が転生したのは平凡な平民ではなく・・? 少年マンガとBLの半々の作品が読みたくてコツコツ書いていたら物凄い量になってしまったため投稿してみることにしました。 (後に)美形の英雄 ✕ (中身おじいちゃん)平凡、攻ヤンデレ注意です。 文章を書くことに関して素人ですので、変な言い回しや文章はソッと目を滑らして頂けると幸いです。 また歴史的な知識や出てくる施設などの設定も作者の無知ゆえの全てファンタジーのものだと思って下さい。

処理中です...