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3.会社にて(3)
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「まぁ、また落ち着いた時にいい話があったら聞かせてくれよ」
「ん、分かった。ほなな」
「ありがとな佐藤。それじゃお先に」
俺は佐藤に別れを告げ、会社を後にした。
ミオはもう、家に帰ってきているだろうか?
渡しておいた家の合鍵を失くしていなければいいけど。
いろいろ考え事をしながら電車に揺られ、帰路についた俺は、自宅から最寄りの駅で電車を降り、改札を抜ける。
そして階段を下り、駅を出ると、そこには俺の帰りを待つミオの姿があった。
「ミオ!」
「あっ、お帰りなさい。お兄ちゃん!」
ミオは俺を見つけると、ぱたぱたと駆け寄って抱きついてきた。
「ただいま。よくここが分かったね」
「あのね。学校の先生が、お家から一番近い駅はここだよって教えてくれたんだよ」
「そっか……じゃあ、ここでずっと待っててくれたんだ?」
「うん。早くお兄ちゃんに会いたくて、学校から帰ったあと、お家を飛び出してきちゃった」
駅に設置されている壁掛け時計に目をやると、もう午後七時を過ぎていた。
外はもう真っ暗だ。
いくら仕事がたまっていたとはいえ、結果的に俺はこんな時間になるまで、ミオのような小さな子を一人で待たせてしまっていたのだ。
そう考えると俺は、ミオに対してすごく申し訳ない気持ちになった。
「遅くなっちゃってごめんな、ミオ」
「んーん、いいの。お仕事が大変だったんでしょ?」
「は……ははは。まあそんなとこかな」
ミオの事を心配するあまり、大量の書類をまとめる作業がなかなか手につかず、結果として帰りが遅くなってしまったとは、口が裂けても言えなかった。
「それじゃあ、晩ご飯の買い物してからお家に帰ろっか」
「うん!」
ミオはにっこり微笑みながら返事をする。
俺たちは朝出かけた時のように手を繋ぎ、今日の晩ご飯を確保するべく、古ぼけたネオンが輝く商店街の方へと歩いていった。
今日は、ミオが初めて学校に通った事をお祝いしよう。
さすがにケーキは大げさかも知れないから、せめておかずくらいは、いつもより奮発してあげようと思ったのだった。
「ん、分かった。ほなな」
「ありがとな佐藤。それじゃお先に」
俺は佐藤に別れを告げ、会社を後にした。
ミオはもう、家に帰ってきているだろうか?
渡しておいた家の合鍵を失くしていなければいいけど。
いろいろ考え事をしながら電車に揺られ、帰路についた俺は、自宅から最寄りの駅で電車を降り、改札を抜ける。
そして階段を下り、駅を出ると、そこには俺の帰りを待つミオの姿があった。
「ミオ!」
「あっ、お帰りなさい。お兄ちゃん!」
ミオは俺を見つけると、ぱたぱたと駆け寄って抱きついてきた。
「ただいま。よくここが分かったね」
「あのね。学校の先生が、お家から一番近い駅はここだよって教えてくれたんだよ」
「そっか……じゃあ、ここでずっと待っててくれたんだ?」
「うん。早くお兄ちゃんに会いたくて、学校から帰ったあと、お家を飛び出してきちゃった」
駅に設置されている壁掛け時計に目をやると、もう午後七時を過ぎていた。
外はもう真っ暗だ。
いくら仕事がたまっていたとはいえ、結果的に俺はこんな時間になるまで、ミオのような小さな子を一人で待たせてしまっていたのだ。
そう考えると俺は、ミオに対してすごく申し訳ない気持ちになった。
「遅くなっちゃってごめんな、ミオ」
「んーん、いいの。お仕事が大変だったんでしょ?」
「は……ははは。まあそんなとこかな」
ミオの事を心配するあまり、大量の書類をまとめる作業がなかなか手につかず、結果として帰りが遅くなってしまったとは、口が裂けても言えなかった。
「それじゃあ、晩ご飯の買い物してからお家に帰ろっか」
「うん!」
ミオはにっこり微笑みながら返事をする。
俺たちは朝出かけた時のように手を繋ぎ、今日の晩ご飯を確保するべく、古ぼけたネオンが輝く商店街の方へと歩いていった。
今日は、ミオが初めて学校に通った事をお祝いしよう。
さすがにケーキは大げさかも知れないから、せめておかずくらいは、いつもより奮発してあげようと思ったのだった。
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