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好きで貴族令嬢になった訳ではありません
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私は確か、馬小屋の掃除をしていた筈なのに、又倒れてしまったのですね。
最後に思い出すのは、楽し気に私を鞭打つメリーの姿でした。
体中に包帯が巻かれ、薬の匂いで咽てしまいそうになります。
侯爵邸へ来てからどれ位経ったのでしょうか、私は何日ベッドの上で過ごしたのかすら、分からなくなりました。
ハロルド様とは、披露宴でお別れしてから、一度もお会いしておりません。
同じ屋敷に居るのかすら、疑ってしまいます。
私の元を毎日訪れるのは、メリーだけでした。
最近彼女は、ハロルド様から素敵なドレスをプレゼントされている様で、私が輿入れの時に持って来たドレスは着なくなりました。
愛妾ではなく、この屋敷の女主人になったのでしょう。
メイド長も、侍女長も、メリーには逆らいません。
目覚めた私の様子を見に来たメリーは、ベッドに横たわっている姿を見て、眉を吊り上げ罵倒して来ました。
「あんたね!何時迄仮病を使っているのよ。寝ていれば楽出来るなんて、思っていたら大間違いよ。さっさと起きて、馬小屋の掃除をして来なさい」
「どうして…何故そこまで私を目の敵にするの?私は貴方に、何も悪い事はしていないと思っていたわ」
「どうしてですって?そんなの決まっているじゃない、あんたが憎たらしいからよ。私の方が綺麗なのに、能力だってあんたよりもずっと優れているわ。それなのに、産まれた時から贅沢三昧に生きているあんたばっかり優遇される。何時も素敵なドレスを着て贅沢な食事をして、優しい両親に大切にされていたあんたが、憎くて憎くて仕方が無かったのよ!」
メリーは興奮したせいか、私の襟首を掴んで、顔を打ち始めました。
「どんなに私が頑張ったって、貴族にはなれないの。新興貴族に嫁がせると言っておきながら、結局は爵位の低い貴族しか居なかったじゃない!私は贅沢三昧に暮らしたかった。あんたを見下したかった。なのに、自分だけ侯爵家に嫁ぐなんて、許されると思っていたの?必ずあんたの地位を奪って見せると、心に誓いを立てて、歯を食いしばって生きて来たのよ!」
メリーがこんな性格だと知っていたら、きっとお父様はもっと早くに彼女を手放していたのでしょうね。
例え家門に傷が付こうとも、人に暴力を振るう事に躊躇いのない人間を、屋敷に置いて置くのはとても危険な事だと思うのです。
ハロルド様は、メリーの本性を知らないのかもしれません。
侯爵夫妻も、メリーの事を知らないでいるのだとしたら、きっと後悔する事になるでしょうね。
このまま彼女を自由にさせていたら、近い将来侯爵家は無くなってしまうだろうと、私は思うのでした。
「あんたに、私の気持ちが分かる?恵まれた環境で生きて来たあんたに、私の悔しさが、分かるかって聞いているのよ!」
メリーに力いっぱい張り倒された私は、どうしてこんなに憎まれなければならないのかと、考えていました。
私だって、自ら選んで貴族家の娘に産まれた訳では無いのです。
何の自由も無く、幼い頃から必死に学び、淑女として生きて来たのです。
メリーはそんな私の努力や苦悩等、無いと思っていたのでしょう。
貴族の表面だけを見て、野心を微塵も感じさせずに隠し通していただなんて、社交界に出す迄は分からなかった私達も愚かだったのです。
貴族の娘なんて何も自由がない事を教えたのだけれど、全く聞き入れてはくれませんでした。
ハロルド様みたいな素敵な人と結婚出来る癖にと、逆に罵られてしまったのです。
自由に生きる事と引き換えにしている贅沢に、何の魅力があると言うのでしょうか。
メリーがこの先侯爵夫人として振舞うのであれば、自由を捨てなくてはならないと言う事を、真に理解していないのですね。
理解していなくとも、メリーが侯爵夫人になる事は、未来永劫ありませんけど…
私の願いが叶うかは分かりませんが、両親に…いえ。
国王陛下に進言できる機会が出来たのなら、メリーの事や侯爵家での事を全てお話して、孤児の引き取りを慎重にするように伝えなければと思いました。
最後に思い出すのは、楽し気に私を鞭打つメリーの姿でした。
体中に包帯が巻かれ、薬の匂いで咽てしまいそうになります。
侯爵邸へ来てからどれ位経ったのでしょうか、私は何日ベッドの上で過ごしたのかすら、分からなくなりました。
ハロルド様とは、披露宴でお別れしてから、一度もお会いしておりません。
同じ屋敷に居るのかすら、疑ってしまいます。
私の元を毎日訪れるのは、メリーだけでした。
最近彼女は、ハロルド様から素敵なドレスをプレゼントされている様で、私が輿入れの時に持って来たドレスは着なくなりました。
愛妾ではなく、この屋敷の女主人になったのでしょう。
メイド長も、侍女長も、メリーには逆らいません。
目覚めた私の様子を見に来たメリーは、ベッドに横たわっている姿を見て、眉を吊り上げ罵倒して来ました。
「あんたね!何時迄仮病を使っているのよ。寝ていれば楽出来るなんて、思っていたら大間違いよ。さっさと起きて、馬小屋の掃除をして来なさい」
「どうして…何故そこまで私を目の敵にするの?私は貴方に、何も悪い事はしていないと思っていたわ」
「どうしてですって?そんなの決まっているじゃない、あんたが憎たらしいからよ。私の方が綺麗なのに、能力だってあんたよりもずっと優れているわ。それなのに、産まれた時から贅沢三昧に生きているあんたばっかり優遇される。何時も素敵なドレスを着て贅沢な食事をして、優しい両親に大切にされていたあんたが、憎くて憎くて仕方が無かったのよ!」
メリーは興奮したせいか、私の襟首を掴んで、顔を打ち始めました。
「どんなに私が頑張ったって、貴族にはなれないの。新興貴族に嫁がせると言っておきながら、結局は爵位の低い貴族しか居なかったじゃない!私は贅沢三昧に暮らしたかった。あんたを見下したかった。なのに、自分だけ侯爵家に嫁ぐなんて、許されると思っていたの?必ずあんたの地位を奪って見せると、心に誓いを立てて、歯を食いしばって生きて来たのよ!」
メリーがこんな性格だと知っていたら、きっとお父様はもっと早くに彼女を手放していたのでしょうね。
例え家門に傷が付こうとも、人に暴力を振るう事に躊躇いのない人間を、屋敷に置いて置くのはとても危険な事だと思うのです。
ハロルド様は、メリーの本性を知らないのかもしれません。
侯爵夫妻も、メリーの事を知らないでいるのだとしたら、きっと後悔する事になるでしょうね。
このまま彼女を自由にさせていたら、近い将来侯爵家は無くなってしまうだろうと、私は思うのでした。
「あんたに、私の気持ちが分かる?恵まれた環境で生きて来たあんたに、私の悔しさが、分かるかって聞いているのよ!」
メリーに力いっぱい張り倒された私は、どうしてこんなに憎まれなければならないのかと、考えていました。
私だって、自ら選んで貴族家の娘に産まれた訳では無いのです。
何の自由も無く、幼い頃から必死に学び、淑女として生きて来たのです。
メリーはそんな私の努力や苦悩等、無いと思っていたのでしょう。
貴族の表面だけを見て、野心を微塵も感じさせずに隠し通していただなんて、社交界に出す迄は分からなかった私達も愚かだったのです。
貴族の娘なんて何も自由がない事を教えたのだけれど、全く聞き入れてはくれませんでした。
ハロルド様みたいな素敵な人と結婚出来る癖にと、逆に罵られてしまったのです。
自由に生きる事と引き換えにしている贅沢に、何の魅力があると言うのでしょうか。
メリーがこの先侯爵夫人として振舞うのであれば、自由を捨てなくてはならないと言う事を、真に理解していないのですね。
理解していなくとも、メリーが侯爵夫人になる事は、未来永劫ありませんけど…
私の願いが叶うかは分かりませんが、両親に…いえ。
国王陛下に進言できる機会が出来たのなら、メリーの事や侯爵家での事を全てお話して、孤児の引き取りを慎重にするように伝えなければと思いました。
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