ベルガモットの空言

小春佳代

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僕たちの関係に名前はない

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先を少し歩く僕が振り返る度に
君は尻尾をふりふりするかのごとく
満ちた笑顔で一定の距離まで追いついて来た

そう
君は僕の陣地に入ってしまうのを避けることに
細心の注意を払っているかのように思えた



君はよく独り言を呟いていた

とにかく脳内にある感情を
包まず吐露している時もあれば
僕の好きなものに対して
少し照れながら共感を伝えてくる時もあった



君は僕の発言に高ぶった様子で
とんでもない返しをしてくることがあった

「かっこいい」らしい

訳が分からない

僕はもうおじさんになのに、と言うと
「おじさんじゃない、
私の中で、あなたは永遠にあなたです」
と、また訳が分からない返しをしてきた



365日の中のほんの数日
僕がしっかりと君の方に体を向ける時間を作ると
君は陣地を突破して懐に飛び込んできた

そして音も立てずに涙を流すんだ

顔を上げ、すがるような眼差しの後に
僕の唇を愛おしそうに味わった



ある日、振り返れない日があった

僕もこっちの世界ではなかなか忙しいんだ

そうすると君は
全ての動作をやめていた

僕がこのまま振り返らないままだったら
きっと君は追って来ないのだろう

僕が見えなくなるまで
そこに立ち竦んでいるのだろう

そしてまた別の人を探すのかい?

自分勝手かもしれないけど
それは、とても寂しいな
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