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第一章
来客
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魔力の属性判定から数日経った週末。我がカルベロス男爵家に急な来客がやって来た。部屋で寛いでいたあたしは、けたたましく部屋の扉を叩く執事長に連れられて応接室へと連行された。
「一体、なにごとです……か…………え?」
面倒臭いな~なんて思いながら応接室へと入ると、ソファーに座るお父様、お義母様、その向かいには若草色の髪の二人の男性が座っていた。一人はクラスメイトであるエバーンズ・マジャナン。その横に座るのはエバーンズそっくりな大人の男性。
「エバーンズ? こんな所で何してるの?」
「やあ、パフィット。父上とお邪魔させて貰っているよ」
あたしの問いにただニコニコと笑顔を向けてくるエバーンズ。父と? って、じゃあその人はマジャナン侯爵様!? て事は魔術師団長様じゃないの!
「パフィット、こちらに来て座りなさい」
お父様があたしを手招きして、お義母様の隣りの空いている一人掛け用ソファーへと座らされた。一体なにごとなんだろう……。
「お前、魔力判定で聖属性だったそうだな。何故言わなかったんだ」
「え……」
「そうよ、聖属性だなんてそんな素晴らしい事、報告してくれなきゃ困るじゃないの」
「はぁ……」
何故報告しなきゃ困るのか分からないけど、確かに家族には判定結果を知らせていなかった。別に仲良くもないし、報告する意味も無かったからなんだけどね。どうせいずれは聖女として神殿に呼び出されるから、その時に知る事になるだろうと思っていた。
「こちらのマジャナン侯爵から聞いて驚いたよ。しかも、もの凄い力だったそうだな」
「あ……はぁ、まぁ……そうですね」
気の乗らないあたしをよそに、お父様もお義母様も、そしてエバーンズと一緒に居るマジャナン侯爵も皆ニコニコとしている。うーん……こんな展開ゲームにあったかしら。てか、エバーンズの親が何故出て来るのだろう。
「初めまして、パフィット嬢。いつも息子が世話になっているね」
「あ、初めまして侯爵様。こちらこそ、お世話になっております」
「実はね、君にエバーンズの婚約者になって貰いたいと思って今日はやって来たのだよ」
「…………は?」
マジャナン侯爵の言葉に思考回路が止まる。え……今、なんて言った? エバーンズの婚約者?
「突然の話で驚いたとは思うが、エバーンズとは仲が良いと聞いている。だからどうだろうか?」
「え…………」
本気で返答に困って視線を泳がすあたし。こんな展開知らないんだけど!? シナリオに無いよね、こんなの。
「父上、あまり無理矢理話を詰めてはダメです。急にごめんね、パフィット」
「あ……はい……」
「父上、カルベロス男爵。少しパフィットと二人で話させて貰えませんか?」
エバーンズがそう持ちかけると「では、あちらのテラスで……」と二人で話す場を設けられた。応接室からバルコニーへ出ると広いテラスがあり、そこには可愛らしい白色のテーブルセットが置かれている。あたしとエバーンズはそちらへと移り、メイドが改めてお茶の用意をしてくれた。
「えーと、どういうこと?」
メイドが下がったタイミングであたしはエバーンズに問いかけた。
「君の聖属性の噂を聞きつけた父上が急に言い出したんだよ。早くしないと誰かに先を越されるって」
「……要するに珍しい聖属性持ちだから、早々に囲い込みたいって事?」
「まぁ、そうなるね……」
マジャナン家は代々優秀な魔道士を輩出しているだけあって、高い魔力と幅広い属性を持って生まれてくる者が多い。あたしとエバーンズを結婚させて、運良ければ聖属性の子供が生まれてくるかもしれない……そうでなくても聖女の血を取り込みたいという目的があるのだろう。
「はぁ……付き合ってもないのにいきなり婚約って……」
「貴族だからね、よくある話さ」
「それはそうだけど……」
「やっぱり迷惑かな? 僕は相手がパフィットなら嬉しいって思ってるんだけど……」
「なっ……」
あざとらしく小首を傾げてこちらの顔を覗き込むエバーンズ。うがっ! そんな顔して見つめないで! 相変わらずカッコ可愛すぎて辛いから~!
「い、今すぐ返事しなきゃダメ?」
「ううん、急な話だったし。考える時間は必要だと思うから、返事は今日じゃなくて大丈夫だよ」
そう言いつつも寂しそうな表情を見せて来るエバーンズ。あざといわ~マジであざと可愛いわ~。
エバーンズ親子が帰った後、お父様とお義母様からは「何故、すぐに婚約を受けないんだ」と怒られたけど……そんな簡単に自分の将来を決めれないわよ。それにこんなストーリー展開知らないし、ここでエバーンズと婚約したらシナリオにどんな影響があるのか分からないじゃない。
うーん、まぁ既にカイラード殿下と悪役令嬢がラッブラブになってたりとシナリオが変わってしまっているんだけどさ。それにしてもエバーンズかぁ……マジでどうしよう。
「一体、なにごとです……か…………え?」
面倒臭いな~なんて思いながら応接室へと入ると、ソファーに座るお父様、お義母様、その向かいには若草色の髪の二人の男性が座っていた。一人はクラスメイトであるエバーンズ・マジャナン。その横に座るのはエバーンズそっくりな大人の男性。
「エバーンズ? こんな所で何してるの?」
「やあ、パフィット。父上とお邪魔させて貰っているよ」
あたしの問いにただニコニコと笑顔を向けてくるエバーンズ。父と? って、じゃあその人はマジャナン侯爵様!? て事は魔術師団長様じゃないの!
「パフィット、こちらに来て座りなさい」
お父様があたしを手招きして、お義母様の隣りの空いている一人掛け用ソファーへと座らされた。一体なにごとなんだろう……。
「お前、魔力判定で聖属性だったそうだな。何故言わなかったんだ」
「え……」
「そうよ、聖属性だなんてそんな素晴らしい事、報告してくれなきゃ困るじゃないの」
「はぁ……」
何故報告しなきゃ困るのか分からないけど、確かに家族には判定結果を知らせていなかった。別に仲良くもないし、報告する意味も無かったからなんだけどね。どうせいずれは聖女として神殿に呼び出されるから、その時に知る事になるだろうと思っていた。
「こちらのマジャナン侯爵から聞いて驚いたよ。しかも、もの凄い力だったそうだな」
「あ……はぁ、まぁ……そうですね」
気の乗らないあたしをよそに、お父様もお義母様も、そしてエバーンズと一緒に居るマジャナン侯爵も皆ニコニコとしている。うーん……こんな展開ゲームにあったかしら。てか、エバーンズの親が何故出て来るのだろう。
「初めまして、パフィット嬢。いつも息子が世話になっているね」
「あ、初めまして侯爵様。こちらこそ、お世話になっております」
「実はね、君にエバーンズの婚約者になって貰いたいと思って今日はやって来たのだよ」
「…………は?」
マジャナン侯爵の言葉に思考回路が止まる。え……今、なんて言った? エバーンズの婚約者?
「突然の話で驚いたとは思うが、エバーンズとは仲が良いと聞いている。だからどうだろうか?」
「え…………」
本気で返答に困って視線を泳がすあたし。こんな展開知らないんだけど!? シナリオに無いよね、こんなの。
「父上、あまり無理矢理話を詰めてはダメです。急にごめんね、パフィット」
「あ……はい……」
「父上、カルベロス男爵。少しパフィットと二人で話させて貰えませんか?」
エバーンズがそう持ちかけると「では、あちらのテラスで……」と二人で話す場を設けられた。応接室からバルコニーへ出ると広いテラスがあり、そこには可愛らしい白色のテーブルセットが置かれている。あたしとエバーンズはそちらへと移り、メイドが改めてお茶の用意をしてくれた。
「えーと、どういうこと?」
メイドが下がったタイミングであたしはエバーンズに問いかけた。
「君の聖属性の噂を聞きつけた父上が急に言い出したんだよ。早くしないと誰かに先を越されるって」
「……要するに珍しい聖属性持ちだから、早々に囲い込みたいって事?」
「まぁ、そうなるね……」
マジャナン家は代々優秀な魔道士を輩出しているだけあって、高い魔力と幅広い属性を持って生まれてくる者が多い。あたしとエバーンズを結婚させて、運良ければ聖属性の子供が生まれてくるかもしれない……そうでなくても聖女の血を取り込みたいという目的があるのだろう。
「はぁ……付き合ってもないのにいきなり婚約って……」
「貴族だからね、よくある話さ」
「それはそうだけど……」
「やっぱり迷惑かな? 僕は相手がパフィットなら嬉しいって思ってるんだけど……」
「なっ……」
あざとらしく小首を傾げてこちらの顔を覗き込むエバーンズ。うがっ! そんな顔して見つめないで! 相変わらずカッコ可愛すぎて辛いから~!
「い、今すぐ返事しなきゃダメ?」
「ううん、急な話だったし。考える時間は必要だと思うから、返事は今日じゃなくて大丈夫だよ」
そう言いつつも寂しそうな表情を見せて来るエバーンズ。あざといわ~マジであざと可愛いわ~。
エバーンズ親子が帰った後、お父様とお義母様からは「何故、すぐに婚約を受けないんだ」と怒られたけど……そんな簡単に自分の将来を決めれないわよ。それにこんなストーリー展開知らないし、ここでエバーンズと婚約したらシナリオにどんな影響があるのか分からないじゃない。
うーん、まぁ既にカイラード殿下と悪役令嬢がラッブラブになってたりとシナリオが変わってしまっているんだけどさ。それにしてもエバーンズかぁ……マジでどうしよう。
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