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発覚4 side水都
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「みなさんと道が分かれるまではご一緒してもいいかな?」
「も、もちろんですっ」
「私たちは駅に向かいます。電車通学なんで」
「あら、じゃあもうすぐでお別れね。そうだ。よかったら今度うちにも遊びに来てね。水都のお友達だったら大歓迎だから」
「あ、ありがとうございますっ」
「ぜひ今度」
母様と露季ちゃんと快理ちゃんが先を歩く。
話に花が咲いているようだ。
母様は羽咲ちゃんのお母様が大好きで、父様以外だったら女の子の方が好きって公言されるような方だから嬉しいんだろう。
一方、わたしの隣を歩く作之助は空気が重い。
もうここまで来たら腹をくくればいいものを。
「作之助。母様と落ち合うことを黙っていたのは悪かったですが、そろそろ堂々としてくださいよ」
母様がいるってわかったら、作之助は絶対に一緒に帰ってくれないと思って話さないでいた。
わたしの言葉を聞いた作之助は、じとっとした目で見て来る。
「水都さんってなんでそうなの」
? そう、とは?
「どういう意味ですか?」
「なんていうかこう……内弁慶」
「内弁慶」
言い得て妙だ。思わず反芻してしまった。
作之助は大きく肯きながら話す。
「親しくない人には滅茶苦茶怯えるのに、一度距離が近づいたら遠慮なし」
「否定はできませんね」
そう言われたら、ユイなんかは距離が近づいた人なんだろう。
自分の過去とか、作之助に話したことを思い返す。
「人との距離感がわかんないんですよ。幼馴染が多いってのは話したと思いますけど、家族ごと仲いい人たちだから、普通の友達はそれとどう違うのか、とか」
「ああ……」
……半眼になる作之助。なんだかすごく納得されている気がします。
「そういうわたしに付き合ってくれる友達がいるのか、わたしのそういうところに呆れて友達が離れたりして、自分が変わることを選ぶのか……まだまだわからないですけど」
「……うん。いんじゃない? それで」
作之助は静かに肯きました。
「……あれ? ってことはわたしの最初の友達は作之助じゃなくてユイになる……?」
ユイのことは、羽咲ちゃん目当てでわたしはオマケと思っていたけど、連絡先とか知ってるし、逢おうと思えば逢える存在だ。
「……誰、ユイって」
うん? 作之助、声が低くないですか?
「中学のときのクラスメイトです。高校は別になりましたけど、まあ仲良かったのかな……?」
疑問符はつくけど、友達だと言えばそうかもしれない。
「ユイ……結とか優衣か……?」
作之助がぶつぶつ言いだしました。だから声低いよ。
「作之助――」
「水都ちゃん! 私たちここで分かれるんだ」
あ、そう言えば二人は駅の方へ行くって言っていたっけ。作之助に気を取られて露季ちゃんと快理ちゃんと話すチャンスを逃してしまった!
「あ………」
えーと、なんて言えばいいんだっけ……こういうときってぇええ~っ。
「水都ちゃん、また明日ね!」
「またねー」
「あ、また……」
大きく手を振ってくれる露季ちゃんと、軽めに手を動かしている快理ちゃんに向けて、わたしも手を振り返した。
そっか……これでよかったんだ……。
中学のときに羽咲ちゃんとバイバイしていたときのことを思い出す。
あのときと同じでよかったんだ。なんかヘンに気負いすぎていたかも。
「作之助くん背ぇ高いね。総真より高いんじゃないかな。ね、水都」
「あ、うんっ」
露季ちゃんと快理ちゃんを見送っていると、母様が作之助に話しかけていた。
「そうまって……」
作之助が困った顔をしている。助け船出さないと。
「わたしの幼馴染の一人。二つ年上ですよ」
「水都さん、幼馴多いそうですね」
「そうなの。わたしたちの中学とか高校からの友達の子供たちが、みんな年齢近くて」
今度はわたしを挟んで、両隣に母様と作之助がいる形で歩き出す。
「あの、一応家まで送らせてください。もう暗くなりますから」
作之助って玲くんの言う通り紳士だなあ。
母様は軽く目を瞠ったけど、「ありがとう」と応じた。
「作之助くんって名前カッコいいね。水都のお父さんも巽って名前で古風だから、気が合うかもね」
母様がウキウキした様子で話す。作之助は落ち着いた態度だ。
「巽さんって言うんですね」
「父様が巽で母様が琴だから、私の名前は一文字ずつもらってるんです」
それで、『水都』だ。わたしの宝物のひとつ。
「そうなんですね」
軽く肯きながら答える作之助。
母様がいる手前だろう、敬語だ。
今日はいろいろあったなあ。作之助が突撃してきて、なんと友達が出来て! 羽咲ちゃんのいない高校生活は悲観していたけど、それほど悪くないかもしれない。
ヤンキーを目指すのを辞めるかどうかは、要思案だ。
とりあええず今は、母様と作之助がいるこの楽しい時間を堪能しよう!
「も、もちろんですっ」
「私たちは駅に向かいます。電車通学なんで」
「あら、じゃあもうすぐでお別れね。そうだ。よかったら今度うちにも遊びに来てね。水都のお友達だったら大歓迎だから」
「あ、ありがとうございますっ」
「ぜひ今度」
母様と露季ちゃんと快理ちゃんが先を歩く。
話に花が咲いているようだ。
母様は羽咲ちゃんのお母様が大好きで、父様以外だったら女の子の方が好きって公言されるような方だから嬉しいんだろう。
一方、わたしの隣を歩く作之助は空気が重い。
もうここまで来たら腹をくくればいいものを。
「作之助。母様と落ち合うことを黙っていたのは悪かったですが、そろそろ堂々としてくださいよ」
母様がいるってわかったら、作之助は絶対に一緒に帰ってくれないと思って話さないでいた。
わたしの言葉を聞いた作之助は、じとっとした目で見て来る。
「水都さんってなんでそうなの」
? そう、とは?
「どういう意味ですか?」
「なんていうかこう……内弁慶」
「内弁慶」
言い得て妙だ。思わず反芻してしまった。
作之助は大きく肯きながら話す。
「親しくない人には滅茶苦茶怯えるのに、一度距離が近づいたら遠慮なし」
「否定はできませんね」
そう言われたら、ユイなんかは距離が近づいた人なんだろう。
自分の過去とか、作之助に話したことを思い返す。
「人との距離感がわかんないんですよ。幼馴染が多いってのは話したと思いますけど、家族ごと仲いい人たちだから、普通の友達はそれとどう違うのか、とか」
「ああ……」
……半眼になる作之助。なんだかすごく納得されている気がします。
「そういうわたしに付き合ってくれる友達がいるのか、わたしのそういうところに呆れて友達が離れたりして、自分が変わることを選ぶのか……まだまだわからないですけど」
「……うん。いんじゃない? それで」
作之助は静かに肯きました。
「……あれ? ってことはわたしの最初の友達は作之助じゃなくてユイになる……?」
ユイのことは、羽咲ちゃん目当てでわたしはオマケと思っていたけど、連絡先とか知ってるし、逢おうと思えば逢える存在だ。
「……誰、ユイって」
うん? 作之助、声が低くないですか?
「中学のときのクラスメイトです。高校は別になりましたけど、まあ仲良かったのかな……?」
疑問符はつくけど、友達だと言えばそうかもしれない。
「ユイ……結とか優衣か……?」
作之助がぶつぶつ言いだしました。だから声低いよ。
「作之助――」
「水都ちゃん! 私たちここで分かれるんだ」
あ、そう言えば二人は駅の方へ行くって言っていたっけ。作之助に気を取られて露季ちゃんと快理ちゃんと話すチャンスを逃してしまった!
「あ………」
えーと、なんて言えばいいんだっけ……こういうときってぇええ~っ。
「水都ちゃん、また明日ね!」
「またねー」
「あ、また……」
大きく手を振ってくれる露季ちゃんと、軽めに手を動かしている快理ちゃんに向けて、わたしも手を振り返した。
そっか……これでよかったんだ……。
中学のときに羽咲ちゃんとバイバイしていたときのことを思い出す。
あのときと同じでよかったんだ。なんかヘンに気負いすぎていたかも。
「作之助くん背ぇ高いね。総真より高いんじゃないかな。ね、水都」
「あ、うんっ」
露季ちゃんと快理ちゃんを見送っていると、母様が作之助に話しかけていた。
「そうまって……」
作之助が困った顔をしている。助け船出さないと。
「わたしの幼馴染の一人。二つ年上ですよ」
「水都さん、幼馴多いそうですね」
「そうなの。わたしたちの中学とか高校からの友達の子供たちが、みんな年齢近くて」
今度はわたしを挟んで、両隣に母様と作之助がいる形で歩き出す。
「あの、一応家まで送らせてください。もう暗くなりますから」
作之助って玲くんの言う通り紳士だなあ。
母様は軽く目を瞠ったけど、「ありがとう」と応じた。
「作之助くんって名前カッコいいね。水都のお父さんも巽って名前で古風だから、気が合うかもね」
母様がウキウキした様子で話す。作之助は落ち着いた態度だ。
「巽さんって言うんですね」
「父様が巽で母様が琴だから、私の名前は一文字ずつもらってるんです」
それで、『水都』だ。わたしの宝物のひとつ。
「そうなんですね」
軽く肯きながら答える作之助。
母様がいる手前だろう、敬語だ。
今日はいろいろあったなあ。作之助が突撃してきて、なんと友達が出来て! 羽咲ちゃんのいない高校生活は悲観していたけど、それほど悪くないかもしれない。
ヤンキーを目指すのを辞めるかどうかは、要思案だ。
とりあええず今は、母様と作之助がいるこの楽しい時間を堪能しよう!
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