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第一章 ルークの婚約者編
変わらないモニラ
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わたしがルーク殿下の正式な婚約者となって約一か月経過した。その間何度か手紙でのやり取りは交わしたが、婚約してから初めて直接殿下と会う事となった。そう、殿下が我が邸へと訪問されるのだ。貴族同士の婚約者達は婚姻する迄の期間が長いのだが、互いの邸へ行き来をして交流をするのが習わしとなっている。わたしと殿下も同じだ。
初めて殿下が邸へと訪問されるとあって、我がラントス公爵家の使用人達は失礼がない様に準備を行っている。メイド達は邸中を普段よりもピカピカに磨き上げたり、料理人達はより美味しいお茶やお菓子を提供する為に試行錯誤を繰り返し、庭師も花や草木の手入れに余念がない。
そんな中わたしとお母様は当日着る簡易なドレスを仕立てたりしてバタバタと多忙な日々を送っていた。わたしは気乗りのしないままお母様の着せ替え人形と化していたが、その様子をモニラは目をキラキラさせながら見ている。
「わあ! このドレス素敵っ!!」
そう言いながらハンガーラックに掛けられている様々なドレスに触れてみたり、テーブルにこれでもかと並べれらたアクセサリーを自分の身体に当てながら鏡を覗いたりと何やら忙しそうにしている。
「ねぇ、お母様! モニラも新しいドレスが欲しいわ」
いつものおねだりが始まった様だ。お母様はやれやれという感じで「これはルーク殿下がお見えになる日の為のものだから、モニラには必要ないのよ」と宥めようとした。途端に不機嫌な表情になったモニラは大きな瞳に涙を浮かべ始めた。
「モニラだって殿下とお会いするんだもの、作らないといけないわ」
「殿下は婚約者であるモデリーンに会いに来られるの、だからモニラが会う必要はありませんよ」
「どうしてよ、将来のお義兄様なんでしょう? モニラだって仲良くしないといけないじゃない」
「いいえモニラ、そうじゃないの。相手は王族なのよ、失礼な事をしてはダメなの」
殿下と婚姻したらわたしも王族の一員となる為、滅多に実家に帰る事は出来ない。モニラも普通であれば何処かの貴族の元に嫁ぐ事になるのだから、余計に会う機会はないだろう。いくら姉の婚約者だからといって、邸への訪問時にモニラも殿下と会う必要はないのだ。婚約者同士の交流の時間を邪魔してはいけないのは考えれば分かる事なのだけど、まだ幼いからか知恵が足りないのかモニラにはそれが理解出来ないでいる。
「何よ、お姉様だけズルい!!」
そう叫ぶと泣きながらわたしの部屋から飛び出して行ってしまった。その後を慌ててモニラ専属の侍女が追いかけて行く。お母様と同時に大きな溜息がわたしの口からも零れた。
「どうしてあんな風に育ってしまったのかしら……」
原因が自分にある事に気付いていないのかお母様が頭を抱える。
「……わたくしが言う事ではないですけど、お母様。モニラにはもう少し厳しく躾けた方が良いかと思います」
「そうねぇ……」
口では同意するものの恐らく真剣には受け止めていないであろう。お母様もモニラと同じく人からの意見を聞く人じゃないのだ。
――本当に中身までもそっくりな二人だわ。
冷めた目で自分の母親を見て、こちらが頭を抱えたくなってくる。やり直しが始まってからわたしは出来るだけモニラに厳しく躾け直そうと努力はしているが一向にその努力は報われる気配がない。このまま行けば今迄同様、モニラの暴走が始まるだろう。
……それとも、もうモニラには好きにさせて今迄みたいに殿下とモニラが恋人になるのを待つのが良いのだろうか。今回の殿下は約束してくれた。愛する女性が出来たら婚約破棄をしてくれると。それだけでも今迄に無かった展開だし、唯一の希望じゃないだろうか。
取り敢えずは殿下が初めて訪問して来てからの話だ。いつもの展開なら、無理矢理にでもモニラが同席して来る筈。そうなればきっと殿下はモニラに恋をする日が来るんだから。
初めて殿下が邸へと訪問されるとあって、我がラントス公爵家の使用人達は失礼がない様に準備を行っている。メイド達は邸中を普段よりもピカピカに磨き上げたり、料理人達はより美味しいお茶やお菓子を提供する為に試行錯誤を繰り返し、庭師も花や草木の手入れに余念がない。
そんな中わたしとお母様は当日着る簡易なドレスを仕立てたりしてバタバタと多忙な日々を送っていた。わたしは気乗りのしないままお母様の着せ替え人形と化していたが、その様子をモニラは目をキラキラさせながら見ている。
「わあ! このドレス素敵っ!!」
そう言いながらハンガーラックに掛けられている様々なドレスに触れてみたり、テーブルにこれでもかと並べれらたアクセサリーを自分の身体に当てながら鏡を覗いたりと何やら忙しそうにしている。
「ねぇ、お母様! モニラも新しいドレスが欲しいわ」
いつものおねだりが始まった様だ。お母様はやれやれという感じで「これはルーク殿下がお見えになる日の為のものだから、モニラには必要ないのよ」と宥めようとした。途端に不機嫌な表情になったモニラは大きな瞳に涙を浮かべ始めた。
「モニラだって殿下とお会いするんだもの、作らないといけないわ」
「殿下は婚約者であるモデリーンに会いに来られるの、だからモニラが会う必要はありませんよ」
「どうしてよ、将来のお義兄様なんでしょう? モニラだって仲良くしないといけないじゃない」
「いいえモニラ、そうじゃないの。相手は王族なのよ、失礼な事をしてはダメなの」
殿下と婚姻したらわたしも王族の一員となる為、滅多に実家に帰る事は出来ない。モニラも普通であれば何処かの貴族の元に嫁ぐ事になるのだから、余計に会う機会はないだろう。いくら姉の婚約者だからといって、邸への訪問時にモニラも殿下と会う必要はないのだ。婚約者同士の交流の時間を邪魔してはいけないのは考えれば分かる事なのだけど、まだ幼いからか知恵が足りないのかモニラにはそれが理解出来ないでいる。
「何よ、お姉様だけズルい!!」
そう叫ぶと泣きながらわたしの部屋から飛び出して行ってしまった。その後を慌ててモニラ専属の侍女が追いかけて行く。お母様と同時に大きな溜息がわたしの口からも零れた。
「どうしてあんな風に育ってしまったのかしら……」
原因が自分にある事に気付いていないのかお母様が頭を抱える。
「……わたくしが言う事ではないですけど、お母様。モニラにはもう少し厳しく躾けた方が良いかと思います」
「そうねぇ……」
口では同意するものの恐らく真剣には受け止めていないであろう。お母様もモニラと同じく人からの意見を聞く人じゃないのだ。
――本当に中身までもそっくりな二人だわ。
冷めた目で自分の母親を見て、こちらが頭を抱えたくなってくる。やり直しが始まってからわたしは出来るだけモニラに厳しく躾け直そうと努力はしているが一向にその努力は報われる気配がない。このまま行けば今迄同様、モニラの暴走が始まるだろう。
……それとも、もうモニラには好きにさせて今迄みたいに殿下とモニラが恋人になるのを待つのが良いのだろうか。今回の殿下は約束してくれた。愛する女性が出来たら婚約破棄をしてくれると。それだけでも今迄に無かった展開だし、唯一の希望じゃないだろうか。
取り敢えずは殿下が初めて訪問して来てからの話だ。いつもの展開なら、無理矢理にでもモニラが同席して来る筈。そうなればきっと殿下はモニラに恋をする日が来るんだから。
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