ベルガモットの空言

小春佳代

文字の大きさ
上 下
60 / 157

支えと呪いが紙一重だった頃の私

しおりを挟む
冬を待ち続けていたのは
埋まる可能性が少しでもあったから

始めから可能性になんて賭けなければ
こんな心の穴なんて
大きくなる前に何か別の物で
埋められていたはずだ

でも私は待ち続けてしまった

あなたが好きだったから



「もう春を待つのは辞めます」

実質の卒業なのかと問われたら疑わしい

ただ「待つ」という行為はあまりにも
揺らいだ時の精神的負担が大きいんだと
こんな歳になってようやく分かったの



人は青春を感じている時期に
何かしら音楽を聴いているべきだと思う
どんな種類のものでもいいんだ

だって時に思い出を支えにしたくなった瞬間
心だけはその場所に行けるんだよ

私たちは「夢か幻のような状況」を
何度も生身の自分で繰り返す必要はないんだ

その場所に実際再び降り立つことを
長く続く人生の糧にしなくていい



「もう春を待つのは辞めます」

私には余韻と音楽と文章がある

支えと呪いが紙一重だった頃の私
さよなら
しおりを挟む

処理中です...