263 / 832
33.夜のデートはイカ尽くし(5)
しおりを挟む
でもなぁ、この間調べたレシピによると、イカ飯に詰める米にはすでに味が付いているわけだろ。
天ぷらやバター炒めみたいなおかずを食べるなら、やっぱり白飯が欲しいよな。
なんて、ここであれこれ考えていても仕方がないか。腹も減ってきた事だし、チャッチャと店に入って、お品書きを見せてもらおう。
「いらっしゃいませ。二名様ですか?」
防音のための二重ドアを開けて店舗内に入ると、頭にバンダナを巻き、青い和風の制服を着た男の店員さんが声をかけてきた。
「はい。あのー、十九時に予約をしていた柚月ですけど」
「柚月様ですね、承っております。それでは、お席までご案内いたします」
応対の丁寧な店員さんについて行きながら店内を見回してみると、内装に使われている木材が黒く塗装されていて、全体的に落ち着いた雰囲気が演出されているように感じる。
「おっきなお店だねー」
「そうだなぁ。中は広いし天井も高い。開放感があるよな」
「うんうん。ボク、こういう場所だーい好き」
そうか、ミオはこういう広い空間が好みなんだ。じゃあひとまず、第一印象は好感触って事かな。
この間ネットで調べたグルメサイトじゃあ、お店で出されるメニューだけがフォーカスされていたので、店構えや内装、衛生状態などは、実際に行ってみないと分からなかったのだ。
だからここに来るまで若干の不安はあったんだが、ミオが気に入ってくれたようでホッとした。
烏賊貴族はアルコールを提供しているお店ではあるが、ざっと見た感じ、お客さんは比較的家族連れの方が多いため、さほど騒がしくはない。
どちらかと言うと、ここは居酒屋ではなく、ファミレスのような感覚で運営されているのかも知れないな。
店員さんに案内されるがまま、店舗の奥まで通されると、そこでは、間仕切りされた四人用テーブルの座敷が俺たちを待っていた。
そのテーブルの上には〝予約席〟と書かれたサインプレートが置いてある。
そんなに混まない店だと分かっていたら、ここまでして席を取る事も無かったかな。
いやいや、それは結果論だろう。
ひょっとしたら、今日がたまたま空いていただけかも知れないし、あえて予約を取ったからこそ、俺たちはこんないい席に座らせてもらえたんだ。
窓からのぞく、海を挟んだ向こう側の夜景はとても綺麗だし、ここからなら店内の中心にある、大きな生簀もよく見える。
あとは、おいしいイカ料理が食べられれば文句無しだね。
「ご注文がお決まりになりましたら、そちらの呼び出しボタンを押してくださいませ」
テーブルの端っこには、メニュー立ての隣に、丸形でベルが描かれた呼び出しボタンが設置されていた。
このボタンを押せば、店内の電光掲示板に、呼び出しをしている席の番号が表示されるシステムになっていて、それを見た店員は注文を伺いにやって来る。
呼び出した席の番号は左から順番に並んでいくため、仮にこの店が混み合っていても、まずどの客への応対を先にするべきなのかが一目で分かるようになっているわけだ。
そういうところは、まぁ一般的なファミレスと同じだよな。
天ぷらやバター炒めみたいなおかずを食べるなら、やっぱり白飯が欲しいよな。
なんて、ここであれこれ考えていても仕方がないか。腹も減ってきた事だし、チャッチャと店に入って、お品書きを見せてもらおう。
「いらっしゃいませ。二名様ですか?」
防音のための二重ドアを開けて店舗内に入ると、頭にバンダナを巻き、青い和風の制服を着た男の店員さんが声をかけてきた。
「はい。あのー、十九時に予約をしていた柚月ですけど」
「柚月様ですね、承っております。それでは、お席までご案内いたします」
応対の丁寧な店員さんについて行きながら店内を見回してみると、内装に使われている木材が黒く塗装されていて、全体的に落ち着いた雰囲気が演出されているように感じる。
「おっきなお店だねー」
「そうだなぁ。中は広いし天井も高い。開放感があるよな」
「うんうん。ボク、こういう場所だーい好き」
そうか、ミオはこういう広い空間が好みなんだ。じゃあひとまず、第一印象は好感触って事かな。
この間ネットで調べたグルメサイトじゃあ、お店で出されるメニューだけがフォーカスされていたので、店構えや内装、衛生状態などは、実際に行ってみないと分からなかったのだ。
だからここに来るまで若干の不安はあったんだが、ミオが気に入ってくれたようでホッとした。
烏賊貴族はアルコールを提供しているお店ではあるが、ざっと見た感じ、お客さんは比較的家族連れの方が多いため、さほど騒がしくはない。
どちらかと言うと、ここは居酒屋ではなく、ファミレスのような感覚で運営されているのかも知れないな。
店員さんに案内されるがまま、店舗の奥まで通されると、そこでは、間仕切りされた四人用テーブルの座敷が俺たちを待っていた。
そのテーブルの上には〝予約席〟と書かれたサインプレートが置いてある。
そんなに混まない店だと分かっていたら、ここまでして席を取る事も無かったかな。
いやいや、それは結果論だろう。
ひょっとしたら、今日がたまたま空いていただけかも知れないし、あえて予約を取ったからこそ、俺たちはこんないい席に座らせてもらえたんだ。
窓からのぞく、海を挟んだ向こう側の夜景はとても綺麗だし、ここからなら店内の中心にある、大きな生簀もよく見える。
あとは、おいしいイカ料理が食べられれば文句無しだね。
「ご注文がお決まりになりましたら、そちらの呼び出しボタンを押してくださいませ」
テーブルの端っこには、メニュー立ての隣に、丸形でベルが描かれた呼び出しボタンが設置されていた。
このボタンを押せば、店内の電光掲示板に、呼び出しをしている席の番号が表示されるシステムになっていて、それを見た店員は注文を伺いにやって来る。
呼び出した席の番号は左から順番に並んでいくため、仮にこの店が混み合っていても、まずどの客への応対を先にするべきなのかが一目で分かるようになっているわけだ。
そういうところは、まぁ一般的なファミレスと同じだよな。
0
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ダンス練習中トイレを言い出せなかったアイドル
こじらせた処女
BL
とある2人組アイドルグループの鮎(アユ)(16)には悩みがあった。それは、グループの中のリーダーである玖宮(クミヤ)(19)と2人きりになるとうまく話せないこと。
若干の尿意を抱えてレッスン室に入ってしまったアユは、開始20分で我慢が苦しくなってしまい…?
男だけど女性Vtuberを演じていたら現実で、メス堕ちしてしまったお話
ボッチなお地蔵さん
BL
中村るいは、今勢いがあるVTuber事務所が2期生を募集しているというツイートを見てすぐに応募をする。無事、合格して気分が上がっている最中に送られてきた自分が使うアバターのイラストを見ると女性のアバターだった。自分は男なのに…
結局、その女性アバターでVTuberを始めるのだが、女性VTuberを演じていたら現実でも影響が出始めて…!?
三限目の国語
理科準備室
BL
昭和の4年生の男の子の「ぼく」は学校で授業中にうんこしたくなります。学校の授業中にこれまで入学以来これまで無事に家までガマンできたのですが、今回ばかりはまだ4限目の国語の授業で、給食もあるのでもう家までガマンできそうもなく、「ぼく」は授業をこっそり抜け出して初めての学校のトイレでうんこすることを決意します。でも初めての学校でのうんこは不安がいっぱい・・・それを一つ一つ乗り越えていてうんこするまでの姿を描いていきます。「けしごむ」さんからいただいたイラスト入り。
風邪ひいた社会人がおねしょする話
こじらせた処女
BL
恋人の咲耶(さくや)が出張に行っている間、日翔(にちか)は風邪をひいてしまう。
一年前に風邪をひいたときには、咲耶にお粥を食べさせてもらったり、寝かしつけてもらったりと甘やかされたことを思い出して、寂しくなってしまう。一緒の気分を味わいたくて咲耶の部屋のベッドで寝るけれど…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる