桜の鬼【完】

桜月真澄

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五 母の名

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「惣一郎様……」

「うん? どうした?」

「は……恥ずかしいのですが……」

「俺は恥ずかしくないよ?」

「私は恥ずかしいです……」

「ん~、恥ずかしがる湖雪が可愛いからもっと見たい」

「!!!」

「顔真っ赤だ」

「……のせいです」

「誰の所為?」

「惣一郎様の……」

「湖雪、嬉しすぎる」

ぎゅうっと一層強く抱きしめられる。

――母が幹人の妹とは、湖雪はまったく知らなかった。

先代が産ませた子、というのならば、幹人の異母妹になる。

湖雪が初めてこの家に来た日、母に罵声を浴びせたのは当時存命だった幹人の母……先代の正妻だ。おそらくだが、母が幹人の異母妹だと知っての態度だったのだろう。

そんな湖雪を夏桜院の跡取りとして引き取るなんて、幹人は批難を受けるかもしれない決断をするなんて……。

実際、幹人には外に妾が複数いる。その相手の間に、何人か子供がいることも周知の事実だ。なのに、なぜ幹人は自身の子ではなく、妹の子供――姪を跡取りとして引き取ったのだろう……。

わかったことがあって、またわからないことが増えてしまった。

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