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些細な宝物
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レオンと相談した結果、午前中は実技、午後は座学、というカリキュラムに変え、ふたりは午前中の実技の訓練に精を出していた。
徐々に近づいてくるレオンの足止めを、風の防御障壁でする。シャーロットの周囲には、人に見立てたレオンの魔力によって作り出された土壁が何枚かあるのだが、どうしても一番近くの土壁に傷をつけてしまう。
「――……視界には入っているのに、どうしてでしょうか?」
一週間、少しずつではあるものの、シャーロットは複雑な風の防御障壁を以前よりも自由に扱えるようになっていた。
だが、やはりその精度は微妙なところだ。
「風は遮ったところで凪ぐものです。私の属性である土は固まるもの。火や水は流れはしますが、留めることができます。だからこそ、風の属性は制御が難しいのですが……」
言われるまでもなく、シャーロットもそれはわかっている。
特に風魔法というのは、生活魔法として使い勝手が良いだけではなく、範囲攻撃にも向いている。とはいえ威力がないので、攻撃という攻撃にはならないが。
「私、この力を使って、物を動かしたり、浮かせたりはできるのです。なのに、どうしてこの防御障壁だけ、こうも苦戦するのでしょうか?」
「――精神論になってしまいますが、守ろうという気がないから、と推測されます」
レオンの口からまさかそんな言葉を聞くとは思わず、シャーロットは目を瞬き、歩み寄ってくる彼を見つめた。
「魔法というのは、術者の心理にも大きく関わります。これをお話しするのは――少々酷かと思い黙っていましたが」
レオンの言いたいことは、シャーロットにも自然と伝わってしまった。
侯爵令嬢にとって、自分以外の人間など守るに値しない存在だ。彼女の身にはほかの者にはない価値がある。
高貴な人間になればなるほど、高飛車で傲慢になるのは、周囲から特別扱いをされているからだ。貴族は血筋が物を言うため、血縁に恵まれれば周囲もそれ相応の対応を強いられる。それはシャーロットとて同様だった。
「私に、人を守る気がないから、使いこなせないということですわね」
確かにシャーロットは、こうなるきっかけになったあの日、レオンだけを守ろうとした。だが深く考えずに魔法を使えたのは、彼であれば自分の魔法に影響を受けないという確信があったからだ。
もしもその確信が持てなければ、あんな無謀なことはできなかっただろう。
下手をすれば、レオンを傷つけていたかもしれないのだ。
(確かに、土壁じゃあ、守ろうっていう気も起きないのもあるしね……)
だからといえ、実際の人間を配置するわけにはいかない。何か別の、傷ついたら困るようなものを配置しなければ、この訓練もこれ以上は意味がないだろう。
「大切なモノ……」
例えば何だろうか。
よくよく考えてみれば、シャーロットには物質としての『大切なモノ』が存在しない。
この世界で一般的な『大切なモノ』は金や宝石類であるが、この学園では必要ないので持ってきていないし、仮にそれがあったとしても、あまり意味がないだろう。
大切なモノ、というのはそういうことではないのだ。
品物自体の価値など関係のない、それこそ、傷つけたくないモノ……。
「あの、レオン様」
シャーロットは少しだけ躊躇いつつも、思っていることを口にした。
「私にくださった、あの傷薬の容器の所在をご存じでしょうか?」
「あの容器ですか?」
「はい……」
容器など、中身がなくなれば不必要となる代物だ。特にこの国はとても豊かであり、容器一つの価値などそう高くはない。ゆえに、とっくに捨てられているだろう。
シャーロットにとって、あれはレオンがくれた最初で最後かもしれないプレゼントだが、彼にとってはたかが傷薬の容器でしかないのだ。
もうないだろうな、と内心落ち込みながらも、捨てたというのであれば、捨てた場所を聞けば良い。捨てた場所のごみ箱や、学園中のごみが集められるゴミ収集場をひっくり返してでも探し出す覚悟だった。
ぎゅっ、と決意に拳を握りしめてレオンを見つめ続けていると、彼はなぜか言いにくそうに視線を反らしてしまった。
「――あの容器でしたら、こちらに」
意外にも、彼はまだの容器を持っていた。
「ですが、これをどうするおつもりで?」
騎士服のポケットから、彼はあの小さな容器を取り出し、シャーロットへ差し出す。
(持っていて……くれたんだ……)
そこに何か意味があったわけではないのだろうが、それでも嬉しかった。
「大切なモノを人に見立てれば、安易に土壁を傷つけることもなくなると思いまして」
レオンの手のひらから小さな容器を、壊れ物を扱うような手つきで受け取る。
プラスチックに似た素材で出来たこの容器は、いくら攻撃性のない風魔法であっても、容赦なくぶつけてしまえば壊れてしまうだろう。だから次は、慎重にならなければならない。
シャーロットは容器を一番近くにある土壁の、自分の魔力で抉ってしまった隙間にそっと置いた。
「シャーロット嬢にとって、それはそんなに大切なモノなのですか?」
「えぇ。そうですわ」
「私が贈ったものではありますが、それほど――思っていただけるような代物ではありません」
「私はそうは思いませんの。だから、次こそ大丈夫ですわ」
「…………」
レオンには理解できないのだろう。訝し気に容器に視線を注いでいる。だが、理解されなくていいのだ。
「さぁレオン様。再開しましょう!」
ぐっ、と足を踏ん張って構えると、レオンは小さくうなずいてシャーロットから距離を取った。
そうしてから、またレオンが歩み寄ってくる。
それを風の防御障壁で阻みながらも、チラッと容器の方へ視線を流した。
容器は土壁の隙間でガタガタと風に揺られて震えているが、ヒビは入っていない。
(まだ、ダメか……)
風で揺れるということは、完全に守り切れていないということだ。現にシャーロットは防御障壁の中央にいるが、全くと言っていいほど髪も制服も、風で靡いてはいない。
ぐっ、と意識を容器に集中させ、自分と同じ環境を作ろうとすれば、レオンがまた数歩歩み寄ってくる。
(意識が散漫になる……)
横を気にすれば前が、前を気にすれば横が疎かになる。
本来であれば、これを一瞬で出来なければならないのだ。
そうでなければ、実戦では使えない。
この課題は、実戦で使えるくらいになることで及第点になるだろう。詳しい評価はあの腹黒鬼畜変態王子がするにしても、誰が見ても有無を言わせないくらいの実力を磨かなければ、シャーロットの矜持が許さない。
レオンが歩み寄ってくるのを、また風で阻害しながらも、シャーロットは容器が壊れないよう、自分の背後には細心の注意を払った――が。
パンッ! と背後で何かが破裂し、シャーロットは思わず振り返った。そのとき、何かがシュンッと飛んできて、咄嗟に手で防御する。
「シャーロット嬢!」
レオンが駆けてくる。
シャーロットはそっと手を背中に隠し、にっこりと微笑んだ。
「失敗してしまいましたわ」
何がいけなかったのか、容器は無残にも粉々になってしまった。その破片が刃物のように飛び散って、シャーロットへ飛んで来たのである。
「隠さず見せてください」
「なんのことでしょう?」
背中の後ろで、ギュッと腕を握りしめる。握りしめた手は、ねっとりとしたもので徐々に濡れていき、制服の長袖の布に染み渡っていく。
「誤魔化さず見せなさい!」
低い声で怒鳴られ、一瞬怯んだシャーロットの腕が、レオンに掴み上げられた。
彼に掴まれた腕からは、大量の血が滴っている。
「――なぜ隠したのです」
「…………どうしてでしょう?」
隠すのは当たり前だった。
今は何を教わっているのか? こういうときに防御する術である。その訓練中に、何故咄嗟に防御障壁を作り直せないのかと、彼に落胆されたくなかったのである。
「すぐに医務室に行きましょう」
「大丈夫ですわよ。これくらい」
「私の目から見ても、大したことがない、とは言えません」
細い腕には容器の破片が突き刺さっている。シャーロットは、何も考えずにその破片ももう片方の手で触れようとしたが、その手をレオンによって掴まれる。
「抜いてはいけません。出血多量で死ぬこともあります」
服の上だからわからないが、確かに動脈を傷つけていたら、これを抜いた途端、血が吹き出してしまうことだろう。
「少し、診てもよろしいですか?」
言葉では許可を求めるような言い方だったが、彼はシャーロットの返事を待たず、袖をまくり上げた。
「――まず、止血をしましょう」
傷口を確認した彼は、薄いハンカチを広げ、それを紐状にするとシャーロットの腕にきつく巻いた。手際の良さは、やはり職業柄なのだろう。
騎士をしていれば、こうした切り傷も日常茶飯事のはずだ。シャーロットはされるがままレオンに従い、チラッと自分の腕の傷口を覗き込んだ。
(あちゃー……結構ぱっくりいっちゃったなぁ……)
傷を見てしまうと、今まで麻痺していたのか、痛みが遅れてやってくる。
(結構痛いけど、我慢できないほどじゃないかも)
少し見た限りでは、容器の破片は先端が広く突き刺さっているが、傷口としては浅めだろう。布地が厚い制服の上着を着ていたため、それがクッションの役割を果たしたのだろう。
「ほら、レオン様。大丈夫そうですわよ。これくらい、かすり傷……」
「何を馬鹿な事をおっしゃっているのですか!」
軽く笑い飛ばそうとしたのに、レオンにまた怒鳴られてしまった。彼がこんなに感情を露わにする姿を、初めて見て、シャーロットは固まってしまう。
結局、ほとんど強制的にレオンに医務室に連れられ、学園医に傷を診せることになった。
「おやおや、バレリア家のご令嬢が、やってしまいましたね」
茶色い長髪を背中で三つ編みにし、白衣を着ている優しそうな青年医は、シャーロットの腕から破片を綺麗に抜き取ると、素早く治療を施してくれた。
包帯を巻かれた腕を、シャーロットは学園医の前に座ったまま、ジッと見つめる。
(そういえばこの世界には、治癒魔法はないんだっけ……)
否、ないというと、語弊があるだろう。
治癒魔法は存在している。だが、それを使える人間は無属性を持つ者であり、その数はかなり少ない。さらに言えば、治癒魔法と言っても、『自己治癒能力を上げる』魔法であり、腕を切り落とされれば元には戻らないが、かすり傷くらいであれば治せる、いわゆる何でも治せるヒーラーのような存在ではないのである。
ふぅ、と息を吐きつつ、シャーロットは目の前にいる青年医へ視線を注いだ。
(この人が……)
レオンより少し年上だろうが、まだ二十代後半に差し掛かったかといった風情の彼こそ、この学園の学園長である。
この学園の学園長は、その存在が曖昧で、シャーロットも年間行事でも会ったことがない存在だ。
ただ原作を思い出している彼女は知っている。
この学園医こそ、この学園の長であり、マリアンヌの実父なのだ。だがそれは小説の原作内でも、マリアンヌには明かされてはいなかった。
作品の番外編にあたる、別の物語で、ずっと彼女を見守ってきたのが彼だった、と語られる程度の存在。
(この人、ずっと見守ってきた自分の娘が、あんな身体にされちゃったって知ってるのかな……)
余計なお世話だろうが、知り合いの父親という存在を目の前にすると、つい気になってしまう。
(自分の娘が王太子妃に……ってまでなら嬉しいだろうけど、あんな淫らな身体にされてるって知ったら、怒るのかな……?)
ちょっとだけ気の毒になってしまう。
訳あって実父とは名乗れず、遠くから見守るしかできない彼に同情に似た感情が生まれたところで、青年医が「もう大丈夫だよ」と声をかけてきた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。大変だろうけど、気を付けてね」
「――はい」
含みを持った気遣いの言葉に、シャーロットは少しだけ眉を顰めた。
シャーロットにあの課題を突き付けたのは、腹黒鬼畜変態王子と、この人好きする笑顔を見せる青年なのだ。
元凶は自分にあるとしても、あの無茶ぶりも過ぎる課題のせいで、シャーロットはこんな怪我をしたとも言える。
(王子も王子なら、学園長も学園長だな)
シャーロットに何の恨みがあるのだろう。
マリアンヌを虐めていたからだろうか。
(まぁ……そうだっていうなら、仕方ないか……)
学園長の隠し子を侯爵令嬢の名のもとに、いびっていたのだ。こういう形で復讐されても仕方がない。
「化膿止めと、痛み止めの薬も出そうか?」
だが意外にも、『医者として』はちゃんと仕事をこなすようだ。けれどその提案を、シャーロットは丁重に断った。
綺麗に包帯で巻かれた腕は、もうそれほど傷んでいない。放っておいてもすぐ治るだろう。
「――意外だね。もう少し、取り乱すと思ったんだけど」
「この程度、かすり傷ではありませんの。騒ぐほどのものではありませんわ」
「さすがは侯爵家のご令嬢だ。肝が据わっているね」
「誉め言葉として受け取っておきますわ」
「あ、でもね、医者として言わせてもらうけど、当分、その腕はあまり使わないようにね。傷は浅いけど、開いたら厄介だから」
何が厄介なのか、その正確な意味はわからないが、ただ単に傷口が開くというだけの意味なのだろう。深くは考えず、シャーロットは小さく頭を下げた。
「お忙しい中、お仕事を増やすようなことはしないよう努めますわ」
スッと立ち上がり、シャーロットは彼に背を向けた。
そして部屋の外で待っていたレオンに、治療した腕を見せる。
「痛みはありませんか?」
「大丈夫ですわ。しっかり治療していただきました」
「そうですか……」
ちらり、とレオンが扉の前まで見送りに出てきていた青年医へ視線を注ぐ。
「ありがとうございます」
彼が頭を下げると、青年医はにっこりと微笑み、二人に手を振った。
「また何かあれば来てね。いつでも歓迎だよ」
歓迎されても困る。病院で「またのお越しを」と言われるくらい、微妙な気持ちになった。
シャーロットはレオンと二人、謹慎塔への道のりを歩いた。
久しぶりの校舎だが、今は授業中なので生徒の姿は一切ない。長い廊下をふたりで歩いていると、やはり、聞こえてくる声があるものだ。
「やっ! あぁ!!」
ぴたり、とシャーロットは足を止めた。この声は、言わずもがな、マリアンヌのものである。
額に手を当て、シャーロットは考えた。
(は? あの腹黒鬼畜王子……授業中もやりまくりなわけ?)
原作はどうだったか、と詳細を思い出そうと思っても、さすがに細部すぎて覚えていない。
(シャーロットが謹慎塔に入れられてる間、確かにエッチなシーン多かったけど、授業中っていう設定あったかなぁ……)
ここは彼らが逢瀬を重ねている現場に居合わせないよう、遠回りになってでも道を変えるべきだろう。だが、場所がわからない。
シャーロットは風属性のお陰で耳は良いのだが、方向まではわからないのだ。
「シャーロット嬢。どうかしましたか? まさか傷が……?」
「いえ! 大丈夫ですわ! ちょっと、頭痛が……」
「出血のショックで体調が?」
「そういう類ではありませんの」
はぁ、とため息を吐き、シャーロットはレオンを見上げた。
彼に、マリアンヌの淫らな姿を見てほしくない。これは女としての矜持なのだろう。
好きな男に、他の女の――自分より魅力的な女のあられもない姿など、事故だったとしても見てほしくはないものだ。
「あの、中庭経由で戻りませんか?」
イチかバチか、さすがに学園内ならいくらでも密室があるのに、昼日中の中庭で致しているわけがないだろう、という仮説を元に、シャーロットはレオンに提案した。
「かしこまりました。気分転換にもなるでしょうし良いでしょう」
レオンがシャーロットの手を取ってエスコートしてくれる。
学園の庭師が綺麗に手入れしている中庭をふたりで歩いていると、『彼ら』の声がまた大きくなってきた。
(え……)
戸惑いつつも、その声に耳を傾ける。
徐々に近づいてくるレオンの足止めを、風の防御障壁でする。シャーロットの周囲には、人に見立てたレオンの魔力によって作り出された土壁が何枚かあるのだが、どうしても一番近くの土壁に傷をつけてしまう。
「――……視界には入っているのに、どうしてでしょうか?」
一週間、少しずつではあるものの、シャーロットは複雑な風の防御障壁を以前よりも自由に扱えるようになっていた。
だが、やはりその精度は微妙なところだ。
「風は遮ったところで凪ぐものです。私の属性である土は固まるもの。火や水は流れはしますが、留めることができます。だからこそ、風の属性は制御が難しいのですが……」
言われるまでもなく、シャーロットもそれはわかっている。
特に風魔法というのは、生活魔法として使い勝手が良いだけではなく、範囲攻撃にも向いている。とはいえ威力がないので、攻撃という攻撃にはならないが。
「私、この力を使って、物を動かしたり、浮かせたりはできるのです。なのに、どうしてこの防御障壁だけ、こうも苦戦するのでしょうか?」
「――精神論になってしまいますが、守ろうという気がないから、と推測されます」
レオンの口からまさかそんな言葉を聞くとは思わず、シャーロットは目を瞬き、歩み寄ってくる彼を見つめた。
「魔法というのは、術者の心理にも大きく関わります。これをお話しするのは――少々酷かと思い黙っていましたが」
レオンの言いたいことは、シャーロットにも自然と伝わってしまった。
侯爵令嬢にとって、自分以外の人間など守るに値しない存在だ。彼女の身にはほかの者にはない価値がある。
高貴な人間になればなるほど、高飛車で傲慢になるのは、周囲から特別扱いをされているからだ。貴族は血筋が物を言うため、血縁に恵まれれば周囲もそれ相応の対応を強いられる。それはシャーロットとて同様だった。
「私に、人を守る気がないから、使いこなせないということですわね」
確かにシャーロットは、こうなるきっかけになったあの日、レオンだけを守ろうとした。だが深く考えずに魔法を使えたのは、彼であれば自分の魔法に影響を受けないという確信があったからだ。
もしもその確信が持てなければ、あんな無謀なことはできなかっただろう。
下手をすれば、レオンを傷つけていたかもしれないのだ。
(確かに、土壁じゃあ、守ろうっていう気も起きないのもあるしね……)
だからといえ、実際の人間を配置するわけにはいかない。何か別の、傷ついたら困るようなものを配置しなければ、この訓練もこれ以上は意味がないだろう。
「大切なモノ……」
例えば何だろうか。
よくよく考えてみれば、シャーロットには物質としての『大切なモノ』が存在しない。
この世界で一般的な『大切なモノ』は金や宝石類であるが、この学園では必要ないので持ってきていないし、仮にそれがあったとしても、あまり意味がないだろう。
大切なモノ、というのはそういうことではないのだ。
品物自体の価値など関係のない、それこそ、傷つけたくないモノ……。
「あの、レオン様」
シャーロットは少しだけ躊躇いつつも、思っていることを口にした。
「私にくださった、あの傷薬の容器の所在をご存じでしょうか?」
「あの容器ですか?」
「はい……」
容器など、中身がなくなれば不必要となる代物だ。特にこの国はとても豊かであり、容器一つの価値などそう高くはない。ゆえに、とっくに捨てられているだろう。
シャーロットにとって、あれはレオンがくれた最初で最後かもしれないプレゼントだが、彼にとってはたかが傷薬の容器でしかないのだ。
もうないだろうな、と内心落ち込みながらも、捨てたというのであれば、捨てた場所を聞けば良い。捨てた場所のごみ箱や、学園中のごみが集められるゴミ収集場をひっくり返してでも探し出す覚悟だった。
ぎゅっ、と決意に拳を握りしめてレオンを見つめ続けていると、彼はなぜか言いにくそうに視線を反らしてしまった。
「――あの容器でしたら、こちらに」
意外にも、彼はまだの容器を持っていた。
「ですが、これをどうするおつもりで?」
騎士服のポケットから、彼はあの小さな容器を取り出し、シャーロットへ差し出す。
(持っていて……くれたんだ……)
そこに何か意味があったわけではないのだろうが、それでも嬉しかった。
「大切なモノを人に見立てれば、安易に土壁を傷つけることもなくなると思いまして」
レオンの手のひらから小さな容器を、壊れ物を扱うような手つきで受け取る。
プラスチックに似た素材で出来たこの容器は、いくら攻撃性のない風魔法であっても、容赦なくぶつけてしまえば壊れてしまうだろう。だから次は、慎重にならなければならない。
シャーロットは容器を一番近くにある土壁の、自分の魔力で抉ってしまった隙間にそっと置いた。
「シャーロット嬢にとって、それはそんなに大切なモノなのですか?」
「えぇ。そうですわ」
「私が贈ったものではありますが、それほど――思っていただけるような代物ではありません」
「私はそうは思いませんの。だから、次こそ大丈夫ですわ」
「…………」
レオンには理解できないのだろう。訝し気に容器に視線を注いでいる。だが、理解されなくていいのだ。
「さぁレオン様。再開しましょう!」
ぐっ、と足を踏ん張って構えると、レオンは小さくうなずいてシャーロットから距離を取った。
そうしてから、またレオンが歩み寄ってくる。
それを風の防御障壁で阻みながらも、チラッと容器の方へ視線を流した。
容器は土壁の隙間でガタガタと風に揺られて震えているが、ヒビは入っていない。
(まだ、ダメか……)
風で揺れるということは、完全に守り切れていないということだ。現にシャーロットは防御障壁の中央にいるが、全くと言っていいほど髪も制服も、風で靡いてはいない。
ぐっ、と意識を容器に集中させ、自分と同じ環境を作ろうとすれば、レオンがまた数歩歩み寄ってくる。
(意識が散漫になる……)
横を気にすれば前が、前を気にすれば横が疎かになる。
本来であれば、これを一瞬で出来なければならないのだ。
そうでなければ、実戦では使えない。
この課題は、実戦で使えるくらいになることで及第点になるだろう。詳しい評価はあの腹黒鬼畜変態王子がするにしても、誰が見ても有無を言わせないくらいの実力を磨かなければ、シャーロットの矜持が許さない。
レオンが歩み寄ってくるのを、また風で阻害しながらも、シャーロットは容器が壊れないよう、自分の背後には細心の注意を払った――が。
パンッ! と背後で何かが破裂し、シャーロットは思わず振り返った。そのとき、何かがシュンッと飛んできて、咄嗟に手で防御する。
「シャーロット嬢!」
レオンが駆けてくる。
シャーロットはそっと手を背中に隠し、にっこりと微笑んだ。
「失敗してしまいましたわ」
何がいけなかったのか、容器は無残にも粉々になってしまった。その破片が刃物のように飛び散って、シャーロットへ飛んで来たのである。
「隠さず見せてください」
「なんのことでしょう?」
背中の後ろで、ギュッと腕を握りしめる。握りしめた手は、ねっとりとしたもので徐々に濡れていき、制服の長袖の布に染み渡っていく。
「誤魔化さず見せなさい!」
低い声で怒鳴られ、一瞬怯んだシャーロットの腕が、レオンに掴み上げられた。
彼に掴まれた腕からは、大量の血が滴っている。
「――なぜ隠したのです」
「…………どうしてでしょう?」
隠すのは当たり前だった。
今は何を教わっているのか? こういうときに防御する術である。その訓練中に、何故咄嗟に防御障壁を作り直せないのかと、彼に落胆されたくなかったのである。
「すぐに医務室に行きましょう」
「大丈夫ですわよ。これくらい」
「私の目から見ても、大したことがない、とは言えません」
細い腕には容器の破片が突き刺さっている。シャーロットは、何も考えずにその破片ももう片方の手で触れようとしたが、その手をレオンによって掴まれる。
「抜いてはいけません。出血多量で死ぬこともあります」
服の上だからわからないが、確かに動脈を傷つけていたら、これを抜いた途端、血が吹き出してしまうことだろう。
「少し、診てもよろしいですか?」
言葉では許可を求めるような言い方だったが、彼はシャーロットの返事を待たず、袖をまくり上げた。
「――まず、止血をしましょう」
傷口を確認した彼は、薄いハンカチを広げ、それを紐状にするとシャーロットの腕にきつく巻いた。手際の良さは、やはり職業柄なのだろう。
騎士をしていれば、こうした切り傷も日常茶飯事のはずだ。シャーロットはされるがままレオンに従い、チラッと自分の腕の傷口を覗き込んだ。
(あちゃー……結構ぱっくりいっちゃったなぁ……)
傷を見てしまうと、今まで麻痺していたのか、痛みが遅れてやってくる。
(結構痛いけど、我慢できないほどじゃないかも)
少し見た限りでは、容器の破片は先端が広く突き刺さっているが、傷口としては浅めだろう。布地が厚い制服の上着を着ていたため、それがクッションの役割を果たしたのだろう。
「ほら、レオン様。大丈夫そうですわよ。これくらい、かすり傷……」
「何を馬鹿な事をおっしゃっているのですか!」
軽く笑い飛ばそうとしたのに、レオンにまた怒鳴られてしまった。彼がこんなに感情を露わにする姿を、初めて見て、シャーロットは固まってしまう。
結局、ほとんど強制的にレオンに医務室に連れられ、学園医に傷を診せることになった。
「おやおや、バレリア家のご令嬢が、やってしまいましたね」
茶色い長髪を背中で三つ編みにし、白衣を着ている優しそうな青年医は、シャーロットの腕から破片を綺麗に抜き取ると、素早く治療を施してくれた。
包帯を巻かれた腕を、シャーロットは学園医の前に座ったまま、ジッと見つめる。
(そういえばこの世界には、治癒魔法はないんだっけ……)
否、ないというと、語弊があるだろう。
治癒魔法は存在している。だが、それを使える人間は無属性を持つ者であり、その数はかなり少ない。さらに言えば、治癒魔法と言っても、『自己治癒能力を上げる』魔法であり、腕を切り落とされれば元には戻らないが、かすり傷くらいであれば治せる、いわゆる何でも治せるヒーラーのような存在ではないのである。
ふぅ、と息を吐きつつ、シャーロットは目の前にいる青年医へ視線を注いだ。
(この人が……)
レオンより少し年上だろうが、まだ二十代後半に差し掛かったかといった風情の彼こそ、この学園の学園長である。
この学園の学園長は、その存在が曖昧で、シャーロットも年間行事でも会ったことがない存在だ。
ただ原作を思い出している彼女は知っている。
この学園医こそ、この学園の長であり、マリアンヌの実父なのだ。だがそれは小説の原作内でも、マリアンヌには明かされてはいなかった。
作品の番外編にあたる、別の物語で、ずっと彼女を見守ってきたのが彼だった、と語られる程度の存在。
(この人、ずっと見守ってきた自分の娘が、あんな身体にされちゃったって知ってるのかな……)
余計なお世話だろうが、知り合いの父親という存在を目の前にすると、つい気になってしまう。
(自分の娘が王太子妃に……ってまでなら嬉しいだろうけど、あんな淫らな身体にされてるって知ったら、怒るのかな……?)
ちょっとだけ気の毒になってしまう。
訳あって実父とは名乗れず、遠くから見守るしかできない彼に同情に似た感情が生まれたところで、青年医が「もう大丈夫だよ」と声をかけてきた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。大変だろうけど、気を付けてね」
「――はい」
含みを持った気遣いの言葉に、シャーロットは少しだけ眉を顰めた。
シャーロットにあの課題を突き付けたのは、腹黒鬼畜変態王子と、この人好きする笑顔を見せる青年なのだ。
元凶は自分にあるとしても、あの無茶ぶりも過ぎる課題のせいで、シャーロットはこんな怪我をしたとも言える。
(王子も王子なら、学園長も学園長だな)
シャーロットに何の恨みがあるのだろう。
マリアンヌを虐めていたからだろうか。
(まぁ……そうだっていうなら、仕方ないか……)
学園長の隠し子を侯爵令嬢の名のもとに、いびっていたのだ。こういう形で復讐されても仕方がない。
「化膿止めと、痛み止めの薬も出そうか?」
だが意外にも、『医者として』はちゃんと仕事をこなすようだ。けれどその提案を、シャーロットは丁重に断った。
綺麗に包帯で巻かれた腕は、もうそれほど傷んでいない。放っておいてもすぐ治るだろう。
「――意外だね。もう少し、取り乱すと思ったんだけど」
「この程度、かすり傷ではありませんの。騒ぐほどのものではありませんわ」
「さすがは侯爵家のご令嬢だ。肝が据わっているね」
「誉め言葉として受け取っておきますわ」
「あ、でもね、医者として言わせてもらうけど、当分、その腕はあまり使わないようにね。傷は浅いけど、開いたら厄介だから」
何が厄介なのか、その正確な意味はわからないが、ただ単に傷口が開くというだけの意味なのだろう。深くは考えず、シャーロットは小さく頭を下げた。
「お忙しい中、お仕事を増やすようなことはしないよう努めますわ」
スッと立ち上がり、シャーロットは彼に背を向けた。
そして部屋の外で待っていたレオンに、治療した腕を見せる。
「痛みはありませんか?」
「大丈夫ですわ。しっかり治療していただきました」
「そうですか……」
ちらり、とレオンが扉の前まで見送りに出てきていた青年医へ視線を注ぐ。
「ありがとうございます」
彼が頭を下げると、青年医はにっこりと微笑み、二人に手を振った。
「また何かあれば来てね。いつでも歓迎だよ」
歓迎されても困る。病院で「またのお越しを」と言われるくらい、微妙な気持ちになった。
シャーロットはレオンと二人、謹慎塔への道のりを歩いた。
久しぶりの校舎だが、今は授業中なので生徒の姿は一切ない。長い廊下をふたりで歩いていると、やはり、聞こえてくる声があるものだ。
「やっ! あぁ!!」
ぴたり、とシャーロットは足を止めた。この声は、言わずもがな、マリアンヌのものである。
額に手を当て、シャーロットは考えた。
(は? あの腹黒鬼畜王子……授業中もやりまくりなわけ?)
原作はどうだったか、と詳細を思い出そうと思っても、さすがに細部すぎて覚えていない。
(シャーロットが謹慎塔に入れられてる間、確かにエッチなシーン多かったけど、授業中っていう設定あったかなぁ……)
ここは彼らが逢瀬を重ねている現場に居合わせないよう、遠回りになってでも道を変えるべきだろう。だが、場所がわからない。
シャーロットは風属性のお陰で耳は良いのだが、方向まではわからないのだ。
「シャーロット嬢。どうかしましたか? まさか傷が……?」
「いえ! 大丈夫ですわ! ちょっと、頭痛が……」
「出血のショックで体調が?」
「そういう類ではありませんの」
はぁ、とため息を吐き、シャーロットはレオンを見上げた。
彼に、マリアンヌの淫らな姿を見てほしくない。これは女としての矜持なのだろう。
好きな男に、他の女の――自分より魅力的な女のあられもない姿など、事故だったとしても見てほしくはないものだ。
「あの、中庭経由で戻りませんか?」
イチかバチか、さすがに学園内ならいくらでも密室があるのに、昼日中の中庭で致しているわけがないだろう、という仮説を元に、シャーロットはレオンに提案した。
「かしこまりました。気分転換にもなるでしょうし良いでしょう」
レオンがシャーロットの手を取ってエスコートしてくれる。
学園の庭師が綺麗に手入れしている中庭をふたりで歩いていると、『彼ら』の声がまた大きくなってきた。
(え……)
戸惑いつつも、その声に耳を傾ける。
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