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第二章
アーサー王子の初恋 エスメイジーSide+アーサーSide
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「やはり兄上には従えません!」
「待て! アーサー!」
王宮の廊下に二人の王子の言い争う声が響き渡った。わたしは驚いて声のした方へと足を向けると、丁度曲がり角でアーサー王子とぶつかりそうになった。
「申し訳ない、急いでいたもので」
「いえ、大丈夫ですわ。……それより、どうなさいましたの? アルスト殿下と喧嘩ですか?」
「あ……まぁ、そのようなものです」
アーサー王子は気まずそうに苦笑いされる。わたし達の会話を、遠巻きに使用人たちや文官たちが聞き耳を立てているのが分かる。そりゃ気になるわよね、普段あんなに仲の良いご兄弟ですもの。
「珍しいですわね、兄弟喧嘩だなんて。私とエイダンなんかは、日常茶飯事ですけど」
「お恥ずかしいです。……あまりにも兄上が融通が利かないものですから、つい声を荒げてしまいました」
「融通ですか?」
一体なにが原因で揉めたのだろう。
「……貴方なら分かって頂けるかもしれませんね。実は、婚約者の居るご令嬢を好きになってしまったのですよ。それを知った兄上に咎められましてね」
「まあ!」
驚いた。大人しい方だと思っていたけど、まさかそんな情熱的な感情を持ち合わせていらっしゃるとは。
「私は今の婚約者を押しのけてでもそのご令嬢と婚約をしたい。だが、兄上からは反対されたんです。私欲の為にそんな事をしてはいけない、とね」
「まあっ、まあっ! ええ、分かりますわ。既にお相手が居らっしゃるだなんてお辛いですわよね」
わたしはアーサー王子にいたく共感をしました。わたしと同じようにアーサー王子も辛い恋をしていらっしゃるのだわ。
「私はアーサー殿下の味方ですわ。お互いに負けずに頑張りましょうね」
「はい、そうですね」
これは良い展開になったかもしれないと、ウキウキ気分で弟の部屋へと向かう。アーサー王子を味方に付ければ、わたしの恋も成就するかもしれない。エイデンに報告しなくちゃだわ!
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
僕が王立学園に入学してから二ヶ月が経った。この学園の図書室は、城にある王立図書館には置いていない書物が沢山あって非常に面白い。毎日通ってるけど、通う度に新しい書物を発見する。ここの司書や図書委員はとても優秀な人材を置いているのだろう。
最近は植物学にハマっていて、先日も図書委員のロメリアンヌ嬢に面白そうな図鑑を教えて貰った。彼女は博学で本の事に凄く詳しくて、もう何度もお薦めの書物を紹介してくれた。図書委員は他にも居るけど僕は彼女と話すのが楽しいから、ついつい彼女に声を掛けてしまう、
僕は彼女の柔らかい笑顔が見たくて、いつもどうやって笑って貰おうか必死に考えるのだけど……なんだか上手く行かないんだ。ちゃんと練習してくるのだけど、彼女と話してると何故か気持ちが舞い上がってしまって心臓がバクバクして頭の中が真っ白になってしまうんだ。
「それは恋だよ、アーサー」
ある日、アルスト兄上にそう教えられた。僕はビックリした。だって彼女には婚約者も居るし、僕は年下だし……こんな気持ち、抱いてはいけない。
「ここだけの話……もしかしたら、ロメリアンヌ嬢の婚約は破棄されるかもしれない」
「えっ……どういう事ですか兄上!」
兄上が言うには、ロメリアンヌ嬢の婚約者であるザッカリー・バーベンスは何やら法を犯しているという噂があって、タクト様やスクト様と共に秘密裏に調査中なんだそうだ。バーベンス公爵家自体、昔から良くない噂があるのは僕も知っているし、父上もバーベンス家を疎ましがっている。
「お前が協力してくれるなら、予定より手早くバーベンス家を潰す事が出来るかもしれないな。そうしたら堂々とロメリアンヌ嬢に求婚出来るぞ」
「ロメリアンヌ嬢に求婚……」
僕は顔が熱くなるのを感じた。
「どうだ、やるか?」
「や、やります!」
僕は勢い良く返事を返した。そしてそれはローゼン公爵家で行われた夜会の翌日に決行された。
「やはり兄上には従えません!」
「待て! アーサー!」
僕と兄上はわざと人目につく城の廊下で言い争いを演じた。昨夜、予想以上にザッカリーが食いついてきたので僕はロメリアンヌ嬢と仲睦まじく見えるように皆の視線が集まる中、沢山沢山お喋りをした。勿論ロメリアンヌ嬢と会話するのは願ったり叶ったりだ。作戦の為とはいえ、こんなに周りを気にせず会話が出来るなんて幸せ過ぎだった。
そして今日はエスメイジー王女が上手い事食いついて来てくれたので、城の使用人たちや城に務めている文官たちの視線を浴びながら周りに聞こえるような声で僕と兄上の不仲を演じてみせた。恐らく一度くらいじゃダメだろうけど、こうして何度も不仲な様子を周りに見せつけていけばきっとアイツらは動き出す筈だ。
僕はロメリアンヌ嬢に心を寄せている……これは真実。そしてそれを兄上からは咎められている……これは偽装。だけど真実と偽装をごちゃ混ぜにして見せている事で、何故か全てが真実味を帯びて見えてくるのが不思議だ。兄上を敵に回したら怖いと改めて思ったけどあんな酷い婚約者からロメリアンヌ嬢を助ける為、そして自分の恋心の為でもあるけどこの作戦を成功させてみせる。
「待て! アーサー!」
王宮の廊下に二人の王子の言い争う声が響き渡った。わたしは驚いて声のした方へと足を向けると、丁度曲がり角でアーサー王子とぶつかりそうになった。
「申し訳ない、急いでいたもので」
「いえ、大丈夫ですわ。……それより、どうなさいましたの? アルスト殿下と喧嘩ですか?」
「あ……まぁ、そのようなものです」
アーサー王子は気まずそうに苦笑いされる。わたし達の会話を、遠巻きに使用人たちや文官たちが聞き耳を立てているのが分かる。そりゃ気になるわよね、普段あんなに仲の良いご兄弟ですもの。
「珍しいですわね、兄弟喧嘩だなんて。私とエイダンなんかは、日常茶飯事ですけど」
「お恥ずかしいです。……あまりにも兄上が融通が利かないものですから、つい声を荒げてしまいました」
「融通ですか?」
一体なにが原因で揉めたのだろう。
「……貴方なら分かって頂けるかもしれませんね。実は、婚約者の居るご令嬢を好きになってしまったのですよ。それを知った兄上に咎められましてね」
「まあ!」
驚いた。大人しい方だと思っていたけど、まさかそんな情熱的な感情を持ち合わせていらっしゃるとは。
「私は今の婚約者を押しのけてでもそのご令嬢と婚約をしたい。だが、兄上からは反対されたんです。私欲の為にそんな事をしてはいけない、とね」
「まあっ、まあっ! ええ、分かりますわ。既にお相手が居らっしゃるだなんてお辛いですわよね」
わたしはアーサー王子にいたく共感をしました。わたしと同じようにアーサー王子も辛い恋をしていらっしゃるのだわ。
「私はアーサー殿下の味方ですわ。お互いに負けずに頑張りましょうね」
「はい、そうですね」
これは良い展開になったかもしれないと、ウキウキ気分で弟の部屋へと向かう。アーサー王子を味方に付ければ、わたしの恋も成就するかもしれない。エイデンに報告しなくちゃだわ!
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
僕が王立学園に入学してから二ヶ月が経った。この学園の図書室は、城にある王立図書館には置いていない書物が沢山あって非常に面白い。毎日通ってるけど、通う度に新しい書物を発見する。ここの司書や図書委員はとても優秀な人材を置いているのだろう。
最近は植物学にハマっていて、先日も図書委員のロメリアンヌ嬢に面白そうな図鑑を教えて貰った。彼女は博学で本の事に凄く詳しくて、もう何度もお薦めの書物を紹介してくれた。図書委員は他にも居るけど僕は彼女と話すのが楽しいから、ついつい彼女に声を掛けてしまう、
僕は彼女の柔らかい笑顔が見たくて、いつもどうやって笑って貰おうか必死に考えるのだけど……なんだか上手く行かないんだ。ちゃんと練習してくるのだけど、彼女と話してると何故か気持ちが舞い上がってしまって心臓がバクバクして頭の中が真っ白になってしまうんだ。
「それは恋だよ、アーサー」
ある日、アルスト兄上にそう教えられた。僕はビックリした。だって彼女には婚約者も居るし、僕は年下だし……こんな気持ち、抱いてはいけない。
「ここだけの話……もしかしたら、ロメリアンヌ嬢の婚約は破棄されるかもしれない」
「えっ……どういう事ですか兄上!」
兄上が言うには、ロメリアンヌ嬢の婚約者であるザッカリー・バーベンスは何やら法を犯しているという噂があって、タクト様やスクト様と共に秘密裏に調査中なんだそうだ。バーベンス公爵家自体、昔から良くない噂があるのは僕も知っているし、父上もバーベンス家を疎ましがっている。
「お前が協力してくれるなら、予定より手早くバーベンス家を潰す事が出来るかもしれないな。そうしたら堂々とロメリアンヌ嬢に求婚出来るぞ」
「ロメリアンヌ嬢に求婚……」
僕は顔が熱くなるのを感じた。
「どうだ、やるか?」
「や、やります!」
僕は勢い良く返事を返した。そしてそれはローゼン公爵家で行われた夜会の翌日に決行された。
「やはり兄上には従えません!」
「待て! アーサー!」
僕と兄上はわざと人目につく城の廊下で言い争いを演じた。昨夜、予想以上にザッカリーが食いついてきたので僕はロメリアンヌ嬢と仲睦まじく見えるように皆の視線が集まる中、沢山沢山お喋りをした。勿論ロメリアンヌ嬢と会話するのは願ったり叶ったりだ。作戦の為とはいえ、こんなに周りを気にせず会話が出来るなんて幸せ過ぎだった。
そして今日はエスメイジー王女が上手い事食いついて来てくれたので、城の使用人たちや城に務めている文官たちの視線を浴びながら周りに聞こえるような声で僕と兄上の不仲を演じてみせた。恐らく一度くらいじゃダメだろうけど、こうして何度も不仲な様子を周りに見せつけていけばきっとアイツらは動き出す筈だ。
僕はロメリアンヌ嬢に心を寄せている……これは真実。そしてそれを兄上からは咎められている……これは偽装。だけど真実と偽装をごちゃ混ぜにして見せている事で、何故か全てが真実味を帯びて見えてくるのが不思議だ。兄上を敵に回したら怖いと改めて思ったけどあんな酷い婚約者からロメリアンヌ嬢を助ける為、そして自分の恋心の為でもあるけどこの作戦を成功させてみせる。
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