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三 考えてなかった……!
side総真5
しおりを挟むうーがやっと言葉を話し出した頃、僕はある理由からうーを泣かせてしまった。
咲雪さんいわく、ほとんど泣いたことのないうーがあんなに泣いたのは、あとにも先にもあの一度だけだとか……。
誰か僕をころして。
……だからこそ僕は、うーを泣かせたくない、困らせたくないと思って生きてきたのに……。
「自分の話なんだけど、俺は美結以外が泣いても全然気にならなかったなあ」
………。
うわー……。
「だから想は優しくないとか言われんだよ」
「それ言ったの晃だろ?」
秒でばれた。言われてんの知ってんのか。
「否定はしないよ。たぶん司が泣いたとして俺が悲しいと思うのは、友達の晃の大事な人だから、って理由がついちゃうから」
「………」
悲しいと思うことに、理由がつく……?
「その前にある存在として、晃が悲しい思いをしたらそれは友達が悲しんでいるから、ってなる。『美結だから』っていう理由で感情が動くのは、以前は俺には美結だけだった」
「……いや、美結が複数人いたらややこしいだろ」
「そうじゃなくて、その人だから、が理由になるのは、俺には美結だけだったってこと。友達だからとか、友達の大事な人だから、とか、俺の場合は美結以外の全部の人に理由がついてまわってた」
「……それがどうした?」
「それが俺の、唯一の特別だったってこと」
唯一……特別……。
「……わかんねー……」
わからな過ぎて、テーブルに額を押し付ける。
「だろうなあ。お前、羽咲の兄になる、とか本気で言ってたもんな」
「……いつ?」
「羽咲や由羽がうちに泊まってた頃」
「………あのときそんなこと言ってた?」
「言ってたよ。みんなそれどころじゃなかったから、憶えてないかもしれないけど」
「………」
「それより総真、なんか降りて来るの早くなかったか?」
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