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2 当代最高峰の陰陽師
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しおりを挟む「え……?」
その少女をまじまじと見る美也。
初めて見る人だ。
このあたりの学校の制服ではない。
美也より少し身長は低くて、長い髪はハーフアップに結われている。
白磁の肌と瞳の大きな穏やかな顔つき。
美少女、そんな言葉が似合う人だった。
「あなた、あの方の巫女様ですよね?」
「………はっ?」
美也は素っ頓狂な声が出た。
思わず、自分以外にかけられた言葉かもしれないと辺りをきょろきょろした。
しかし、美也のすぐ近くには誰もいないし、小柄な女性は美也の目の前にいて美也を見ている。
ばっちり目が合ってしまった。
ふわっとほほ笑む少女。
「いきなりごめんなさい。わたし、月御門(つきみかど)家に居候している、水旧百合緋(みなもと ゆりひ)といいます」
百合緋と名乗る少女は、体の前で手を組んで軽く頭を下げた。
美也も頭を下げたが、名乗っていいものかは悩んで、結局「はあ……」とだけ答えた。
水旧百合緋というその名前も、月御門という名前も、美也は初めて聞いた。
「あの……どこかでお逢いしましたっけ……?」
「いえ、初対面です。ちょっとあなたに用事あるって子に呼ばれて来たんですけど……ああ、早く帰らないといけないんですね? では、また日を改めます」
「え……」
早く帰らないといけないなんて、美也は口にしていない。どこからの情報だ?
美也が考え込んでいると、少女は更に言葉を続けた。
「……もしかして今、榊様のことで悩んでおられます?」
百合緋がずばり言い当ててきた。
どきっとした美也は、それが顔に出てしまったことがわかった。
今、榊の名前を出した……?
「そうですよね、色々と大変ですよね」
百合緋は、頬に手をあてて困ったように言う。
ひとつひとつの行動が、まるでファッション雑誌のモデルのようである。
「あの……?」
「もしよろしかったら、お時間のあるとき月御門の家に来てくださいませんか?」
「え……?」
美也が驚いた反応をすると、百合緋は自分の胸に手を当てた。
「今かかえていらっしゃること、解決できると思います。あっ、怪しいものじゃないですからね? 変な勧誘とか宗教じゃないですから。えーと……」
そう言いながら百合緋は制服のポケットから、手帳を取り出した。
差し出されたので、受け取って中を見る。
「斎陵(せいりょう)学園……?」
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