騙された私も愚かでした

鈴蘭

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メリーが気になって仕方ありません

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 侯爵邸での茶会から戻った私は、どうしてもメリーの事が頭から離れず、お父様の執務室に来てしまいました。
 私の様子がおかしかったのでしょう、お父様が心配そうに問いかけて下さいました。
 「侯爵邸で、何かあったのかい」
 「いいえ…特には…何もありませんでした。何時もと変わりなく、過ごして参りました」
 「ハロルド小侯爵とは、上手く行っていないのかい」
 「そんな事はありません。彼はとても優しくて、私の事を大切にして下さっております。ただ…」
 「何か気になる事があるのだね、話してみなさい」
 「お父様。メリーは、何時迄屋敷に置いておくのでしょうか?最近ハロルド様への態度が気になって仕方がありませんの」
 「彼とメリーの仲を疑っているのかい?メリーはハロルド小侯爵に、求婚でもしたのかな」
 「その様な事は無いと思います。分かりませんけど…」
 「そうか。彼女には直ぐにでも屋敷から出て行って貰いたいと思ってはいるのだが、受け入れ先が無いのだ。すまないね、キャロライン。メリーは本当に、彼に何もしていないのかい」
 受け入れ先が無いのでしたら、この先も伯爵邸に残る可能性は大きいのでしょうね。
 「私が気にしているだけだと思うのですが…メリーは給仕が終わっても退室する事も無く、部屋に留まるのです。私が注意すると、ハロルド様が庇ってしまうので、それ以上は何も言えなくなってしまいます」
 お父様は、少し驚いたみたいです。
 「何故庇うのだ?侯爵邸では、メイドを茶会の席に置いているのかな」
 「いいえ。同席は認めていないと、ハロルド様は仰っておりました」
 暫しの沈黙があり、お父様は再び私に問いかけて来ました。
 「そうか…他にも何かありそうだね。話してみなさい」
 話して良いのか躊躇いはあったのですが、ハロルド様は私の夫になる方です。
 この先も家同士の付き合いがあるのですから、只の嫉妬として扱うべきでは無いと思い、お父様に報告する事にしました。
 「メリーが、ハロルド様を見つめているのです。ハロルド様がそれに気づいて、メリーと視線が合うと、お互い笑顔になるのです」
 お父様は少し考えてから、口を開きました。
 「彼は、女性に対して紳士的な青年だと、調べが付いている。今迄も、浮いた話は一切無いのだ。メリーは我が家の使用人だから、視線が合えば笑顔を作るだろうが…使用人が、主の婚約者を見ているのは、問題があるね。侯爵家へは、謝罪の手紙を出しておくから、キャロラインはメリーに行動を改める様に注意しておきなさい」
 「はい、お父様」
 「他には、気になる事はあるのかな」
 気になる事は沢山あったのですが、全ては些末な事、お父様に言う程の事ではありません。
 「いいえ、何もありません」
 「そうか。何か気になる事があるのなら、直ぐに知らせなさい」
 「はい、お父様。話を聞いてくださり、ありがとうございました」

 私はお辞儀をしてから、お父様の執務室を後にしました。
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