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王都編42 薄寂しい夕暮れ
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王都編42 薄寂しい夕暮れ
「……話を聞くと言ったのは私だがこうも連続で来られると鬱陶しいな」
ソファーの背凭れに身を預けながら溜め息を零す。ちらりと視線をやった外はもう陽が高い。
キーナン子爵と話を終えた俺は続けて数名と話をしたんだが、まあコイツらが保身ばかりで自分勝手に言い訳を並べるだけ。挙げ句の果てに賄賂まで積んでこようとするので丁重にお帰り願った次第である。
金程度で動くと思われているのが余計に腹立たしい。
最初に来てくれたのがキーナン子爵で本当に良かった。そうじゃなかったら早々に心が折れていたかもしれない。
来客もひと段落した所で食べそびれていた昼食を摂る。残念ながら今日はオルテガはいない。どうやら例の作戦の準備があるから来れないらしい。
食堂まで行くのも億劫だったからサンドイッチを用意して貰って執務室でもそもそ食べている。今日のサンドイッチはリクエストして酢漬けの野菜と豆のペーストが主役にして貰った。たまに食べたくなる組み合わせで、豆のペーストは地球でいうフムスのような味がする。ほの甘い豆の風味と酢の酸味が絶妙で、かつヘルシーなのでたまに食べたくなるのだ。
サンドイッチを食べてとりあえず腹を満たした所で人が途切れている間に通常業務をぶん回す。減りはしたものの仕事は待ってくれないからな。
ひたすら書類と業務を片付けつつ、合間にやってくる来客を対応していればあっという間に退勤時間だ。今日もオルテガが迎えに来るだろうと思っていたらなかなかやって来ない。
珍しい事もあるもんだと思いながら補佐官達を先に帰して残業していると三十分程してやっとオルテガがやってきた。仕事している俺をみて目を眇めるが、遅刻する方が悪い。
「遅かったな。何かあったのか?」
「遅れて悪かった。アールと手合わせをしていたんだ」
文句を言われる前に訊ねれば、楽しそうな一言が返ってきた。なにそれ俺も見たかったんだが!?
オルテガとグラシアールが仲良くなった切っ掛けの一騎討ちは伝説に残るとまで言われている程見事なものだったらしい。当時王都にいた「私」は伝聞でしか知らなくてひっそり残念に思っていたというのに。
「そして、うっかり盛り上がってしまって副官に叱られていた」
続けてしょんぼりするオルテガの様子に思い浮かべるのは彼の副官だ。
俺達より二つ程年上の彼はオルテガが騎士団に入った頃からお目付け役として、オルテガが役職についてからは副官としてオルテガを指導し、支えてきた。そんな経緯がある為か、オルテガは彼に頭が上がらない。王都に戻ってから暇を無理矢理作り出してはしょっちゅう俺の所に来ていたオルテガの耳を引っ張りながら連れ戻す様子は凄かった。
そんな副官に怒られていたのなら仕方ない。しかしだ、何で俺を呼んでくれなかったんだ!
「残念だ。呼んでくれれば良かったのに」
「見たかったのか?」
嬉しそうに訊ねてくる様子は大型犬が飼い主に対して尻尾を振っている様子に似ている。こういう所が可愛いんだよなぁ。
「見たかった。次やる時には必ず呼んでくれ」
「分かった」
柔らかく微笑みながら俺の左手に口付けを落とすとそのまま俺の手を引いて歩き出す。
俺とルファスだけが持っている鍵で戸締りをして向かうのは馬車留めだ。幾度か通る内にすっかり「俺」も見慣れてきた王城内は既に退勤した者も多いのか、夕闇の落ちる廊下は妙に静かで物悲しい。そんな廊下を二人で並んで歩いていると何だか夢でも見ているような気分になってくる。
最近、少しずつ「俺」と「私」の境界が薄れていっているような気がしていた。
元々「私」の記憶である筈の事柄がスムーズに出て来るし、最近はこの世界に対する驚きも減って来た。それに比例するように「俺」の記憶が薄れているような気がする。元からこの世界で生きてきたような感覚が強くなっているといえば良いんだろうか。
それでも、ふとした瞬間に疎外感を覚える瞬間があるのだ。今だってそうだ。
まるで長い泡沫。微睡みの中で見ている幸せな夢。いつかは弾けて消えてしまったら、きっと「俺」の手には何も残らない。
そうなった時、「俺」はどうするんだろうか。
自分では死んだと思ったが、実は意識だけこちらに来ていて、ある日突然目が覚めて石川真咲としての人生を取り戻す事になったら? …想像しただけで悲しくなる。
この世界で「俺」は知ってしまった。愛される事の温かさを。誰かを愛する尊さを。
日本にいる時の俺は全て諦めていた。いつだって自分は要らないもので、異分子。なるべく誰かに迷惑を掛けないように生きて来た。
親子や恋人を見て羨ましいと思った事は何度もある。でも、直ぐに諦めてしまった。その方がずっと楽だったから。
人が信じられなくなった切っ掛けは両親の死だったが、頑なになったのはもう少し後の事だったように思う。
何度目かのたらい回しで一年ほどお世話になったその家には俺と同い年の子と二つ下の子がいた。ここでも歓迎されていない事は分かっていたけれど、それでもその家の父親と母親は俺に優しくしてくれた。
両親を亡くして以来、クリスマスプレゼントを貰ったのはあの時だけだったと思う。
そして、あの家でクリスマスに貰ったゲーム機がその後の俺の人生を決めたようなものだった。
その家の子達と一緒に遊んで、夢中になって。大人になったらゲームを作ろうと独りになってから初めて将来の夢を持つ切っ掛けになった。
あの家の人達は本当に優しい人達で、一番安心して過ごせた場所だったように思う。だから、俺は気を抜いてしまった。
崩壊は一瞬だった。
一度だけ、その家の母親を「お母さん」と呼んでしまった。手伝いをしている中で自然に零れ落ちた言葉で、とても気恥ずかしかったのだけは覚えている。しかし、それだけあの家は俺にとって安心出来る場所だったのだ。
でも、次の瞬間に現実を突き付けられた。
「お前のお母さんじゃない!」
下の子のそんな叫びに、俺は自分の立場を思い出す。そうだ、俺はこの家では異分子だ。
どんなに馴染んだと思っても完全に同化する事は難しい。
その後の事を、薄れてしまった記憶ではもうあまり覚えていない。忘れたかったからかもしれない。ただ悲しくて寂しくて堪らなかった。
その一件から俺は彼等から距離を取るようになり、少しずつ歩み寄っていた関係はギクシャクしてしまった。一緒にゲームで遊ぶ事も無くなり、それから少しして俺は別の家に行く事になった。
それ以降はどの家にも馴染めず、短期間で居場所が変わり続けた。拒絶されるのが怖くてどうしても歩み寄れなかったから。
初めのうちは事故で死んでしまった両親を恨んだりもした。どうして一緒に連れて行ってくれなかったのかと。
「俺」の両親はごく普通のサラリーマンである父親と介護士をしている母親だった。
どの家庭でも共働きなんて珍しくもなくて、家に俺以外誰もいない時間も多かったけれど、それでも優しい両親だった…と思う。
ある大雨の日、二人は事故に遭って二度と帰って来なかった。
その日は本当に酷い雨で、母が父を駅まで車で迎えに行ったのだ。その帰り道に信号無視した車に突っ込まれて二人ともいなくなって…。
水害警報も出ているからと俺は独りで家に置いていかれた。本当は怖くて一緒に行きたかったけれど、時間も遅いからもう寝なさいと言われてはついて行けなくて。布団に入った俺の頭を撫でてくれた母親の手の感触が、家族の最期の思い出だ。
時折思い出してはいつも思っていた。
どうして俺も一緒に連れて行ってくれなかったのか、と…。
「リア?」
名を呼ばれてはっと我に返る。同時に熱い手が俺の頬に触れた。
驚いて見遣れば、オルテガがこちらを見ている。その黄昏色の瞳は何故か悲しげだ。
「どうしたんだ、そんな顔をして」
「それは此方の台詞だ」
そんな酷い顔をしていたんだろうか。
最近、上手く「俺」の感情がコントロール出来なくなる時がある。今だってそうだ。胸の内に渦巻く侘しさが出口を求めて暴れている。
「俺」として泣いて叫んで吐き出せれば良いのだろうか。でも、「俺」にそんな事をする権利はない。
この世界の何もかもが「私」からの借り物で、いつか「私」に返さなければならない。いつか来るその日まで、「俺」は「私」として生きなければ。
答えに窮していれば、そっと抱き締められた。頬に触れる温もりも包んでくれる体も、全部ぜんぶ大好きだ。
こうやって愛おしさを噛み締める度に生まれて初めて誰かを愛しているのだと思う。
ここは王城の廊下だ。誰かが通り掛かるかもしれない。いつもなら突き飛ばしてでも拒否したかもしれないが、今は離れ難くて。
「……近頃、時折お前がどうしようもなく寂しそうに見える」
抱き締めてくれる腕の中で息を呑む。嗚呼、駄目だ。お願いだから気が付かないでくれ。
まだお前に別れを告げる覚悟が出来ていない。出来る事なら気が付かれないままが良い。例えそれが「俺」の我儘だとしても。
「……領地ではずっと一緒だったからな。お前と離れて過ごす事が寂しいんだ」
誤魔化しを口にしながら彼の騎士団の制服に顔を埋めた。嗅ぎ慣れた少し甘い匂い。今はグラシアールとの手合わせしたせいか汗の匂いが混じっている。
セイアッドの足元を固めるまではまだ掛かる。せめて、ミナルチークを仕留めるまでは待って欲しい。そこから先の事ならきっと「私」だけでも上手くやれる筈だ。だから、それまでは。
この温かな夢よ、どうか醒めないでくれ。
「……話を聞くと言ったのは私だがこうも連続で来られると鬱陶しいな」
ソファーの背凭れに身を預けながら溜め息を零す。ちらりと視線をやった外はもう陽が高い。
キーナン子爵と話を終えた俺は続けて数名と話をしたんだが、まあコイツらが保身ばかりで自分勝手に言い訳を並べるだけ。挙げ句の果てに賄賂まで積んでこようとするので丁重にお帰り願った次第である。
金程度で動くと思われているのが余計に腹立たしい。
最初に来てくれたのがキーナン子爵で本当に良かった。そうじゃなかったら早々に心が折れていたかもしれない。
来客もひと段落した所で食べそびれていた昼食を摂る。残念ながら今日はオルテガはいない。どうやら例の作戦の準備があるから来れないらしい。
食堂まで行くのも億劫だったからサンドイッチを用意して貰って執務室でもそもそ食べている。今日のサンドイッチはリクエストして酢漬けの野菜と豆のペーストが主役にして貰った。たまに食べたくなる組み合わせで、豆のペーストは地球でいうフムスのような味がする。ほの甘い豆の風味と酢の酸味が絶妙で、かつヘルシーなのでたまに食べたくなるのだ。
サンドイッチを食べてとりあえず腹を満たした所で人が途切れている間に通常業務をぶん回す。減りはしたものの仕事は待ってくれないからな。
ひたすら書類と業務を片付けつつ、合間にやってくる来客を対応していればあっという間に退勤時間だ。今日もオルテガが迎えに来るだろうと思っていたらなかなかやって来ない。
珍しい事もあるもんだと思いながら補佐官達を先に帰して残業していると三十分程してやっとオルテガがやってきた。仕事している俺をみて目を眇めるが、遅刻する方が悪い。
「遅かったな。何かあったのか?」
「遅れて悪かった。アールと手合わせをしていたんだ」
文句を言われる前に訊ねれば、楽しそうな一言が返ってきた。なにそれ俺も見たかったんだが!?
オルテガとグラシアールが仲良くなった切っ掛けの一騎討ちは伝説に残るとまで言われている程見事なものだったらしい。当時王都にいた「私」は伝聞でしか知らなくてひっそり残念に思っていたというのに。
「そして、うっかり盛り上がってしまって副官に叱られていた」
続けてしょんぼりするオルテガの様子に思い浮かべるのは彼の副官だ。
俺達より二つ程年上の彼はオルテガが騎士団に入った頃からお目付け役として、オルテガが役職についてからは副官としてオルテガを指導し、支えてきた。そんな経緯がある為か、オルテガは彼に頭が上がらない。王都に戻ってから暇を無理矢理作り出してはしょっちゅう俺の所に来ていたオルテガの耳を引っ張りながら連れ戻す様子は凄かった。
そんな副官に怒られていたのなら仕方ない。しかしだ、何で俺を呼んでくれなかったんだ!
「残念だ。呼んでくれれば良かったのに」
「見たかったのか?」
嬉しそうに訊ねてくる様子は大型犬が飼い主に対して尻尾を振っている様子に似ている。こういう所が可愛いんだよなぁ。
「見たかった。次やる時には必ず呼んでくれ」
「分かった」
柔らかく微笑みながら俺の左手に口付けを落とすとそのまま俺の手を引いて歩き出す。
俺とルファスだけが持っている鍵で戸締りをして向かうのは馬車留めだ。幾度か通る内にすっかり「俺」も見慣れてきた王城内は既に退勤した者も多いのか、夕闇の落ちる廊下は妙に静かで物悲しい。そんな廊下を二人で並んで歩いていると何だか夢でも見ているような気分になってくる。
最近、少しずつ「俺」と「私」の境界が薄れていっているような気がしていた。
元々「私」の記憶である筈の事柄がスムーズに出て来るし、最近はこの世界に対する驚きも減って来た。それに比例するように「俺」の記憶が薄れているような気がする。元からこの世界で生きてきたような感覚が強くなっているといえば良いんだろうか。
それでも、ふとした瞬間に疎外感を覚える瞬間があるのだ。今だってそうだ。
まるで長い泡沫。微睡みの中で見ている幸せな夢。いつかは弾けて消えてしまったら、きっと「俺」の手には何も残らない。
そうなった時、「俺」はどうするんだろうか。
自分では死んだと思ったが、実は意識だけこちらに来ていて、ある日突然目が覚めて石川真咲としての人生を取り戻す事になったら? …想像しただけで悲しくなる。
この世界で「俺」は知ってしまった。愛される事の温かさを。誰かを愛する尊さを。
日本にいる時の俺は全て諦めていた。いつだって自分は要らないもので、異分子。なるべく誰かに迷惑を掛けないように生きて来た。
親子や恋人を見て羨ましいと思った事は何度もある。でも、直ぐに諦めてしまった。その方がずっと楽だったから。
人が信じられなくなった切っ掛けは両親の死だったが、頑なになったのはもう少し後の事だったように思う。
何度目かのたらい回しで一年ほどお世話になったその家には俺と同い年の子と二つ下の子がいた。ここでも歓迎されていない事は分かっていたけれど、それでもその家の父親と母親は俺に優しくしてくれた。
両親を亡くして以来、クリスマスプレゼントを貰ったのはあの時だけだったと思う。
そして、あの家でクリスマスに貰ったゲーム機がその後の俺の人生を決めたようなものだった。
その家の子達と一緒に遊んで、夢中になって。大人になったらゲームを作ろうと独りになってから初めて将来の夢を持つ切っ掛けになった。
あの家の人達は本当に優しい人達で、一番安心して過ごせた場所だったように思う。だから、俺は気を抜いてしまった。
崩壊は一瞬だった。
一度だけ、その家の母親を「お母さん」と呼んでしまった。手伝いをしている中で自然に零れ落ちた言葉で、とても気恥ずかしかったのだけは覚えている。しかし、それだけあの家は俺にとって安心出来る場所だったのだ。
でも、次の瞬間に現実を突き付けられた。
「お前のお母さんじゃない!」
下の子のそんな叫びに、俺は自分の立場を思い出す。そうだ、俺はこの家では異分子だ。
どんなに馴染んだと思っても完全に同化する事は難しい。
その後の事を、薄れてしまった記憶ではもうあまり覚えていない。忘れたかったからかもしれない。ただ悲しくて寂しくて堪らなかった。
その一件から俺は彼等から距離を取るようになり、少しずつ歩み寄っていた関係はギクシャクしてしまった。一緒にゲームで遊ぶ事も無くなり、それから少しして俺は別の家に行く事になった。
それ以降はどの家にも馴染めず、短期間で居場所が変わり続けた。拒絶されるのが怖くてどうしても歩み寄れなかったから。
初めのうちは事故で死んでしまった両親を恨んだりもした。どうして一緒に連れて行ってくれなかったのかと。
「俺」の両親はごく普通のサラリーマンである父親と介護士をしている母親だった。
どの家庭でも共働きなんて珍しくもなくて、家に俺以外誰もいない時間も多かったけれど、それでも優しい両親だった…と思う。
ある大雨の日、二人は事故に遭って二度と帰って来なかった。
その日は本当に酷い雨で、母が父を駅まで車で迎えに行ったのだ。その帰り道に信号無視した車に突っ込まれて二人ともいなくなって…。
水害警報も出ているからと俺は独りで家に置いていかれた。本当は怖くて一緒に行きたかったけれど、時間も遅いからもう寝なさいと言われてはついて行けなくて。布団に入った俺の頭を撫でてくれた母親の手の感触が、家族の最期の思い出だ。
時折思い出してはいつも思っていた。
どうして俺も一緒に連れて行ってくれなかったのか、と…。
「リア?」
名を呼ばれてはっと我に返る。同時に熱い手が俺の頬に触れた。
驚いて見遣れば、オルテガがこちらを見ている。その黄昏色の瞳は何故か悲しげだ。
「どうしたんだ、そんな顔をして」
「それは此方の台詞だ」
そんな酷い顔をしていたんだろうか。
最近、上手く「俺」の感情がコントロール出来なくなる時がある。今だってそうだ。胸の内に渦巻く侘しさが出口を求めて暴れている。
「俺」として泣いて叫んで吐き出せれば良いのだろうか。でも、「俺」にそんな事をする権利はない。
この世界の何もかもが「私」からの借り物で、いつか「私」に返さなければならない。いつか来るその日まで、「俺」は「私」として生きなければ。
答えに窮していれば、そっと抱き締められた。頬に触れる温もりも包んでくれる体も、全部ぜんぶ大好きだ。
こうやって愛おしさを噛み締める度に生まれて初めて誰かを愛しているのだと思う。
ここは王城の廊下だ。誰かが通り掛かるかもしれない。いつもなら突き飛ばしてでも拒否したかもしれないが、今は離れ難くて。
「……近頃、時折お前がどうしようもなく寂しそうに見える」
抱き締めてくれる腕の中で息を呑む。嗚呼、駄目だ。お願いだから気が付かないでくれ。
まだお前に別れを告げる覚悟が出来ていない。出来る事なら気が付かれないままが良い。例えそれが「俺」の我儘だとしても。
「……領地ではずっと一緒だったからな。お前と離れて過ごす事が寂しいんだ」
誤魔化しを口にしながら彼の騎士団の制服に顔を埋めた。嗅ぎ慣れた少し甘い匂い。今はグラシアールとの手合わせしたせいか汗の匂いが混じっている。
セイアッドの足元を固めるまではまだ掛かる。せめて、ミナルチークを仕留めるまでは待って欲しい。そこから先の事ならきっと「私」だけでも上手くやれる筈だ。だから、それまでは。
この温かな夢よ、どうか醒めないでくれ。
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