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本編
卒業パーティです②
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わたしが殿下にエスコートされて入場すると会場がザワリと揺れた気がした。恐らく皆、わたしが一人で入場するか或いはお父様にエスコートされて入場するとか思っていたんだろうな。ロブ殿下のエスコートだなんて、自分が一番ビックリしているもの。
そんな周囲の目を気にもしてない様に装いながら、会場の中ほどまで歩みを進めた。そこに仲良しの令嬢たちを見つけると、ロブ殿下と一緒に向かう。
「ごきげんよう、マリアージュそれにミリアナ」
「ロビウムシス殿下、ごきげんよう。アリー! なかなか来ないから心配してたのよ」
「ごきげんよう、ロビウムシス殿下。殿下がアリーをお連れ下さったのね」
燃える様な赤髪のストレートロングに金色の瞳を持つマリアージュは、わたしの仲良しの公爵令嬢だ。そしてその隣に居る淡い空色のふわふわした髪に、穏やかな青い瞳を持つ侯爵令嬢のミリアナともわたしは仲が良い。学園では常にこの二人と共に居る事が多かった。
「やあ、マリアージュ嬢にミリアナ嬢。今日はよろしくね」
ロブ殿下の営業用王子スマイルが炸裂すると、わたし達を遠巻きに見ていた他のご令嬢たちから黄色い悲鳴が上がる。うん、やっぱり顔面凶器だわ。
程なくして、学園長からの卒業パーティ開催の挨拶が始まる。それを皆と並んで聞き、そして学園長の居る檀上の近くにクリス殿下の姿を見つけた。その横には美しく着飾ったプラチナブロンドのココレシア嬢の姿が見える。クリス殿下は無事にココレシア嬢をお誘い出来たみたいね。元婚約者の恋が上手くいってる事に安堵するなんて馬鹿みたいなんだけど、なんだかんだいっても大事な幼馴染だしね。
「こら、今日は俺がパートナーだよ。よそ見しない」
わたしの視線の行方に気付いたのかロブ殿下が急に耳元でささやいた。突然耳元に響いた素敵ボイスに驚いて振り向くと、めちゃくちゃ真横に綺麗なお顔があって更に驚く。ぴぎゃああああああああ! わ、わたしを殺す気ですか、殿下っ!
「ろっ、ロブで、んかっ! おか、お顔がっ、近すぎますわよっ」
真っ赤になりながらささやかれた方の耳を手で押さえ、小声で抗議すると余裕一杯の笑顔で返された。ぐっ……これだからイケメンは!
学園長の挨拶も終わり、楽団が音楽を奏で始めると一気にざわざわと周囲がざわめき出した。フロアの中央が自然と開けられ、そこにクリス殿下に手を引かれたココレシア嬢が歩み出た。卒業生の中で最も身分の高いクリス殿下がまずはファーストダンスをココレシア嬢と披露される。
「俺達も踊ろうか」
ロブ殿下がニコリと微笑みながら、わたしに手を差し伸べられた。ロブ殿下と踊るのはかなり久し振りだ。クリス殿下たちと入れ替わる様にフロア中央に現れたわたし達の姿に、皆の視線が集まる。色んな意味で注目を浴びている事に緊張して少し手が震える。
「大丈夫だよ、俺の事だけを見て踊りなさい」
「……っ」
わたしは大きく深呼吸をしてロブ殿下の顔を見つめた。音楽に合わせてステップを踏みながら、クルクルとフロアを移動する。涼しげなパステルブルーの瞳に見つめられて、わたしは視線を外せなくなる。気が付くといつの間にか一曲踊り終わっていた。
……何も考えられなかった。
ロブ殿下の瞳を見つめていただけで、一曲踊ってしまった感覚が自分にはなくて驚く。なんだか魔法にでもかけられたみたい。そして今でもドキドキしている胸に手を当てて、早く静まれと念じる。
踊り終わった途端、ロブ殿下は沢山のご令嬢に次のダンスに誘われて囲まれてしまった。その輪の外側に押し出されたわたしは、得意の王子スマイルを顔に貼り付けて上手くご令嬢達の誘いを断っているロブ殿下の姿を見ていた。笑顔を崩しはしないけど、内心困っているんだろうな……と思ったので、殿下に群がっているご令嬢たちをかき分けて「挨拶周りに付き合って貰う」と言って無理矢理殿下を連れ出した。
そして実際に何人かへと挨拶周りをしてから、人の少ないバルコニーへと出た。
そんな周囲の目を気にもしてない様に装いながら、会場の中ほどまで歩みを進めた。そこに仲良しの令嬢たちを見つけると、ロブ殿下と一緒に向かう。
「ごきげんよう、マリアージュそれにミリアナ」
「ロビウムシス殿下、ごきげんよう。アリー! なかなか来ないから心配してたのよ」
「ごきげんよう、ロビウムシス殿下。殿下がアリーをお連れ下さったのね」
燃える様な赤髪のストレートロングに金色の瞳を持つマリアージュは、わたしの仲良しの公爵令嬢だ。そしてその隣に居る淡い空色のふわふわした髪に、穏やかな青い瞳を持つ侯爵令嬢のミリアナともわたしは仲が良い。学園では常にこの二人と共に居る事が多かった。
「やあ、マリアージュ嬢にミリアナ嬢。今日はよろしくね」
ロブ殿下の営業用王子スマイルが炸裂すると、わたし達を遠巻きに見ていた他のご令嬢たちから黄色い悲鳴が上がる。うん、やっぱり顔面凶器だわ。
程なくして、学園長からの卒業パーティ開催の挨拶が始まる。それを皆と並んで聞き、そして学園長の居る檀上の近くにクリス殿下の姿を見つけた。その横には美しく着飾ったプラチナブロンドのココレシア嬢の姿が見える。クリス殿下は無事にココレシア嬢をお誘い出来たみたいね。元婚約者の恋が上手くいってる事に安堵するなんて馬鹿みたいなんだけど、なんだかんだいっても大事な幼馴染だしね。
「こら、今日は俺がパートナーだよ。よそ見しない」
わたしの視線の行方に気付いたのかロブ殿下が急に耳元でささやいた。突然耳元に響いた素敵ボイスに驚いて振り向くと、めちゃくちゃ真横に綺麗なお顔があって更に驚く。ぴぎゃああああああああ! わ、わたしを殺す気ですか、殿下っ!
「ろっ、ロブで、んかっ! おか、お顔がっ、近すぎますわよっ」
真っ赤になりながらささやかれた方の耳を手で押さえ、小声で抗議すると余裕一杯の笑顔で返された。ぐっ……これだからイケメンは!
学園長の挨拶も終わり、楽団が音楽を奏で始めると一気にざわざわと周囲がざわめき出した。フロアの中央が自然と開けられ、そこにクリス殿下に手を引かれたココレシア嬢が歩み出た。卒業生の中で最も身分の高いクリス殿下がまずはファーストダンスをココレシア嬢と披露される。
「俺達も踊ろうか」
ロブ殿下がニコリと微笑みながら、わたしに手を差し伸べられた。ロブ殿下と踊るのはかなり久し振りだ。クリス殿下たちと入れ替わる様にフロア中央に現れたわたし達の姿に、皆の視線が集まる。色んな意味で注目を浴びている事に緊張して少し手が震える。
「大丈夫だよ、俺の事だけを見て踊りなさい」
「……っ」
わたしは大きく深呼吸をしてロブ殿下の顔を見つめた。音楽に合わせてステップを踏みながら、クルクルとフロアを移動する。涼しげなパステルブルーの瞳に見つめられて、わたしは視線を外せなくなる。気が付くといつの間にか一曲踊り終わっていた。
……何も考えられなかった。
ロブ殿下の瞳を見つめていただけで、一曲踊ってしまった感覚が自分にはなくて驚く。なんだか魔法にでもかけられたみたい。そして今でもドキドキしている胸に手を当てて、早く静まれと念じる。
踊り終わった途端、ロブ殿下は沢山のご令嬢に次のダンスに誘われて囲まれてしまった。その輪の外側に押し出されたわたしは、得意の王子スマイルを顔に貼り付けて上手くご令嬢達の誘いを断っているロブ殿下の姿を見ていた。笑顔を崩しはしないけど、内心困っているんだろうな……と思ったので、殿下に群がっているご令嬢たちをかき分けて「挨拶周りに付き合って貰う」と言って無理矢理殿下を連れ出した。
そして実際に何人かへと挨拶周りをしてから、人の少ないバルコニーへと出た。
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