桜の鬼【完】

桜月真澄

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終 鬼の花嫁

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「今日から、よろしくお願いします」

「こちらこそ、悟様」

頭を下げた悟に、湖雪は着物が乱れないように会釈した。

「おいこら悟」

不機嫌丸出しな声で現れたのは、袴姿の惣一郎だった。

「弟の嫁さん口説くなよ」

湖雪と悟の間に無理矢理割って入った惣一郎を見て、手を引いていた早子は小さく噴き出した。

「義妹になるんだから、挨拶くらいさせろ」

「駄目だ。もう湖雪を見るな」

惣一郎は湖雪を隠すように立ちはだかった。仲のいい兄弟だが、湖雪のこととなると引かない惣一郎に、それが面白い悟。三人が今日から義理とはいえ兄弟になるのだ。策略謀略の桜に呪われた一族には似つかわしくないが、微笑ましい光景である。

「悟さんは、またお見合いを断ったそうですね?」

一方的に睨みつける惣一郎と、くすくす笑っている悟に、早子が声をかけた。

「ええ、まあ。私も惣一郎が羨ましくなってしまいまして」

「でも……湖雪は無理よ?」

「まさか。湖雪様を、などと言ったら惣一郎に亡きものにされてしまいますよ。意味は、そのままの意味です」

「そのまま……そう。がんばってくださいね」

早子は悟に微笑みかけた。

そのまま――惣一郎のように、愛した人と結婚すること。

「惣一郎様、湖雪様、御準備が調いましてございます」

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