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12.新たな役目
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ジャハーンダールは、御簾の奥で大広間の成り行きを見下ろしていた。もともと、この大広間に作られた回廊の王族専用の部屋は、数代前の好色な国王が、夜会の最中に、愛人を呼んでいろいろやりたいという発案で作られたものだ。
即位したときに、この部屋を取り壊そうと思ったが予算の関係でいままで残っていた。このような事態になるのなら、残しておいて正解であった。
ファルリンの軽妙な動きを見てジャハーンダールは感心した。砂漠に住む者は独自の文化を持ち、駱駝に乗ったら世界で一番早いと言われている。そういった基礎的な体作りと王の盾の力がうまく共鳴しあってファルリンの超人的な力を作り出しているのだろう、とジャハーンダールは推察した。
(しかし……本当に王の妃の持ち主であることを隠すとはな)
カタユーンの報告と、ファルリンの手を握ったときの衝撃を鑑みても、ファルリンの王の妃は本物だろう。
大広間で歓声が上がった。ファルリンが二人目の兵士をノックアウトしたのだ。そのときにみせた、真剣な表情に、ジャハーンダールは心が揺れる。
(まさか、俺の妃になるのが嫌なのか?そんな女この地上にいるのか……!)
彼は、心がわずかに揺れてしまったがために、地味に傷ついていた。
兵士の数は残り二人となった。さきほど兵士を倒したときに、兵士が持っていた槍をファルリンは奪い取っていた。ファルリンはその槍を構えて、前から斬りかかってきた兵士の剣をはじき飛ばす。
兵士の手からすっぽ抜けた剣は、弧を描き王に媚びを売っていたマハスティのすぐ近くの床に刺さった。彼女からカエルがつぶれたような悲鳴があがった。
ファルリンは、その声に思わず笑顔になる。
(脅かすつもりはなかったんだけど……何度も小汚いとか言ってたし。砂にまみれるのは、砂漠に住む者の誇りだわ)
自分で考えていた以上に、マハスティの言葉にイライラしていたようだ。無意識のうちにやり返してしまっていた。
ファルリンはすかさず槍の柄で、剣をはじき飛ばした兵士の鳩尾を殴り飛ばし、床に転がす。残りの一人に槍の先端を突きつけて構えると、兵士は降参した。
王宮に勤める兵士四人を制圧するのに、ほんのつかの間の時間だった。
「良くやった。ファルリンよ、お前を王の盾として迎えよう」
ジャハーンダールは、高らかに宣言した。
王の盾として認められたファルリンには、王宮内に部屋が与えられた。国王の側近達が居住している建物で、王の執務室に行くのも近い。ファルリンは、今までテント生活をしてきたので、個人の部屋を与えられたのは、初めてですこし不思議な感じがした。自分の居る空間に、他の誰かがいないのだ。テント生活の時には、常に家族の誰かがいる。
ファルリンにはとても広く感じる部屋だが、王宮内ではこれでも狭い部類の部屋と言われている。ファルリンは、生活する上で必要な小物を用意してもらった。
王の盾といっても常に王を護衛するのではなく、近衛騎士団に所属し日々鍛錬を行うことになった。近衛騎士団には、揃いの貫頭衣がありファルリンに合うサイズの服が支給された。
ファルリンは、自分の部屋で近衛騎士団の服に着替える。貴族の女性が着ていたような貫頭衣と違い飾り気のないデザインであったが、どんな高価な服よりもファルリンには、価値があった。
彼女は、部屋の中央でくるりと回転する。貫頭衣の裾が広がった。心がむずがゆくなり、ファルリンは、ひっそりと笑った。
(私、今日から、近衛騎士団の一員なんだ)
即位したときに、この部屋を取り壊そうと思ったが予算の関係でいままで残っていた。このような事態になるのなら、残しておいて正解であった。
ファルリンの軽妙な動きを見てジャハーンダールは感心した。砂漠に住む者は独自の文化を持ち、駱駝に乗ったら世界で一番早いと言われている。そういった基礎的な体作りと王の盾の力がうまく共鳴しあってファルリンの超人的な力を作り出しているのだろう、とジャハーンダールは推察した。
(しかし……本当に王の妃の持ち主であることを隠すとはな)
カタユーンの報告と、ファルリンの手を握ったときの衝撃を鑑みても、ファルリンの王の妃は本物だろう。
大広間で歓声が上がった。ファルリンが二人目の兵士をノックアウトしたのだ。そのときにみせた、真剣な表情に、ジャハーンダールは心が揺れる。
(まさか、俺の妃になるのが嫌なのか?そんな女この地上にいるのか……!)
彼は、心がわずかに揺れてしまったがために、地味に傷ついていた。
兵士の数は残り二人となった。さきほど兵士を倒したときに、兵士が持っていた槍をファルリンは奪い取っていた。ファルリンはその槍を構えて、前から斬りかかってきた兵士の剣をはじき飛ばす。
兵士の手からすっぽ抜けた剣は、弧を描き王に媚びを売っていたマハスティのすぐ近くの床に刺さった。彼女からカエルがつぶれたような悲鳴があがった。
ファルリンは、その声に思わず笑顔になる。
(脅かすつもりはなかったんだけど……何度も小汚いとか言ってたし。砂にまみれるのは、砂漠に住む者の誇りだわ)
自分で考えていた以上に、マハスティの言葉にイライラしていたようだ。無意識のうちにやり返してしまっていた。
ファルリンはすかさず槍の柄で、剣をはじき飛ばした兵士の鳩尾を殴り飛ばし、床に転がす。残りの一人に槍の先端を突きつけて構えると、兵士は降参した。
王宮に勤める兵士四人を制圧するのに、ほんのつかの間の時間だった。
「良くやった。ファルリンよ、お前を王の盾として迎えよう」
ジャハーンダールは、高らかに宣言した。
王の盾として認められたファルリンには、王宮内に部屋が与えられた。国王の側近達が居住している建物で、王の執務室に行くのも近い。ファルリンは、今までテント生活をしてきたので、個人の部屋を与えられたのは、初めてですこし不思議な感じがした。自分の居る空間に、他の誰かがいないのだ。テント生活の時には、常に家族の誰かがいる。
ファルリンにはとても広く感じる部屋だが、王宮内ではこれでも狭い部類の部屋と言われている。ファルリンは、生活する上で必要な小物を用意してもらった。
王の盾といっても常に王を護衛するのではなく、近衛騎士団に所属し日々鍛錬を行うことになった。近衛騎士団には、揃いの貫頭衣がありファルリンに合うサイズの服が支給された。
ファルリンは、自分の部屋で近衛騎士団の服に着替える。貴族の女性が着ていたような貫頭衣と違い飾り気のないデザインであったが、どんな高価な服よりもファルリンには、価値があった。
彼女は、部屋の中央でくるりと回転する。貫頭衣の裾が広がった。心がむずがゆくなり、ファルリンは、ひっそりと笑った。
(私、今日から、近衛騎士団の一員なんだ)
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