上 下
19 / 83
2 当代最高峰の陰陽師

しおりを挟む

「え……?」

その少女をまじまじと見る美也。

初めて見る人だ。

このあたりの学校の制服ではない。

美也より少し身長は低くて、長い髪はハーフアップに結われている。

白磁の肌と瞳の大きな穏やかな顔つき。

美少女、そんな言葉が似合う人だった。

「あなた、あの方の巫女様ですよね?」

「………はっ?」

美也は素っ頓狂な声が出た。

思わず、自分以外にかけられた言葉かもしれないと辺りをきょろきょろした。

しかし、美也のすぐ近くには誰もいないし、小柄な女性は美也の目の前にいて美也を見ている。

ばっちり目が合ってしまった。

ふわっとほほ笑む少女。

「いきなりごめんなさい。わたし、月御門(つきみかど)家に居候している、水旧百合緋(みなもと ゆりひ)といいます」

百合緋と名乗る少女は、体の前で手を組んで軽く頭を下げた。

美也も頭を下げたが、名乗っていいものかは悩んで、結局「はあ……」とだけ答えた。

水旧百合緋というその名前も、月御門という名前も、美也は初めて聞いた。

「あの……どこかでお逢いしましたっけ……?」

「いえ、初対面です。ちょっとあなたに用事あるって子に呼ばれて来たんですけど……ああ、早く帰らないといけないんですね? では、また日を改めます」

「え……」

早く帰らないといけないなんて、美也は口にしていない。どこからの情報だ?

美也が考え込んでいると、少女は更に言葉を続けた。

「……もしかして今、榊様のことで悩んでおられます?」

百合緋がずばり言い当ててきた。

どきっとした美也は、それが顔に出てしまったことがわかった。

今、榊の名前を出した……?

「そうですよね、色々と大変ですよね」

百合緋は、頬に手をあてて困ったように言う。

ひとつひとつの行動が、まるでファッション雑誌のモデルのようである。

「あの……?」

「もしよろしかったら、お時間のあるとき月御門の家に来てくださいませんか?」

「え……?」

美也が驚いた反応をすると、百合緋は自分の胸に手を当てた。

「今かかえていらっしゃること、解決できると思います。あっ、怪しいものじゃないですからね? 変な勧誘とか宗教じゃないですから。えーと……」

そう言いながら百合緋は制服のポケットから、手帳を取り出した。

差し出されたので、受け取って中を見る。

「斎陵(せいりょう)学園……?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

妖狐乙嫁譚

サモト
恋愛
意地悪な義母によって、評判の悪い妖狐に嫁がされた十和。 しかし相手は噂ほど悪い相手でもなく優しい。 十和は夫を好きになるが、夫は十和に興味がなく……? ”形だけの夫婦”から幸せになっていく少女と妖狐のお話。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

花姫だという私は青龍様と結婚します

綾月百花   
恋愛
あらすじ 突然うちの子ではないと言われた唯(16歳)は見知らぬ男に御嵩神社の青龍神社に連れて行かれて生き神様の青龍様のお妃候補になったと言われる。突然、自分が花姫様だと言われても理解できない。連れて行かれたお屋敷には年上の花姫もいて、みな青龍様のお妃になることに必死だ。最初の禊ぎで川に流され、初めて神の存在に気付いた。神に離しかけられ、唯は青龍様に会いたくなる。せつなくて、頑張る唯を応援してください。途中残酷シーンも含まれますので苦手な方は読み飛ばしてください。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...