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六 桜の命の終わり
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しおりを挟む惣一郎は心細そうな表情になる。悟はここに来て惣一郎にしか向けない瞳でまた弟を見つめる羽目になった。虹琳寺惣一郎とは、優秀すぎる者ゆえの傲顔不遜で、他人に執着などしない人間性だった。夏桜院には自分から婚約の決定を頼みこんだり、同居を始めてしまったり、しかしどうせ、相手を上手く手籠に出来て夏桜院を乗っ取る腹積もりなのだろうと邪推していた悟だった。なのだけれど……
「……惣一郎。お前本当に湖雪様のことを……?」
想っていると? さっき、そう言ったよな……? 悟は信じられない気持ちで訊いた。
……惣一郎は俯いた。
「……ああ」
「本当なのかよ……」
僅かに耳を赤らめる惣一郎を見て、悟は息を吐いた。これは……俺は相当非道いことをしてしまっているんじゃないか? 惣一郎にすがりついた湖雪。湖雪のために当主に噛みついた弟。……この二人は、策略結婚だったのに、本当に――……
「惣一郎。湖雪様のところに行って差し上げなさい」
「……は? 俺は今湖雪に近づいては」
「行って来い。ここは俺が何とかするから、彼女、俺が何だかもわかっていないだろ? 行って来い。兄の命令だ」
「悟……。お前その言い方似合わない」
「……わかっているよ。俺は誰かの上に立つ人間じゃない」
「ああ、でも――俺は虹琳寺の跡取りはお前だと信じて疑わない」
その台詞を残し、惣一郎は立ち上がった。その背中に不穏な影を見た悟は、中腰になって惣一郎を呼びとめた。
「惣、お前、」
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