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五 今日はお出かけ! です!
side羽咲5
しおりを挟む顔を真っ赤にして手うちわをする私を、心配そうな顔で見て来る総真くん。
「あついねー」とか誤魔化しで言ってみる。総真くんは「だねー」と応じてくれた。
電車には乗らずに駅から離れて、商店が何軒が並んでいる道を歩いていると、総真くんの握った手に力が入った。
「うー……ほんとは今日、ほかにも誰かいた方がよかった?」
「えっ? なんでっ?」
「……さっきからうー、死んじゃうようなこと言ってるから……俺と二人はいやだったかな、って……」
そう言って、私を見て来た総真くんは哀しそうな目をしていた。
――私が総真くんにそんな顔をさせていいわけがない!
「ち、違うよ! そんなんじゃないよ! あのね、言うならね? 私、総真くんが大好き過ぎて、総真くんが尊すぎて、総真くんと一緒にいると心臓が、もう死んじゃうんじゃないかってくらいドキドキしてね? 総真くんと二人っきりでいられるなんて幸せ過ぎて死んじゃうんじゃないかってくらいって意味なの! だから総真くんが悪いとか、一緒にいるのが嫌とかじゃないから!」
一気にまくしたてると、総真くんはぽかんとしてしまった。それから薄く口を開いた。
「………とうとい……?」
「そうなの! 総真くんは尊いの!」
力説すると、総真くんは足を停めてしばらく固まったあと、小首を傾げた。
「俺……普通の人間だよね?」
「その通りだけど、私には総真くん以上に素晴らしい存在がないってこと!」
こぶしを握って力説すると、総真くんはおかしそうにぷっと噴き出した。
「大袈裟。うーの周りはすごい人たくさんいるよ」
私を見て目を細めて言ってから、総真くんまた正面の方を向いた。
「そうかもだけど、私が一番大好きなのは総真くんだからっ」
確かに、すごい人はたくさんいる。
お兄ちゃんや景お兄ちゃんは基本万能だし、玲くんは面倒見がよくて優しいし、なゆお姉ちゃんはしっかり者だし、水都ちゃんに至っては天使の具現化だし、お父さんやお母さん、そのお友達もみんないい人ばかりだ。
それでも、私の一番は生まれた時から総真くんだ。
「うー、俺のこと好きなんだねえ」
「うん!」
大きく肯くと、総真くんは嬉しそうにはにかんだ。
こんな風に大好きな人に大好きって伝えられるって……幸せだなあ……。
「そういえばうーは行きたいとことかある? 今日はうーへのご褒美の日だから」
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