44 / 48
第二章 ルーファスの婚約者編
王都に戻りました
しおりを挟む
わたし達が王都に戻って来てから数週間が過ぎた。その間ルーファスの記憶は大きく改善される事はなかったが、それでもわたし達は婚約者として互いに城と公爵邸を行き来しては交流を深めていた。
春の休暇も終わり、ルーファスは学園生活が再開した為一緒に過ごす時間は限られていた。こんな時に同じ学年だったら良かったのにとは思うけど、そればかりは仕方のない事だ。
今年から弟のフィーニモが学園に入学したので、ルーファスの学園での様子はたまにフィーニモから聞かされる事がある。それというのもフィーニモはルーファスが王太子になってから正式にルーファスの側近の一人として任命された為、行動を共にする事が多いからだ。
(今までのルークが王太子だった時にはこんな展開はなかったのよね。元々ルーファスとは親しくはしてたけど)
フィーニモはゲーム内でも攻略対象者ではないし、言うならば名前すら出て来ないモブ的存在だ。ただ、悪役令嬢とヒロインの弟という事もあってか容姿はかなりな美形ではある。
ルークの失脚によって数人居たルークの側近達は出世コースから外れる事にはなったが、その中でも次期宰相候補と言われていたラムディ・シアーはルーファス直々に自分の側近として引き抜いたらしい。
確かにラムディ以上に未来の宰相となるべき人物はなかなか見つからないだろうというのは、わたしから見てもよく分かる程の逸材だ。ルーファスが欲しがるのも納得する。
「今日もマーガレット嬢がまとわり付いてて疲れたよ」
学園から帰宅したフィーニモがわざわざわたしの部屋までやって来て悪態をついた。馬車事故が起こる前はマーガレットは遠くからルーファスを見てるだけだったのに、事故以来急に彼女は積極的になったみたいだ。
(まさかマーガレットも転生者って事はないよね? 事故がキッカケで前世の記憶が戻ったとかやめて~)
ヒロインであるモニラが退場してしまった為、マーガレットを新たなヒロインとして物語が動き始めたとかあり得ない話ではない。ゲーム期間は実質まだ二年残っているのだ。
もし自分がマーガレットとして転生していて、あの事故で記憶を取り戻したと仮定したらどう動くだろうか。ルーファスが推しキャラとして考えてみる。
ルーファスには悪役令嬢のわたしという婚約者がいる。ヒロインからすると、モニラの立ち位置とそう変わらないだろう。今がゲームスタート時点だと思えば、出来る限りアピールして攻略したいと思うのは普通かもしれない。
どうして好きな人が被ってしまうのだろうとも思うが、よくよく考えてみればルーファスもルークも攻略対象者だ。転生者が狙うのも当たり前だし、そうでなくともこの国の王子でありあの美貌だ。ライバルが多いのは当然の事だった。
(わたしだってルーク推しから始まったんだもの。人の事言えないわよね)
そう考えると思わず苦笑いしてしまう他なかった。ルーファスの事は推し対象でも恋愛対象でも無かったけど、あっという間に彼の魅力に堕とされてしまった訳で。
(もう彼無しでは生きていけないくらいに好きになっちゃってるもの。困ったわ)
「あぁ、そういえば姉上。マーガレット嬢から言伝を預かって来ましたよ」
どうやら部屋を訪ねて来たのはそれが目的だったらしい。
「マーガレット様から?」
「週末に我が家に訪ねて来たいそうです。姉上が気乗りしないなら断っておきますよ。いや、断りましょう。それが良い」
勝手に断る方へと持っていくフィーニモ。弟なりにわたしに気を遣ってくれてるのが嬉しい。
「ありがとう。でもわたしも少しお話をしたい事があるし、せっかくなのでご招待致しましょう」
「本気ですか、姉上。無理する必要はないのですよ?」
わたしの返答に目を丸くするが、むしろマーガレットには聞きたい事が沢山あるので丁度良い機会だ。
「大丈夫よ、心配してくれてありがとう」
「姉上がそう仰るのなら……ルーファスにも同席を頼みましょうか?」
「ううん、マーガレット様と二人きりでお話がしたいの。お願い」
「……わかりました」
そう答えたフィーニモの顔は納得はいってないと書いてはあったけど、あえてわたしはそれには気付かない振りをしたのだった。
春の休暇も終わり、ルーファスは学園生活が再開した為一緒に過ごす時間は限られていた。こんな時に同じ学年だったら良かったのにとは思うけど、そればかりは仕方のない事だ。
今年から弟のフィーニモが学園に入学したので、ルーファスの学園での様子はたまにフィーニモから聞かされる事がある。それというのもフィーニモはルーファスが王太子になってから正式にルーファスの側近の一人として任命された為、行動を共にする事が多いからだ。
(今までのルークが王太子だった時にはこんな展開はなかったのよね。元々ルーファスとは親しくはしてたけど)
フィーニモはゲーム内でも攻略対象者ではないし、言うならば名前すら出て来ないモブ的存在だ。ただ、悪役令嬢とヒロインの弟という事もあってか容姿はかなりな美形ではある。
ルークの失脚によって数人居たルークの側近達は出世コースから外れる事にはなったが、その中でも次期宰相候補と言われていたラムディ・シアーはルーファス直々に自分の側近として引き抜いたらしい。
確かにラムディ以上に未来の宰相となるべき人物はなかなか見つからないだろうというのは、わたしから見てもよく分かる程の逸材だ。ルーファスが欲しがるのも納得する。
「今日もマーガレット嬢がまとわり付いてて疲れたよ」
学園から帰宅したフィーニモがわざわざわたしの部屋までやって来て悪態をついた。馬車事故が起こる前はマーガレットは遠くからルーファスを見てるだけだったのに、事故以来急に彼女は積極的になったみたいだ。
(まさかマーガレットも転生者って事はないよね? 事故がキッカケで前世の記憶が戻ったとかやめて~)
ヒロインであるモニラが退場してしまった為、マーガレットを新たなヒロインとして物語が動き始めたとかあり得ない話ではない。ゲーム期間は実質まだ二年残っているのだ。
もし自分がマーガレットとして転生していて、あの事故で記憶を取り戻したと仮定したらどう動くだろうか。ルーファスが推しキャラとして考えてみる。
ルーファスには悪役令嬢のわたしという婚約者がいる。ヒロインからすると、モニラの立ち位置とそう変わらないだろう。今がゲームスタート時点だと思えば、出来る限りアピールして攻略したいと思うのは普通かもしれない。
どうして好きな人が被ってしまうのだろうとも思うが、よくよく考えてみればルーファスもルークも攻略対象者だ。転生者が狙うのも当たり前だし、そうでなくともこの国の王子でありあの美貌だ。ライバルが多いのは当然の事だった。
(わたしだってルーク推しから始まったんだもの。人の事言えないわよね)
そう考えると思わず苦笑いしてしまう他なかった。ルーファスの事は推し対象でも恋愛対象でも無かったけど、あっという間に彼の魅力に堕とされてしまった訳で。
(もう彼無しでは生きていけないくらいに好きになっちゃってるもの。困ったわ)
「あぁ、そういえば姉上。マーガレット嬢から言伝を預かって来ましたよ」
どうやら部屋を訪ねて来たのはそれが目的だったらしい。
「マーガレット様から?」
「週末に我が家に訪ねて来たいそうです。姉上が気乗りしないなら断っておきますよ。いや、断りましょう。それが良い」
勝手に断る方へと持っていくフィーニモ。弟なりにわたしに気を遣ってくれてるのが嬉しい。
「ありがとう。でもわたしも少しお話をしたい事があるし、せっかくなのでご招待致しましょう」
「本気ですか、姉上。無理する必要はないのですよ?」
わたしの返答に目を丸くするが、むしろマーガレットには聞きたい事が沢山あるので丁度良い機会だ。
「大丈夫よ、心配してくれてありがとう」
「姉上がそう仰るのなら……ルーファスにも同席を頼みましょうか?」
「ううん、マーガレット様と二人きりでお話がしたいの。お願い」
「……わかりました」
そう答えたフィーニモの顔は納得はいってないと書いてはあったけど、あえてわたしはそれには気付かない振りをしたのだった。
0
お気に入りに追加
1,707
あなたにおすすめの小説
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
【完結】硬派な殿下は婚約者が気になって仕方がない
らんか
恋愛
私は今、王宮の庭園で一人、お茶を頂いている。
婚約者であるイアン・ギルティル第二王子殿下とお茶会をする予定となっているのだが……。
「また、いらっしゃらないのですね……」
毎回すっぽかされて、一人でお茶を飲んでから帰るのが当たり前の状態になっていた。
第二王子と婚約してからの3年間、相手にされない婚約者として、すっかり周知されていた。
イアン殿下は、武芸に秀でており、頭脳明晰で、魔法技術も高い。そのうえ、眉目秀麗ときたもんだ。
方や私はというと、なんの取り柄もない貧乏伯爵家の娘。
こんな婚約、誰も納得しないでしょうね……。
そんな事を考えながら歩いていたら、目の前に大きな柱がある事に気付いた時には、思い切り顔面からぶつかり、私はそのまま気絶し……
意識を取り戻した私に、白衣をきた年配の外国人男性が話しかけてくる。
「ああ、気付かれましたか? ファクソン伯爵令嬢」
ファクソン伯爵令嬢?
誰?
私は日本人よね?
「あ、死んだんだった」
前世で事故で死んだ記憶が、この頭の痛みと共に思い出すだなんて……。
これが所謂、転生ってやつなのね。
ならば、もう振り向いてもくれない人なんていらない。
私は第2の人生を謳歌するわ!
そう決めた途端、今まで無視していた婚約者がいろいろと近づいてくるのは何故!?
【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜
凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】
公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。
だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。
ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。
嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。
──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。
王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。
カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。
(記憶を取り戻したい)
(どうかこのままで……)
だが、それも長くは続かず──。
【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】
※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。
※中編版、短編版はpixivに移動させています。
※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。
※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)
お飾り王妃の受難〜陛下からの溺愛?!ちょっと意味がわからないのですが〜
湊未来
恋愛
王に見捨てられた王妃。それが、貴族社会の認識だった。
二脚並べられた玉座に座る王と王妃は、微笑み合う事も、会話を交わす事もなければ、目を合わす事すらしない。そんな二人の様子に王妃ティアナは、いつしか『お飾り王妃』と呼ばれるようになっていた。
そんな中、暗躍する貴族達。彼らの行動は徐々にエスカレートして行き、王妃が参加する夜会であろうとお構いなしに娘を王に、けしかける。
王の周りに沢山の美しい蝶が群がる様子を見つめ、ティアナは考えていた。
『よっしゃ‼︎ お飾り王妃なら、何したって良いわよね。だって、私の存在は空気みたいなものだから………』
1年後……
王宮で働く侍女達の間で囁かれるある噂。
『王妃の間には恋のキューピッドがいる』
王妃付き侍女の間に届けられる大量の手紙を前に侍女頭は頭を抱えていた。
「ティアナ様!この手紙の山どうするんですか⁈ 流石に、さばききれませんよ‼︎」
「まぁまぁ。そんなに怒らないの。皆様、色々とお悩みがあるようだし、昔も今も恋愛事は有益な情報を得る糧よ。あと、ここでは王妃ティアナではなく新人侍女ティナでしょ」
……あら?
この筆跡、陛下のものではなくって?
まさかね……
一通の手紙から始まる恋物語。いや、違う……
お飾り王妃による無自覚プチざまぁが始まる。
愛しい王妃を前にすると無口になってしまう王と、お飾り王妃と勘違いしたティアナのすれ違いラブコメディ&ミステリー
噂の悪女が妻になりました
はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。
国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。
その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。
最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~
猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。
現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。
現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、
嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、
足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。
愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。
できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、
ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。
この公爵の溺愛は止まりません。
最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる