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3 動き出す当主

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頭がピリピリしていたけれど、白桜は二人と話して一気に和んだ気がする。

「小田切と月音も……」

言いかけて、白桜は口をつぐんだ。

目の前の二人には、陰陽師のまじないは必要ないだろうと思ったからだ。

煌と月音は、運命も自分たちでつかんでいくだろう。

「ありがとう。二人のおかげで気が晴れたよ」

「そ、そうですか? お役に立ててよかったですっ」

「うん、二人は俺の元気の素だな」

「そこまで言われると恥ずかしいけど……」

「そう言わずに。これからも二人のほのぼので元気をくれたら嬉しい」

「はいっ! たくさんほのぼのしますっ」

「強制的にしてたらほのぼのしなくね?」

「はっ、それもそうだっ」

相変わらず漫才のようなやり取りをする煌と月音。

そして二人とも素直だから、見ていて楽しいし和むのだ。

ふたりのことは黒藤もお気に入りで、百合緋も月音が大好きだ。

想い合う人と許嫁になれたふたりを羨ましいと思う。

……本当に袋小路だ。


+++


真っ青な顔をした少女を前にして、白桜は考えていた。

彼女は作夜見冬湖(つくよみ とうこ)という。

つい先刻、御門別邸の門前に倒れていた少女だ。

黒藤の式、涙雨とともに。

「本当に……憶えていないと?」

「は、はい……ももも、申し訳ありません、御門様……」

白桜を前にして、完全に委縮してしまっている冬湖。

作夜見の家の者ということが本当なら、月御門家は作夜見から見て格上の家になる。

それも相まって緊張しているようだ。

行き倒れていたなんてことだけでも相当なことなのに、それが御門の門前とは。

――ついさっき、白桜は華樹から女性と涙雨が倒れていたことを知らされた。

発見した華樹たちによって、すぐさま邸内に運び込まれたとのことだ。

白桜の結界に入れた時点で、御門に対してわかりやすいほどの害意はないと考えられる。

涙雨が一緒に倒れていたことで、華樹たちは救急車を呼ぶのではなく白桜を頼ることにしたとのこと。

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