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46.花火で遊ぼう!(19)

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 香ばしいバタークッキーや、ミオの大好きな魚で握った寿司の盛り合わせ、お袋が厳選した糖度の高いスイカ、そして親父が買ってきた大容量の花火セット。

 我が子が久しぶりに長めの滞在するという事に加えて、ミオというかわいいショタっ娘の孫が遊びに来るものだから、親父とお袋のもてなしにも相当熱が入ったらしい。

 こうやって、精一杯の歓待をしてくれるからというわけではなくて、両親に元気な顔を見せに行くのが孝行に繋がるという意味で、実家に帰省するのは大切な事なんだろうな。

 今度の年末年始は、一体どれだけの休みをもらえるのかは分からないけれど、また二人で実家へ帰って、揃って元気な姿を見せに来るとしよう。

「ところで義弘。あの花火セットの中には〝ヘビ花火〟は入ってたのか?」

「え? あったかなぁ。ねずみ花火とロケット花火は先にけておいたけど、まだ全部を把握してないから分からないな」

「んん? ヘビ花火ってなぁに?」

 親父と俺の間で、全く耳にした事のない花火の名前が出てきたため、ミオが興味深そうな様子で、その素性を尋ねてきた。

「うーん、どう説明すればいいのかな。まぁ平たく言うと、火が点いたら、にょろーんと伸びる花火なんだよ」

「花火が伸びるの?」

「うん。と」

 二回も言っておいて何だが、もうちょっとマシな擬音は思いつかなかったものかね。

 たぶんミオとしては、花火が伸びる仕組みを知りたいんだと思うのだが、いかんせん地味な部類で、とても花形とは呼べない代物だから、俺も親父も詳しくはないんだよな。

「もうデザートをしまった後だからお話するけど、今どきのヘビ花火は、別の名前で売られる事もあるらしいわよ」

 ヘビ花火の謎について、満足のいく回答ができない俺に助け舟を出したのは、意外な事に、柚月ゆづき家で最も花火に疎そうなお袋だった。

「えー? ヘビ花火には他の名前があったんだ。お祖母ちゃん、どんなお名前なの?」

「ちょっと言いにくいんだけど。猫の……ね」

「猫? 母ちゃん、猫が何だって?」

「あえて言い換えるけど、つまり〝猫の落とし物〟よ。ミオちゃんはともかく、ヘビ花火を遊んだ事のある、お父さんと義弘なら想像がつくでしょうから、あなたたちで教えてあげてね」

「あ。ああ、なるほど。最近はそういう名称で売っているとこもあるんだね」

「んにゅ? ヘビがいつの間にか、猫ちゃんのお話になってる……」

 俺と親父は、火の点いたヘビ花火が伸びていく様子を幾度となく見ているから、お袋が言った事の意味が分かったものの、ミオだけは相変わらずキョトンとしていた。
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