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2 闇の陰陽師・黒藤

side黒藤8

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「縁、今日は仕事片付けてくるから遅くなる。戸締りしっかりな」

「わかったわ。無月は黒藤と一緒なのよね?」

「ああ。涙雨、呼んだら来てくれよ?」

「はひふぁふぁっふぁ」

……いつもの喋り方からして、「あいわかった」と言いたかったんだろうな。

口の周り飯粒だらけだ。

こういうところ、子供扱いで食べ方を教えてやった方がいいのか? 涙雨は俺の式の中で最年長だけど。

そりゃあ、白との子どもが出来たら……………………。

「黒藤、何紅くなってんの? ヘンなことでも考えた?」

「いや、ちょっと素敵妄想を」

「ヘンなことよ、それ」

縁にもの凄く冷たい目で見られた。

俺としては、白との将来素敵妄想だったんだけどなあ。

白が嫁さんで、子どもたちと一緒に暮らしてるっていう。

ちなみに白だったらここで、「変態!」って怒鳴ってかかと落とし喰らわせてくるんだろう。

あ、言って置くけど俺はマゾではない。殴られたり蹴られたりするの、普通に痛いから嫌だし。

白の攻撃は照れ隠しだから、ひたすら可愛いだけだ。

白も公言する通り、攻撃してくるのは俺にだけみたいだ。と言うことは、俺に対してしか照れないということか。

………………………。

「……黒藤、黙ってにやにやするのもやめてよ。気味悪い」

「え? そんなにやけてた?」

「表情崩れまくり。黒藤の長所は見た目と当代最強の称号だけなんだから、せめてキリッとしてなよ」

「……俺、そんな評判なの?」

さすがにちょっと傷付いた。

見た目も、白の好みでなければどんな容姿でも意味がない。

当代最強とかいうヤツだって、俺より強い奴なんてすぐ現れる。

いつまで俺がそれでいられるかわかったもんじゃない。

俺の見た目なんて白にとっては、無炎と無月そっくり程度の認識でしかない。

白は――御門流は――強さに固執する流派でもない。

強さが絶対の小路と違って、伝統を重んじる方だ。

白にとって強さは必要だけど、それほど意味のあるものでもない。

……ちょっと待て。俺の長所で、白に好かれる要素が欠片もない……。

「……百面相得意ねえ」

今度は項垂れた俺を、縁は呆れたカオで見て来る。

「ゆかりどの! おかわり!」

……涙雨は落ち込む主を見もせず、元気に三杯目を要求している。

……涙雨の食い扶持(くいぶち)の分も仕事しなきゃな。

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