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45.一家団欒(11)

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 仮に、俺やミオがお袋と同じ事を言っても、きっと親父は気を遣い、何とかして風呂の時間を短縮しようとしただろう。

 そんな親父だからこそ、疲れを癒やすという意味でも、湯舟にはじっくり浸かって欲しいと思うのである。

 ちなみにこれは余談だが、お袋が風呂に入る時間は、いつも俺ら男性陣が寝静まった夜中と決まっている。

 その理由は、風呂上がりは薄着になるため「むやみやたらに肌の露出を見せないようにしている」とのこと。実に慎ましい。

 お袋は、無意識でナチュラルに露出度が高いミオとは、考え方が対極的なんだよな。まぁ、だからと言って、ミオに「もっと露出を減らしなさい」なんて迫るつもりもないが。

「ここだけの話って事もないけどさ、俺もミオも、先に風呂に先に入らせてもらったんだ。だから親父も、汗を流して風呂に浸かって、リラックスしてきなよ」

「そうか。なら、先にひとっ風呂浴びてくるよ。ミオくん、もう少しだけ待っててな」

「は……うん! 皆で待ってるねー」

 元気溢れるミオの返事を聞き、思わず顔がほころんだ親父は、お袋に商売道具を預かってもらい、そのまま浴室に続く部屋へと歩いて行った。

「さ。わたしたちも戻りましょ。ミオちゃん、お腹が空いたら、ちょっとだけつまみ食いしてもいいわよ」

「えー? そんなの悪いよぉ」

「はは。ミオは真面目な子だから、泥……あっと間違い。ズルはしないんだって」

 ついうっかり、「泥棒猫」というフレーズが口をついて出そうになったが、すんでの所で踏み留まり、何とか訂正できた。

 魚をくわえて逃げる猫は猫で、明日を生きるために必死なんだもんな。ただ、シチュエーションが圧倒的に悪かっただけで。

「ねぇ義弘。お父さんがお風呂から上がるまで時間あるんだし、今のうちにお写真ちょうだいよ」

「ああ、ミオの寝顔か。でもこういうのは、ご本人に許可を頂戴しないとね」

「まぁ。今更白々しい事言うのね、この子は」

「ん? お兄ちゃん、ボクが寝てる時の写真も撮ったの?」

 目をパチクリさせながら尋ねてくるミオは、自分の寝顔を撮られた事に関して、ほんとに何も知らないようだ。

「ごめん。ミオがかわいいから、いろんな場面の写真を撮りたくなっちゃって、つい……」

「謝らなくてもいいよー。お兄ちゃんになら、いっぱい撮って欲しいから!」

 そう言って、俺の腕に抱きついてきた子猫ちゃんの懐の深さたるや、さながらマリアナ海溝のごとし。
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