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5 ご挨拶
side真紅10
しおりを挟む「逆を言えば三人とも、馨さんの言うことだけは聞いていた。今は誠さんが大分落ち着いたけど、常識人だったから、馨さん」
「……なんか、大変さがよくわかるよ……」
「家の人たちは馨さんのことは、弥生さんの同級生程度でしか知らない」
「じゃあ……本当に母さんやとうさ――、…………」
恐らく誠さんのことをそう呼びかけて、架くんは声を詰まらせた。
「架。誠さんは、馨さんの分もお前を育てたかったんだ。嫌じゃなければ、そう呼んでやれ」
「………うん」
架くんは俯き気味に肯いた。
「……母さんも父さんも、美愛さんも……俺の所為で複雑にしちゃったんだね……」
「それは違う」
声にしたのは、私だった。
架くんの顔がそっとあがる。
黎も、自分の隣に収まっていた私を見て来た。
「架くんを失いたくない人たちだったから、今までそうして生きて来ただけだよ。誰かのために生きることはあっても、誰かの所為で生きることはない」
立ち上がり、架くんの前に両膝をついた。
「架くん。私と一緒に、斎陵学園に来て」
「―――」
架くんは目を見開いた。まさか私からそんなことを言われるとは思っていなかったのだろう。
「架くんは、桜城の跡継ぎだよ。桜城は影小路と関わりがある。私は、影小路の名前になった。――影小路(私たち)が護るべきものを、一緒に護って」
架くんに向けて、右手を差し出した。
「架くんの立場で、私たちと一緒にたたかって」
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