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34.脱出劇
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広場には王都に駐屯している第一騎士団、近衛騎士団が集結していた。全員、出陣の準備が整っている。今回、第二騎士団が危機的状況にあるということもあって、騎士達の士気は高い。
ファルリンは、近衛騎士団の列に参列している。やがて、鎧姿のジャハーンダールが王宮のバルコニーに姿を現した。
ジャハーンダールは繊細な飾りが施された儀式用の曲刀を鞘から抜き放ち、出陣の号令をかける。
騎士団の団員たちが足並みを揃えて王都から西をめざした。
ジャハーンダールは、騎士団の列の中にファルリンがいることに気がついた。近衛騎士団の列に並びジャハーンダールに背を向けて広場をでていく。
断られたというのに、ジャハーンダールはもう一度、その背中に縋って戦場に行かないで欲しいと言ってしまいたかった。
ホマー城周辺の哨戒で第二騎士団は魔獣と遭遇したときに、数に押されホマー城での籠城戦をしようとホマー城での守りを固めているというのが、最新の斥候の報告であった。
ホマー城の城下には五千人を超える民間人が生活をしている。その全員をホマー城の城内へ非難させての籠城戦のようだ。
ホマー城は、対人間相手の籠城戦であれば堅牢な要塞となるが、人間以上の身体能力のある魔獣相手で長期戦は難しい。よって、ファルリン達近衛騎士団に与えられた任務は、第二騎士団と第一騎士団で陽動作戦を行い魔獣の気を引いている間に、ホマー城に籠城している民間人を速やかに王都へ避難させる事であった。
ファルリン達は、無事にホマー城が視界に捕らえることができるところまで駱駝に乗って進軍してきた。魔獣達はホマー城にもっと接近しているのか、それともねぐらに帰ったのか視界に入る範囲にはいないようだ。
ホマー城近くの小高い丘に簡易的な拠点を魔法で作り出す。ここを足がかりにホマー城へ侵入し、民間人を全員助け出すのだ。
魔獣は、昼夜問わず攻めてくるが、どちらかというと夜に攻めてくる方が多い。今夜、ホマー城へ襲撃があった時に、第一騎士団とホマー城内に駐屯している第二騎士団が連携して、魔獣の誘導を行いその隙に近衛騎士団が城内へ侵入し、民間人をホマー城外へと連れ出す作戦になっている。
ファルリンは、夜の戦いに向けて仮眠を取る必要があったが、出陣間際のジャハーンダールとのことが頭をよぎって眠ることが出来ない。
交代で見張りをすることになっているので、それと替わって見張りをしていてもいいぐらいだった。
(まさか……メフルダードが王様で、しかも王の妃のことまで知っていたなんて)
ファルリンはため息をついた。
(きっと、王の妃だから目をかけてくださったのね。それを、私が勘違いをして)
ファルリンは泣きそうだった。共に星空を眺めた日の夜のことを今でもはっきりと覚えている。あの時に心が通ったと思ったのは、ファルリンだけだったのだろう。
「ファルリン、眠れないのか?」
ピルーズが眠れない様子のファルリンに気がついて、隣に座る。いつもだったら、男女別での休息だが行軍中なので雑魚寝だ。近くで仮眠を取っていたピルーズがファルリンの様子がおかしいことに気がついたのだろう。
「少し……考え事をしていまして」
「悩み事?」
「自分の愚かさを嘆いていました」
ファルリンは、寂しそうに呟いた。すべてを諦めてしまった表情だ。
「誰かに話して楽になるのなら、僕が聞くよ」
ピルーズの優しい言葉にファルリンは言葉が詰まった。誰かに相談できる類いの話ではないが、心の弱ったファルリンには、充分すぎるほどの言葉だった。
「ありがとうございます。ピルーズ。このようなときに話すことでもありませんので」
ホマー城では、魔獣の襲撃に怯えている民間人がいるのだ。その救出のためにある程度の覚悟をして来たというのに、恋愛話などを聞かせることはためらわれた。
「気をそぞろにしていると、戦場で命取りになるよ」
「気をつけます」
ピルーズは、これ以上ファルリンからは聞き出せないと判断したのか、立ち上がって自分が仮眠を取っていたところに戻った。
ファルリンは態度にでているから心配をかけるのだ、と思いなるべく普通でいようと気を配った。
夜になって、近衛騎士団はホマー城へ向けて進軍を開始した。第一騎士団と第二騎士団は魔獣と戦闘を開始し、魔獣達を引きつけるために派手に戦っているようだ。
ファルリンたち近衛騎士団は、派手な戦いぶりを横目にホマー城の裏手からホマー城へ侵入する。魔獣達もホマー城の裏手までは考えが及ばなかったようで、一匹も会わずに城内へ入ることが出来た。
城内に集められていた民間人たちをグループ分けし、近衛騎士団二人につき、十人前後の民間人グループを連れて、急ごしらえの砦まで戻る。
ファルリンは、ピルーズと組むことになり王の痣の力を考慮し、一番危険な殿となった。
王の痣の力があるとはいえ、殿は一番魔獣たちに追いつかれやすいので、民間人の人数は五人。体力に自信のある若者ばかり集められ、一番最後に城を脱出することになった。
ファルリンは、近衛騎士団の列に参列している。やがて、鎧姿のジャハーンダールが王宮のバルコニーに姿を現した。
ジャハーンダールは繊細な飾りが施された儀式用の曲刀を鞘から抜き放ち、出陣の号令をかける。
騎士団の団員たちが足並みを揃えて王都から西をめざした。
ジャハーンダールは、騎士団の列の中にファルリンがいることに気がついた。近衛騎士団の列に並びジャハーンダールに背を向けて広場をでていく。
断られたというのに、ジャハーンダールはもう一度、その背中に縋って戦場に行かないで欲しいと言ってしまいたかった。
ホマー城周辺の哨戒で第二騎士団は魔獣と遭遇したときに、数に押されホマー城での籠城戦をしようとホマー城での守りを固めているというのが、最新の斥候の報告であった。
ホマー城の城下には五千人を超える民間人が生活をしている。その全員をホマー城の城内へ非難させての籠城戦のようだ。
ホマー城は、対人間相手の籠城戦であれば堅牢な要塞となるが、人間以上の身体能力のある魔獣相手で長期戦は難しい。よって、ファルリン達近衛騎士団に与えられた任務は、第二騎士団と第一騎士団で陽動作戦を行い魔獣の気を引いている間に、ホマー城に籠城している民間人を速やかに王都へ避難させる事であった。
ファルリン達は、無事にホマー城が視界に捕らえることができるところまで駱駝に乗って進軍してきた。魔獣達はホマー城にもっと接近しているのか、それともねぐらに帰ったのか視界に入る範囲にはいないようだ。
ホマー城近くの小高い丘に簡易的な拠点を魔法で作り出す。ここを足がかりにホマー城へ侵入し、民間人を全員助け出すのだ。
魔獣は、昼夜問わず攻めてくるが、どちらかというと夜に攻めてくる方が多い。今夜、ホマー城へ襲撃があった時に、第一騎士団とホマー城内に駐屯している第二騎士団が連携して、魔獣の誘導を行いその隙に近衛騎士団が城内へ侵入し、民間人をホマー城外へと連れ出す作戦になっている。
ファルリンは、夜の戦いに向けて仮眠を取る必要があったが、出陣間際のジャハーンダールとのことが頭をよぎって眠ることが出来ない。
交代で見張りをすることになっているので、それと替わって見張りをしていてもいいぐらいだった。
(まさか……メフルダードが王様で、しかも王の妃のことまで知っていたなんて)
ファルリンはため息をついた。
(きっと、王の妃だから目をかけてくださったのね。それを、私が勘違いをして)
ファルリンは泣きそうだった。共に星空を眺めた日の夜のことを今でもはっきりと覚えている。あの時に心が通ったと思ったのは、ファルリンだけだったのだろう。
「ファルリン、眠れないのか?」
ピルーズが眠れない様子のファルリンに気がついて、隣に座る。いつもだったら、男女別での休息だが行軍中なので雑魚寝だ。近くで仮眠を取っていたピルーズがファルリンの様子がおかしいことに気がついたのだろう。
「少し……考え事をしていまして」
「悩み事?」
「自分の愚かさを嘆いていました」
ファルリンは、寂しそうに呟いた。すべてを諦めてしまった表情だ。
「誰かに話して楽になるのなら、僕が聞くよ」
ピルーズの優しい言葉にファルリンは言葉が詰まった。誰かに相談できる類いの話ではないが、心の弱ったファルリンには、充分すぎるほどの言葉だった。
「ありがとうございます。ピルーズ。このようなときに話すことでもありませんので」
ホマー城では、魔獣の襲撃に怯えている民間人がいるのだ。その救出のためにある程度の覚悟をして来たというのに、恋愛話などを聞かせることはためらわれた。
「気をそぞろにしていると、戦場で命取りになるよ」
「気をつけます」
ピルーズは、これ以上ファルリンからは聞き出せないと判断したのか、立ち上がって自分が仮眠を取っていたところに戻った。
ファルリンは態度にでているから心配をかけるのだ、と思いなるべく普通でいようと気を配った。
夜になって、近衛騎士団はホマー城へ向けて進軍を開始した。第一騎士団と第二騎士団は魔獣と戦闘を開始し、魔獣達を引きつけるために派手に戦っているようだ。
ファルリンたち近衛騎士団は、派手な戦いぶりを横目にホマー城の裏手からホマー城へ侵入する。魔獣達もホマー城の裏手までは考えが及ばなかったようで、一匹も会わずに城内へ入ることが出来た。
城内に集められていた民間人たちをグループ分けし、近衛騎士団二人につき、十人前後の民間人グループを連れて、急ごしらえの砦まで戻る。
ファルリンは、ピルーズと組むことになり王の痣の力を考慮し、一番危険な殿となった。
王の痣の力があるとはいえ、殿は一番魔獣たちに追いつかれやすいので、民間人の人数は五人。体力に自信のある若者ばかり集められ、一番最後に城を脱出することになった。
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