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本編
サザエのつぼ焼き
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今日は定食屋の方へと顔を出していた。まだロマノへの引継ぎが完全には終わっていないので、毎日ではないけど週に何回かは店に顔を出して手伝いをしつつ、ロマノへの引き継ぎ作業もしている。
「まずはこうやって茹でてから……」
大きな鍋にお湯を沸かして、その中にサザエを殻ごと入れる。茹で上がったら楊枝を突き刺して身を取り出してみせる。そして食べやすい大きさに切り分け、再び殻の中へと入れる。
「それで、調味料を入れて」
醤油、酒を混ぜ合わせた調味料を貝殻の中に注ぎ込む。
「で、あとは網の上で焼いて、グツグツいったら完成よ」
ロマノは「ほぉ~」と感心しながらメモを取っている。
「シンプルで簡単でしょ? これなら外の屋台とかでも販売出来るわよ」
「おぉ、それは良いですね。祭りの時とか店の前で売るのも有りですね」
ロマノと他にもこんなモノを屋台で売るのも良いだろうと話していると、ロブ殿下が厨房の方へひょっこりと顔を出された。
「なんか良い香りがしてるね」
「ろ、ロブ様!」
わたしとロマノが慌てて頭を下げる。
「それ、また新しいメニュー?」
「はい、サザエのつぼ焼きです。召し上がってみます?」
「うん、いいのかい?」
「いいですよ~テーブルの方へお持ちしますから、座って待ってて下さい」
今日の日替わり定食である肉じゃが定食と一緒に、サザエのつぼ焼きを二つほど一緒のトレーに乗せてロブ殿下達のテーブルへと運んでいく。
「あ、今日は肉じゃがなんだ。これ、美味しいよね」
「ロブ様は前も気に入ってらしたものね」
前世でもよく使っていたジャガイモや人参など多くの食材がこの世界にもあるお陰で、色んな和食も作れて定食のバリエーションも広がって楽しい。日本で作られたゲームが舞台な世界だからか、西洋風の世界観なのに所々が日本を彷彿とさせるのが可笑しくて……心の中でたまに一人で突っ込んでしまうけど。
「つぼ焼きは、黒い部分はほろ苦いので好き嫌いがあるかもしれないんですけど……」
「へぇ~じゃあ、早速」
ロブ殿下とブラッドは楊枝を使ってサザエの身を、はふはふさせながら口へと運んでいく。
「これは酒が飲みたくなるな」
「そうですね」
そして黒いワタの部分に到達した二人は、それぞれ口に運んだ後別々の表情をされた。
「ん……うん、これは味深い」
「…………むぐっ」
少し顔をしかめてコップの水をぐびっと流し込むブラッド。
「……ブラッドさんは苦手みたいですね、大丈夫ですか」
「いえ、その……こちらこそ何だか申し訳ないです」
「ははっ、ブラッドは案外味覚の好みが幼いからな」
「なっ!? こんな所でばらさないで下さいよ」
楽しそうからかわれるロブ殿下に、ブラッドは少し顔を赤らめて反論する。お二人の仲の良さを間近で見ながら、わたしまで頬を緩めてしまう。ブラッドは幼い頃から殿下と共に一緒におられたので、ある意味幼馴染に近いものがあるのだろうな。
「そうだアリー、今度の店休日は空いているか?」
「あ、はい。大丈夫ですけど」
「じゃあ昼前くらいに迎えに行くから待ってて」
「はい」
何の用事だろう、と思いつつ“迎えに行く”という事は何処かへ出掛けるのだろう。久々にロブ殿下と出掛ける事に心が浮き立ってしまう。好きな人と一緒に過ごせるのは、用事だったとしても何だか楽しみに感じてしまうのは不思議だよね。
「まずはこうやって茹でてから……」
大きな鍋にお湯を沸かして、その中にサザエを殻ごと入れる。茹で上がったら楊枝を突き刺して身を取り出してみせる。そして食べやすい大きさに切り分け、再び殻の中へと入れる。
「それで、調味料を入れて」
醤油、酒を混ぜ合わせた調味料を貝殻の中に注ぎ込む。
「で、あとは網の上で焼いて、グツグツいったら完成よ」
ロマノは「ほぉ~」と感心しながらメモを取っている。
「シンプルで簡単でしょ? これなら外の屋台とかでも販売出来るわよ」
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「それ、また新しいメニュー?」
「はい、サザエのつぼ焼きです。召し上がってみます?」
「うん、いいのかい?」
「いいですよ~テーブルの方へお持ちしますから、座って待ってて下さい」
今日の日替わり定食である肉じゃが定食と一緒に、サザエのつぼ焼きを二つほど一緒のトレーに乗せてロブ殿下達のテーブルへと運んでいく。
「あ、今日は肉じゃがなんだ。これ、美味しいよね」
「ロブ様は前も気に入ってらしたものね」
前世でもよく使っていたジャガイモや人参など多くの食材がこの世界にもあるお陰で、色んな和食も作れて定食のバリエーションも広がって楽しい。日本で作られたゲームが舞台な世界だからか、西洋風の世界観なのに所々が日本を彷彿とさせるのが可笑しくて……心の中でたまに一人で突っ込んでしまうけど。
「つぼ焼きは、黒い部分はほろ苦いので好き嫌いがあるかもしれないんですけど……」
「へぇ~じゃあ、早速」
ロブ殿下とブラッドは楊枝を使ってサザエの身を、はふはふさせながら口へと運んでいく。
「これは酒が飲みたくなるな」
「そうですね」
そして黒いワタの部分に到達した二人は、それぞれ口に運んだ後別々の表情をされた。
「ん……うん、これは味深い」
「…………むぐっ」
少し顔をしかめてコップの水をぐびっと流し込むブラッド。
「……ブラッドさんは苦手みたいですね、大丈夫ですか」
「いえ、その……こちらこそ何だか申し訳ないです」
「ははっ、ブラッドは案外味覚の好みが幼いからな」
「なっ!? こんな所でばらさないで下さいよ」
楽しそうからかわれるロブ殿下に、ブラッドは少し顔を赤らめて反論する。お二人の仲の良さを間近で見ながら、わたしまで頬を緩めてしまう。ブラッドは幼い頃から殿下と共に一緒におられたので、ある意味幼馴染に近いものがあるのだろうな。
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「じゃあ昼前くらいに迎えに行くから待ってて」
「はい」
何の用事だろう、と思いつつ“迎えに行く”という事は何処かへ出掛けるのだろう。久々にロブ殿下と出掛ける事に心が浮き立ってしまう。好きな人と一緒に過ごせるのは、用事だったとしても何だか楽しみに感じてしまうのは不思議だよね。
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