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5 帰せないよ

side想19

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「み――」

「私以外に大事な人が出来てもいいよ。想が、心から好きだって思える人なら、想がまた恋することを、私がゆるすから。だから……ただ生きるんじゃダメだよ? 幸せに生きるの」

美結が右手を持ち上げた。

「私のわがまま、約束してくれる?」

美結は笑顔なのに、頬には涙が伝っていた。

「……うん。約束する。美結も、俺が欠けても、幸せに生きるんだよ?」

「想のわがままなら、約束する」

「うん」

僕は美結とはつないでいない左手を出して、不格好なゆびきりをした。

「ふふっ、想のわがままもらっちゃった」

美結が涙の笑顔でそんなことを言うものだから、左手で美結の頬をとらえて、伝う涙に唇を寄せた。

「そ、想っ」

「大丈夫、人いないから」

「一応ここ、住宅街っ」

「美結が可愛いのが悪い」

――もし、僕が先に欠けてしまったとしても、美結が淋しくなることがあっても、哀しくなることがあっても、涙の海に沈まないように、今、僕に出来る最大限のカタチで、美結をせいいっぱい愛するんだ。

「なんでそうなるのっ。想、あの~」

「ん。これで大丈夫かな」

美結の涙を全部唇で拭うと美結は、今度は恥ずかしそうに口をつぐんでいた。

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