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偶然7 side作之助

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「そういうわけなんだけど……やぱり嫌かな?」

水都さんが困った顔で見上げてくる。

「………」

俺が嫌というよりは水都さんの父様が嫌なんじゃないかなって思ったんだけど……ここまで言われたら肯いていいんだろうか……。

「ちょっと待って。由羽に訊いてみる」

「突然の由羽くん!?」

立ち止まり、カバンからスマホを取り出して由羽にメッセージを送る。

水都さんはそれを不思議そうな顔で見て来た。

「なんで由羽くん?」

「あ、総真みたいには怒らないんだ?」

メッセージを送り終わったのでホーム画面に戻して水都さんに視線を向ける。

水都さんはきょとんとしていて、総真に向けたような感情は見えない。

「由羽くんはわたしも頼りにしてるお兄ちゃんだから、作之助が頼りたくなるのもわかるなーって思って。でもなんでうちに来ることを由羽くんに訊くの?」

「由羽なら水都さんの父様を客観的に見てるだろうし、男目線での意見がほしくて」

「な、なるほど……。由羽くんならバッチリ答えてくれそう。……作之助は学内に男友達作る気はないの?」

……学内に、か。今のところ男友達は玲哉の紹介で知り合った由羽と総真だけだ。

「今はまだ……難しいかな」

「どうして?」

「俺がヤンキー扱いされてるからだよ。友達が出来たら、俺を恨んでる奴に人質にされたりする危険性がある。そういうのに巻き込みたくないしね」

「そうなんだ。……露季ちゃんと快理ちゃんはわたしが守るからね!」

「うん、そこは頼りにしてる。水都さん強いし。でも本当に危ないときは俺に言ってね? 俺が対処した方がいいときもあるだろうし」

本当なら水都さんや山手さんたちも危険に遭わせないために俺と近づかない方が……とか、今更でも思うけど、もう友達だから仕方ない。

友達辞めたくもないし。あとはどう対処していくかだ。

「水都さんの周りってみんな武道やってるの?」

「わたしと総真くんは羽咲ちゃんと由羽くんに教えてもらった程度で正しく習ってはいないないんだけど、景くんとなゆちゃんは習ってたよ。玲くんは総真くんの付き添い程度」

「………けいくんとなゆちゃん?」

また登場人物が増えた。

「あ、羽咲ちゃんたちの……イトコ? 景くんとなゆちゃん同士もイトコ。由羽くんたちと同い年だよ」

………なんか今、疑問形じゃなかったか? 深くは突っ込まないけど……それなら今後逢うかもしれないな。

「由羽くんから返事来た?」

「あ、見てなかった」

足を停めて、手にしたままだったスマホに目をやる。

………。

「………」

「由羽くん、なんて?」

「……『巽さんは善人百パーセントだから怒ったところを見たことない。大丈夫だと思う』……って」

由羽に背中を押されてしまった……。断わるとっかかりがなくなってしまった……。

悩む俺とは反対に、水都さんはぱあっと顔を輝かせた。

「作之助的には来る気になった?」

「………」

ん~~~、断わった方がいいんだろうなあとも思うんだけど、断わりに使える理由が……なんて言えばいいんだろう……。

男がいきなり来て、はもう言ったし、山手さんたちを先に、ももう言った……。

「……じゃあ、ご挨拶するだけ……なら……」

「うん! 少しでも来てくれたら嬉しいっ」

由羽に背中を押されては、仕方ない感が出て来る。

俺の返事に水都さんはすごく嬉しそうな顔を見せる。

水都さんの父様を怒らせないかは不安だけど、水都さんを悲しませるのも難だし……。

うん、よかったってことにしておこう。そんで友達ですって挨拶したらとっとと帰ろう。

ウキウキした様子の水都さんの隣でそんなことを考えながらの帰路。

水都さんが今日一緒に帰ろうって言った目的はこれか、と今更ながら気づいた。

―――そして日曜日。水都さんに呼ばれている日。

友達の家に行くために、スマホで事前調査をして手土産なるものを用意してみた。

服装は悩んだ末いくつか組み合わせを写真に撮って送って、由羽に決めてもらった。

玲哉とはまた違った頼りがいが由羽にはある。

水都さんの家は何度も送っていっているから迷う心配はないとして未だに心配なのは、娘の高校での初めての友達が野郎だったと知った時の水都さんの父様の反応……。

~~~ああもう考えてもどうしようもないことだ。一度置いておこう。

頭(かぶり)をひとつ振って、家のドアを開けた。

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